グリブル小説「愛のRe:」
 

 

愛のRe:

 

「……」
「……」
しーんとした空気。
聞こえるのは、グリーンが書類にペンを走らせる音と、時計の秒針の音だけ。

ここはトキワジム。
暇で暇で暇でしようがないあたしは、ここ、トキワジムに邪魔しにきていた。
でも…

「…暇なんだけど」
案の定暇は解消されていないわけで…。
「しらん。仕事だと言ったのにそこにいるおまえが悪い」
しかもこうやって冷たいし…。

何よ何よ、少しくらい相手してくれたっていいんじゃない?
ほんと仕事仕事仕事仕事し・ご・と!
もう…。
仕事が恋人なんて許さないんだからね?

「……」
「……はぁ」
最初の沈黙な状態に戻っちゃった。

話しかけたら答えてくれるかというと、それは最初のうちだけ。
度がすぎるとそのうち怒られるし…。
どうしようかなぁ…。

「…」
暇をもてあましたあたしは、ポケギアを手に取る。

昔のポケギアとは随分変わってしまった。
電話するだけじゃなくて、メールや、検索、現在位置把握やら、ゲーム機能からスケジュール管理、目覚まし、カメラ、音楽を聴くとか、とにかくここ最近のポケギアはなんでもござれだ。
最新版はテレビも見れて、テレビ電話ができるんだとか。
なんだかそこまでくると、初期の意味を成さないような気がしてくるわ。
だからあたしは、単純明快にメールと電話ができるもののみ。
それだけでこと足りる。
グリーンなんかは、最初メール機能もついてないやつ買おうとしてたし。

「……」
メールかぁ。

送ったことはあるが、グリーンから返ってきたためしはない。
メールなんか活用してないように見える。
というか電話もかけてきたためしもないし。
どうせあたしには用はないんだろうから…。

「……むぅ」
考えれば考えるほど、腹がたってくる。
あたしを何だと思ってるのかしら…。
むかつくなぁ。
あたしはこんなにも……こんなにも………?

「…っ」
ピンポーンと頭のインターホンが鳴った気がした。

それからの行動は早い。
今までうだうだと、ソファーに寄りかかっていただけのあたしだったか、まるで水を得た魚のように嬉しそうな表情を浮かべ、ポケギアをいじりだした。

「…?」
静かになったあたしを不思議に思ったのか、一度彼が振り返るが、あたしはそれに気づかずいじり続ける。

「よし」
完了。
送信!

「……?」
前を向きなおした彼が、自分のポケギアが鳴ってることに気づき、ポケギアを開く。
「…」
あたしはその後ろで、にやりと笑った。

 

 

 

 

 

 

 

「……っ!?」
「…ぷっ……あはははは」
みるみるうちに顔中真っ赤になっていく彼の姿を見て、満足したようにあたしは笑いだした。
「ぶ、ブルー?!」
彼は怒ったように立ち上がるが、顔が真っ赤で凄みはゼロ。
「なぁ〜に?」
甘えたような声を出して、彼をからかうように上目遣いで見る。
「…っ…おまっ…おまえ…おまえなぁっ!?」
金魚みたい、グリーン。
「うふふふ。あたしがなぁ〜に?」
くすくす笑いながら彼を見上げる。
「…っ……こ、これ…なんだよ?!」
真っ赤のまま、あたしにポケギアを見せてくる。
「何って?あたしのストレートな気持ちのまんまを表したものですよ?」
それがどうかしましたかぁ?
「…っ!?」
さらに真っ赤になる。
今のグリーンの顔なら、お湯沸かせるかしら。
「だってあたし、グリーンのことだぁ〜い好きだもん」
にっこり笑ってそう言った。
「っ?!」
どか〜んって効果音つけたい。

あたしが送ったメール。
それは、
『メールアドレス変えました。登録してください。』
という内容だ。

変えたメールアドレスは、@までの前が、greenlove。
グリーンを愛してる。
そういう意味…。

あたしがこんなにもこーーーーーーんなにも愛してるんだから、少しは、返信してね?
愛の返信を…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おまえ、ほんとにこれメールアドレスにするもりじゃないだろうなぁ」
まだ顔が赤い彼がそう言い出す。
「…え?するつもりだよ?」
彼の膝の上で満足そうにしてるあたしは、きっぱりと言いのけた。
「やめい」
「なんで?」
いいじゃない。そんなに嫌?
「…このアドレス使ってレッドやシルバーとかが、おまえにメールを送ってくるわけだろ?」
きもいと言わんばかりの顔。
「…あ、そうかぁ」
あたしが送信する際には、グリーンが好きなのを前面に出せていいけど、これを使って他の人が送信してくるっていうのは不思議かも。
でも変えるのやだなぁ。
「…だからやめろ」
はぁっとため息をつかれる。
「じゃあグリーンがblueloveって変えてよ」
「んなことできるか?!」
あら、早い突っ込み。
「どうせメールなんて使わないんでしょう?いいじゃない、誰にもばれないで」
ね、いいでしょ?
「できるか!!」
そんな恥ずかしいこと!とでも言いたそうな赤い顔。
「…ちぇー。じゃあ、あたしは変えない」
「おいっ!」
だって変えちゃったらつまんないし。
それに…

「だって、あたしはグリーンが大好きだもんっ」
「っ!?」
本日3度目の赤面顔。

 

2005年4月14日 Fin


あとがき

阿呆ですか?そうですか(笑)なにが言いたいって?姉さんはもう、どうしよーーもなく、兄さんが大好きです!って話です(笑)そして結局は兄さんは姉さんには弱いのですって話でした(おいおい)あはははは。まぁおまけの最後らへんは、私的意見。レッドとかがgreenloveで送ってくるのは抵抗あるなぁって思って。この後どう解決したかはみなさんの想像任せということで(おい)あははは。
タイトルに少し悩んでました。最初メアドってタイトルだったんですが、なんか仕事のことを恨む姉さんが最初に出てきてしまったので、メアドを中心にするとおかしな話になるかもってことで、2番目は@にしたんだけど、でもなんかしっくりこず、送信で返信かぁ。返信はReってタイトルにつくから、じゃあ愛のRe:にしよう!ってことで、このタイトルになりました。愛の返信してください。みたいなね?兄さんからの返信お待ちしてますからね?このメールアドレス(あなたへの愛で)でっていう意味を込めてるわけです。それを理解してもらえるといいなぁ。うん。
久々のお話はこないだなりメに使った話でした(笑)桜が散っちゃうから桜の話を先に書けばよかったなぁ。もう1個は夏になったらのがいいなぁ。といろいろかんがえながら、新年度始めての作品でした。