グリブル小説「午前2時」
 

 

嫌な夢を見て、目を覚ましたら、そこは、白銀の世界だった…。

 

午前2時

 

「…」
寝起きなせいか、体が寒さを感じてくれない。
「…雪」
ぎしっとベッドから降りて、冷たい床を裸足で歩く。
遮光カーテンを開ければ、そこは一面、雪だらけで…。

今日は満月。
月明かりに照らされた雪が、青白く光っていた。

部屋が異様に明るくて、時間の感覚は掴めないし、寝起きの体には、温度すらも掴めない。

あたしは、いつものノースリーブのワンピースのまま、気づけば玄関の扉を開けていた。

さくっという音がして、振り向けば跡が残っている。
きゅっという音がして、そこにあたしの、跡が残る。

誰もいない夜の時間。
誰もいない雪の日。
今、ここにはあたししかいなくて、この跡だけが、あたしがいたことを、証明している。

「…はぁ」
吐く息は白いし、一面雪景色なのは変わらないのに、不思議と寒いと感じないのは、なんでなんだろう…。

あたしは、道のど真ん中を1人で歩く。
毎日車が多いこんな道路ですら、ただ雪が積もった、長い長い広場になっていて…。
信号機が、誰もいないのに色を変えていくのが、まるで違う世界に来たように、感じられた…。

そんな世界を横目に、あたしは真っ白く続く雪の広場に、あたしという道を、作っていく。
さくっという音がして、振り向けば跡が残っている。
きゅっという音がして、そこにあたしの、跡が残る。
そんなことを繰り返して、長い長い雪の広場は、あたしが作った跡で、道になっていた。

誰もいない、何もない、音も聞こえない、誰も通ってない、誰も汚してない、誰も、何もしてない…。
そんな、夜の、雪の世界。

「……はぁ」
一息息を吸えば、冷たい空気が、喉を通り、体中に伝わっていく…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…いい加減寒いんだが?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「…え?」
あたしは、声のした方へ振り返る。
「……せめて上着くらい着ろよ」
そう言って、彼がいつも着ている緑のジャケットを、あたしの肩に、かけてくれた。
「…グリーン?」
あたしはゆっくりと彼を見上げる。

肩から感じる彼のぬくもりが、初めて寒かったんだと、感じさせてくれた。
彼の声や、存在が、別の世界なんかじゃない、現実なんだと、感じさせていく。

そうか…。
そうだったね…。

「…起きたらいないからびっくりしたぞ。こんな時間に1人で出歩くな…。しかもこんな格好で。あげく道路のど真ん中を悠々と歩いてるんじゃない…」
彼は呆れたように、あたしの頭をこづく。
「…っ…だって……」
「だって?」

あたしは、彼の後ろの風景を見て、なんとなく言葉を止めた。

あたしがつけた、あたしがいた証の隣に、彼の足跡があることに気付く。
彼の温もりに、あたしが今、現実の世界を、あなたと生きていることを、感じることができる。

あぁ良かった。
1人じゃない………。

 

「…だって、きれいな雪道って、一番に足跡つけてみたくならない?」
あたしは嬉しそうに微笑む。
「おまえは子供か…」
彼は呆れたように顔をしかめる。
「この時間なら、絶対誰も足跡つけてないし」
「だからって、こんな時間に一人で出歩くな。せめて俺を起こせ…」

あぁ、心配してくれたんだね…。

「…っ」
「グリーンは、あったかいねぇ」
ぎゅっと彼に抱き付く。
「…おまえが冷たいだけだろう…」
あたしの冷たい手を、彼が優しく包んでくれるから、なんだか泣きそうになったけど、でもなんでか、自然と微笑めた…。

帰ったら、暖房をつけずに、あなたの腕の中で眠ろう。
そうすればきっと、恐い夢を見ずに、また明日、この道を、あなたと一緒に、歩いていけるから…。

そんなことを思えた、午前2時…。

 

2006年12月13日 Fin


あとがき

意味不明だ!!!勝手に最初にタイトルを決めちゃったもんだから、なんだかそれに 似合う話しにするのに必死でした。あれぇ、おかしいなぁ。そんなつもりじゃなかっ たのに。まぁ他のタイトルは、「雪」かな?まぁ「雨」の話と かけたから「雪」のが良かったかもね。でも感じが違うからいいのかな。
ちなみにこれ、俺が実行したことです(笑)夜中の2時に車の通らない大きい道路のど真ん中に足跡つけたことあります。しかもGパン半袖Tシャツで。あははは。何やってんだって話ですね。
これは源造様に捧げた1作です。仲良くなれましたやった!企画みたいな?(ええ)まぁリクエストは季節にそった感じでということだったのですが、冬=雪という感覚しか持ち合わせていない僕にはこうなりました。あまり詳しいリクエストがなかったので、「雨」が好きだと言うのと、温度差がいいっていう言葉と、兄さんのさりげない優しさがいいという言葉を全てミックスしてみました。ダメですか?そうですか(死)ううう。これが限界です。許してやってください!!!ごめんなさい!!!