グリブル小説「大好きな距離」
 

 

暇。
ものすごく暇。

なんにもない、日曜日。
予定のない日曜日。
暇を持て余す、もったいない日曜日。

「ひまぁああああ!!!」
なんて叫んだところで、どうなるわけでもない日曜日。
「暇」
分かってはいるけど、言わずにはいられないのは、人間の性なのよ。
絶対そうよ。
そういうことにしときなさい。

「暇」
暇と言葉にして、ごろごろできるくらい体力も有り余ってるっていうのに、何このもったいない時間。

「暇なのよ」
そう、暇なのよ。
それ以上でも、それ以下でもなく、ただ単に暇で、ただ単にその持て余した暇を、ここでつぶそうと思っただけで。
「だからなんなんだ」
べつに、グリーンに会いたかったからとか、寂しくてしようがなかったからとか、そんなんじゃなくて…ただ…暇だったからで。
「暇なの!!」
そう、ただ暇だったから、時間をつぶせる場所を提供してくれそうで、相手してくれそうな人を探してただけで。
「だからなんなんだ。俺にどうしろと?」
別にそれが、たまたまグリーンだっただけで…。
「べつにいいでしょ!!グリーンだって今日仕事休みで暇でしょ?」
ずかずか勝手知ったるなんとやらで入っていく。
「貴重な本を読める時間なんだが?」
そう言いながらも止めることもせず、グリーンも家に入っていく。
「っていうかたまの休みくらい、彼女の相手をしなさいよ!!」
そうよ、そうよ。休みに会う恋人同士なんて普通でしょ?
そう、あたしがここにきたのも普通のことよ…。
「はぁ」
彼は諦めたように、読んでいたらしき本を片づけて椅子に座る。
「…」
そう、あたしがここにいるのも、別に普通のことよ。
そうなのよ。
「…で、何の用だ」
「へ?」
用?……用……。
「用があってきたんじゃないのか?」
はぁっと再度ため息をつかれる。
「え、あ…えっと…その…だから……」
暇だったからで、別に、こんな日に、恋人に会うのは普通のことで。
だから用…。
用……。
「だから?」
「……えっと…あ!駅前のところに大きなデパートができたの!!今度行きたいな!って…」
それを言いにきた!よし。
「そんなの、電話でもメールでもいいだろう。つーかそれだけか?」
「え!?あ…う…お…」
あ、話が終わっちゃった。
えーと、えーと……用…用…。
「…」
そんな黙って待ってないでよぉ。
どうせ用なんて何にもないわよぉ。
ただ……
「…暇だったんだってばぁ…」
暇で、暇で、暇で。
せっかく…グリーンも休みなのに…。
会いに…きたって…いいじゃない…。

 

 

 

「はぁ」

やっぱり呆れられた。
どうせ用がなきゃ、一緒になんかいてくれないよね…。
「…っ」
帰ろう。
ここにいても、意味はない…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…っ」
そう思って立ち上がろうとした瞬間だった。
「…」
「…グ……リーン…?」

 

…目の前にあるのは、グリーンの着てた服の色。
…背中にあるのは、ひとつのぬくもり。

「まぁ、べつに、どうでもいいけどな」
彼がかったるそうに、言葉を吐く。
「…」
あぁ、さっきの暇だったに対する返事か。
なんて、さっきの会話すら忘れるほどの衝撃。

どうしてくれよう。

「…ブルー?」
返答のないあたしに疑問を持ったのか、彼があたしの名前を呼ぶ。
「…っ」
とりあえず、絶対離さない。
「なっ!?おいっ!?」
慌てる彼の声が、近くに聞こえる。
早くなる鼓動を身近に感じる。

「大好き」

大好きな距離

2006年4月14日&18日 Fin


あとがき

学校の帰り道に電車の中で書いた1作。ワード機能がついているとすごく便利ですね。そのまま添付しておくればいいだけなので、ものっそく便利です。
この話はRALUKU様とメールをしているときに思いつきました。会話につまる姉さんって可愛いよねという話しから産まれました。でもゼミ中で考えるに考えられなくて、帰りの電車の中で書いていたというおち。最初は姉さんがある場所から兄さんを連れだしたはいいけど、会話が無くて困るって話だったんですけどね。気付けば何故か、「突撃!隣の晩ご飯」みたいになってしまいました。なんででしょう。まぁいいやってことで(おい)
久々のグリブルがこれでいいのかと言われそうですね。なんか小説らしい小説が書けません。ワンパターン化してきてるというか。いっそ長編でも書いたらマンネリ化にならないかしら。これをスランプと呼ぶのかしらね。わからんけど、RALUKU様に姉さんが可愛いと言われたのでそれで満足しました(おい)
タイトルが最後に来る話を始めて書きました。これがタイトルだと認識してくれた人はどれだけいたかは謎ですけどね。