グリブル小説「盲目の夏魚」
 

 

盲目の夏魚

 

「んっ」
すっと目が覚めて、体を身じろぎさせる。
「…っ!」
顔を上げれば、グリーンの姿が目に入り、少し驚いた。

あぁそうだ、昨日は一緒に寝たんだっけ…。

「…」
そっと、抱きしめてくれていた手から、起き上がる。

 

昨日、何故だか泣きたくなった…。
一人に寂しくなった…。
何でか耐えられなくて、何だかすごく怖くった…。

だから、思わず電話をしていたの…。
慣れた手つきでポケギアを扱い、着信履歴の1番上にある、アドレス帳の1番上にある、彼に…。

『…なんだ』
誰かとも確認しない、ぶっきらぼうな声が、あたしの耳に届く。

ただそれだけで、今までの不安が薄らいでいく…。
たったそれだけのことで…。

「……今すぐきて…」
でも、不安で声がかすれる。
『は?』
「今すぐ来て!!」

声を聞いたことで安心したのか、涙が頬を流れていた。

こんな呼び出し方をしておいて、彼が来てくれるはずなんかないのに…。

「……来てくれたしね」
ふっと微笑んで、彼の頬を撫でた。

そう、結局彼は来てくれた。
なんで呼んだのかも聞かないで…。
あんな呼び出し方をしておいて…。
なのに、彼は息を切らせて、あたしの家まで来てくれたのだ…。

「ありがとう…」
指から伝わる彼のぬくもりが、あたしの中に浸透していく…。

あなたと、いつまでこうしていられるだろう…。

永遠なんて、決して信じたりはしない…。
永遠なんていうものは、ありえないわ…。

あなたとこうしていられる時間も、きっと限られている…。
あなたとどれだけいられるか、なんて分からない…。

きっと、あたしたちの別れの日はやってくる。

でも、その限られた時間の中で、あたしはあなたに何を残していけるだろう。
あたしは、何を得ることができるだろう…。

「…グリーン…」
優しく呼んで、頬にキスを落とした。
「…」
起きる気配のない、彼の隣に再度寝転がり、彼の胸に顔を埋める。
…心臓の音、呼吸の音を、誰よりも近くに感じられる距離…。

愛しい…。
ただそう言える…。
でも…なんだかとても切ないの…。

ここ最近、とてもあなたが遠くに感じてしまう…。
愛されてなんか、いないようで…。
とても…切ないの…。

「…どうした?」
「っ!?」
ぎゅっと抱きしめられたことに、驚いて彼を見上げた。
「…どうした?」
髪を優しく撫でながら、優しく囁かれる。
「…ううん、なんでもないよ…」
そう言って、ぎゅっと抱きついた。
「…おまえのなんでもないは、あてにならないからな…」
優しくあたしを撫でてくれながらも、顔がしかめっ面。
「…本当に平気だよ?」
そんな顔に、思わずくすりと笑みを浮かべた。
「…本当に大丈夫なのか?」
優しく髪を撫で続けられる。
「…抱きしめててくれるから、大丈夫よ…」
あなたが傍にいてくれるから…。
あなたの傍にいられるから…。
だから…大丈夫…。

あなたのその優しさが嬉しいの。
昨日会いに来てくれて、真っ先に抱きしめてくれたあなたの優しさに、涙が出た。
結局、泣き疲れて眠ってしまったけれど…。
でも、それだけ安心できたの…。
そうやって、優しく抱きしめてくれるから…あたし、今日もまた…生きていける…。

「そうか…」
彼は、しっかりとあたしを抱きしめてくれる。

こんな時間が、永遠に続けばいいのに。

でも、ずっと、続く愛なんてあるの?

