馬鹿な人 「……グリーン」 でも、届かない距離じゃない。 「…なんだよ…」 いきなりな話。 「は?」 いつから置かれたのか分からない、1枚の絵。 「……あれがどうした?」 届かない距離。 「…はぁ。どうしておまえはそう、なんでも悲観的な考えしかできないんだ」 分かってる。 「山と空に例えるからそうなるんだろ?なら海と海草くらいに例えればいいだろうが…」 海の青と海草の緑。 海の青、海草の緑。 「緑の海草を、海の青が抱きしめる。そんな距離って言ってくれるの?」 あぁ、さっきまでの不安が、嘘のように消えてしまったじゃないか…。 ほんと、ずるい人。 2005年5月13日 Fin
一番馬鹿なのはあたしですぅ。あはははは。これをネタとして簡単に文章にした際に、最後の文章がすっごくしっくり来たので、タイトルは馬鹿な人。昔ドリームで何かそういう似たようなタイトルで書いた記憶がありますが、そこらへんは気にせず。内容は全く違うから許して。いや、本当に全然違いますから(今読んだらしい)阿呆だ。馬鹿だ。ありえん。これはまぁそこまで馬鹿じゃないけど。なんていうのかな、そういう兄さんの言葉一つで一喜一憂する自分って、現金で馬鹿っぽいなぁっていう姉さんって話だったわけですよ。うん。まぁそれを理解していただければ幸いなりってことでね。あははは。兄さんがなんだかかっこよくなりきれてない感じ。へたれはへたれのままで。こないだ書いた兄さんもへたれどころか弱すぎだったからなぁ。兄さん好きにはいたたまれないかもしれない。すいません。弱い姉さん好きにはひゃっほ〜で(おい)まぁここ最近弱い姉さんも好きなんですが、わがまま全開の周りを巻き込んで迷惑かけまくるけど、でも愛しいっていう姉さんも好きです。強気な姉さんが好きになりつつはある。兄さんが思いっきり「はぁ」ってため息ついたとしても、しょうがないなぁって抱きしめてくれちゃうような、そんな姉さんのわがまま炸裂度と、兄さんの姉さん馬鹿度を出せたらいいなぁということを考えながら、考える作品は全部こんなのっていうのはちょっと寂しい気もしますが、そういう作品が出来上がったら、あぁ、光は頑張ったんだなぁとか思ってやってください。
本を読んでいた彼の背中に、小さく訴える。
「…なんだ?」
ベッドに寝転がっていたあたしに、言葉だけを返してくれた。
「…グリーン」
そんな彼に、再度名前を呼ぶ。
「なんだ…」
でも、彼は振り返らないままで。
「…グリーン…グリーンっ」
あたしは、彼に手を伸ばして、必死に呼んでいく。
「なんだよっ」
彼は仕方なくと言ったように、あたしに振り返った。
「…グリーン」
あたしはただ、必死にあなたに手を伸ばす。
立って、あなたの傍にいけばいい。
彼をこっちに呼べばいい。
そんな距離なのに、あたしはただ、彼の名前だけを呼んで、手を伸ばしてるだけ。
彼はおもむろにため息をつき、本を机に置くと、あたしの方に歩み寄ろうとした。
「……待って」
必死に呼んで手を伸ばしてるくせに、歩み寄ることを拒否する。
「…なんなんだよ」
彼は立ち上がろうとしたのを辞めて、眉を寄せた。
「…グリーンと、あたしの距離は、なんとなく、縮まない気がするの」
突拍子もない話題。
でも、意味がない行動はしていない。
ただ、この話をしたくて彼を呼び、この話をしたくて彼に手を伸ばした。
彼は、何がなんだか分からないと言った表情をする。
「だって、いくら山が高くても、空には届かないでしょう?」
山の緑と、空の青。
まるで、あたしとあなたの距離を表してるみたいじゃない?
「何の話だ」
まぁ、いきなりな言葉だ。
理解しろという方が難しいだろう。
「……あれ」
あたしは、グリーンの殺風景な部屋に、異質とも言える一枚の絵を、指差した。
その1枚の絵に描かれた物を簡単に説明するならば、緑の山と、青い空。
それを見た瞬間、なんだか心に不安がよぎった。
絵を見た後、再度あたしに視線を戻す。
「…だから、緑の山がどんなに高くても、青い空には届かないってことよ。だから、あなたとの距離は、縮まらないような気がするの」
再度手を伸ばした。
どっちかが近づけば届くのに、でも届かないと思えるそんな距離。
心の距離…。
それが、絵を見て得た不安。
彼はため息をついてあたしに歩み寄り、あたしの手を取る。
「…っ」
少しびっくりしたが、離したくなくて、ぎゅっと握り締めた。
悲観的な考えだって。
ただ、1枚の絵がそこにあるだけだ。
山と空の絵なんて、どこにでもあるような絵。
どこにでもあるようなシチュエーション。
そんなことから、こんな不安を心に残すのは、悲観的以外の何者でもない。
分かっている…分かっているけれど、一度できた不安を消すことなんて、あたしにはできなくて…。
呆れた彼が、あたしにそう言った。
たまたまそこにあったのは、空の青と山の緑だっただけ。
同じ色で自分達を例えるというならば、別の考えをすればいいと、あなたは言った。
それって、あたしがあなたを育んでいる。
あたしがあなたを抱きしめている。
そんな、すぐ傍にいられる距離。
こんな風に、手をぎゅっと握り締められる距離…。
彼にそっと抱きつく。
「…」
答えない代わりに、彼の顔が真っ赤になった。
「…うふふ」
なんだかおかしくて、笑いがこみ上げる。
「笑うな!!だいたいにして、空とか海とか、山とか、そんなでかいもんに例えるからこんなことになるんだ!」
真っ赤な顔のまますごんでも、効果は今ひとつよ?
だいたいにして、
「…海に例えたのはグリーンじゃない」
自分のこと棚に上げないで。
なんて、素直じゃないあたし。
「うるさいっ」
「何よぉ」
彼はあたしの言葉に顔をしかめた。
自分で言ったくせに。
ずるい人。
「あーーーっというかだな…」
彼はそんな話がしたいんじゃない、と言うように、流れを変える。
「?」
「俺は俺で、おまえはおまえだ。俺たちは、俺たちだろ?」
優しく撫でてくれるあなたの手のぬくもりが、さっきまでの不安を消していく。
でも、そんな言葉が嬉しくて、口元がほころびるあたしは、馬鹿な人。
あとがき