そんなの…ありはしない…。
…きっと…ないんだと思う…。
そう…きっと…。
でも…

「…」
再度、彼の胸に顔を埋める。

…心臓の音、呼吸の音を、誰よりも近くに感じられるこの距離…。

「…グリーン…大好きよ…」
あなたを…愛しているわ…。
「あぁ…」
声は返ってくるけれど、言葉は返ってこない…。
あなたは、本当にあたしを愛してくれてる?
不安なの…。
切ないの…。

「…っ」
彼の服を、つかんでいた手の力を強めた。
「…ブルー?」
彼の声が、あたしの耳に響く。
「…なぁに?」
あぁ、声が震えそう…。
「…大丈夫か?」
再度優しく、そう聞かれる。
「……うん」
今はまだ…大丈夫…。
あなたが、優しいけれど、しっかりと抱きしめててくれるから…。

こうやって、また一つ幸せを知っていく。
こうやって、また一つあなたとの思い出を増やしていく。
こうやって、また一つあなたへの想いを募らせる。

あなたが欲しい…。
ただ…そう思う…。

あなたといれる時間が多ければ多いほど、より永遠に近づけるような気がするから。
あなたを手に入れることが…できたなら…永遠になれるような、気がするから…。

だから…あなたが欲しいの…。
だから…あなたを求めるのよ…。

ねぇ、お願い…。
あたしの、全てをあげるから…。

違う…。

ただあたしは、あたしの全てを受け止めてほしいだけなのかもしれない…。
過去も、今も、これからも…。
あたしの………全てを…。

ねぇグリーン…聞こえる?
なんだか…あなたの腕の中は…安心できすぎて…

 

そのあと、安心して眠りについたあたしの耳元で、彼が小さく言葉を囁き、優しいキスをくれたことを、あたしは知らないまま…。

 

2004年10月26日 Fin


あとがき

痛い?痛い?悲恋?えぇ。結構最後は幸せあまあまにしたつもりよ?もちろん兄さんがどんな言葉を姉さんに送ったかはみなさんの想像にお任せします。妄想かな(笑)まぁとにかく結構甘くしたつもりです。だめかな、これ。許されないかな。だってそういう歌なんだもん。そうです、これある歌詞をもとに制作されています。盲目の夏魚「blind summer fish」そういうのがあるみたいですね。話の内容にはタイトル全く関係ありません。ただ歌詞から引用したので貰ってきただけ。でも英語にするより日本語での方がいいかなって思ったので。
まぁ歌詞のまんまを小説にしています。本当よ?まぁいろいろな物をつけたしてはいるけれど。
しかしまぁ、この歌詞ほんとグリブルソングですよ?坂本 真綾さんの歌です。みなさん聞いてみてください。そしてグリブルを思いながら歌ってみてください。もだえます(死)っていうか両腕にいっぱいのやさしさ抱えてあなたは、抱き寄せてくれるからとかいう歌詞あるんですが、兄さんが?とか思って笑っちゃう(おい)まぁいいなぁと思います。
なんだか小説の方はいきなり始まってわけのわからないまま姉さんが不安を訴えてるだけですが、姉さんはそういう妙な気持ちの変化が激しそうな気がする。いきなりものすごく不安になったり、泣きたくなったりとか…。なんかあるような気がするのよ?きっと頼れる誰かを見つけちゃったからなんだろうけどね。弱くなれる場所を見つけられたんだと思う。兄さんもあんな呼び出され方で来ちゃうくらい姉さんにおぼれてるんだ(笑)結構年上設定かなぁ〜?18から20くらい。大人になってくにつれてある不安とかあるしねぇ。あとは10代と20代の差とか?兄さんの落ち着き具合がそんな気をさせただけです。若く見てもせいぜい17だなぁ。うん。まぁ兄さんが大人だと笑う。
ちなみに兄さんが姉さんに答えられてないのは言葉を口にするのが恥ずかしいからです。結局大人になってもへたれはへたれです。あははは。それで姉さんを不安にさせてるのに〜。やーいグリーンの馬鹿〜(おい)あはははは。