「ねぇグリーン」 夏が終わって秋が来る。 そう思ったのはいつの頃だったか。 彼の部屋で、彼のベッドでごろごろとしているあたしの格好は、いつものノースリーブのワンピース。 本気と冗談 「…なんだ」 彼はあたしが、「ねぇ」で話し出す言葉の意味を分かってる。 「…ねぇ、あたしが消えたらどうする?」 「………は?」 たっぷり間をあけて返ってきたのは、間の抜けた声と間の抜けた顔。 「…だから、あたしが消えたら…っ!?」 その表情は、さきほどまでのけだるそうな感じなんか、微塵も残ってない。 彼を本気で怒らせた記憶は一度もない。 正直、恐いと思った。 「…本気なのか、冗談なのか、どっちだ」 「…今日は冗談」 本ばかりに構うあなたを、振り向かせるには絶大な言葉だったけれど、そんな顔をさせるために言ったわけじゃないのよ? 「……ごめん」 さっきの恐いと思った表情なんてどこへ消えてしまったのか。 「…あなたがあたしを離さないで、ずっと愛してくれたなら、本気で消えるなんて言わないってこと…」 でも結局言葉じゃ何も言ってくれないのが悔しいから、雰囲気でキスしてきそうになったのを、逆にキスを仕返して真っ赤にさせた。 あぁ、大好き。 2006年10月12日 Fin
荻野アーコ様に捧ぐ小説。無性にグリブルを書きたくて、でも絵じゃ書けなくて、しょうがないから小説にして。でも書くネタが思いつかなくて、どうしようもないからお世話になってる荻野様にリクエスト頼んでみた。「シリアスチックなたとえ話を、休日ののどかな時間にしてる話(ブルグリチックでvv)」ということで。最初たとえ話ってなんじゃろかと悩んでいたんですが、脳内は「死んだらどうする?」って内容にしかならなくて、そんな内容じゃなんかあんまりにも突拍子もないから、本気なのか冗談なのか分からないような「消える」っていう言葉にしてみました。姉さんって気を抜けば絶対消えそうな気がするの。ちょっと目を離したすきにもういないみたいな。そんな気がしてなりません。実際ケンカしたらどっか行方不明になって、兄さんが必死扱いて探すのがいつものパターンだといい(笑)だから本気で怒ってくれそうなそれでいて現実めいているような「消える」にしてみました。シリアスしか書けないので結構楽だった。ブルグリチックって言われて、なんだか珍しく兄さんが攻めてくれるからびっくりしちゃった。どうしたの兄さん、強化月間に出たかったの?まぁいいや。うちの姉さんは強いんで、結局兄さんが負けました(笑)ブルグリチックなグリブルを楽しんでいただけたなら幸いです。
そのはずなのに、通り越して冬みたい。
そして、いつもように本を読んでるあなたの後ろ姿に、「ねぇ」といつものように言葉を投げかけた。
「ねぇ」で始まる言葉は、彼を困らせる言葉の主語。
それが分かるくらい、あなたといる時間を、幾度も共有してきた。
だから、彼がけだるそうに、それでいて諦めたように返してくれる声が、今ではむしろ心地良い。
思わず笑いそうになった。
彼がいきなり立ち上がり、あたしの腕を力強く掴む。
「それは本気か冗談か?」
彼が真剣な目で、あたしを見下ろした。
むしろ、どちらかと言えば怒りを露わにした表情。
ケンカしたって、あたしが怒ってるばっかりで、グリーンに怒られたことなんか一度もなかった。
少なからず、あたしに対して、怒りの表情を向けられたことはない。
背筋に嫌な汗が流れた気がしたほどに。
「っつ!?」
力強く掴まれた腕が、悲鳴をあげる。
それでも腕を離そうとしない彼に、あぁ、本当に怒らせてしまったのだと、なんだか呑気に頭は考えていた。
恐いと、思ったはずなのに、自分が「消える」という言葉に、ここまで本気に怒ってくれたことを、内心では喜んでいたからなのかもしれない。
今日の陽気のように、きまぐれのあたしの不安定な心は、こんな言葉意外に、あなたに構ってもらう術を見いだせなかったのよ。
「…そうか」
彼は溜め込んだ息を吐き、腕を離す。
手の痕が残った痛む腕なんか放置して、彼の首に腕を回す。
「…今日はってことは、いつかは本気で言うのか?」
彼の手が、力強く背中に回される。
「…それはあなた次第」
優しく唇にキスをすれば、
「っ!?」
彼の体が一瞬震えるのを、あたしの体が感じとれる。
「…俺次第ってどういうことだ」
赤い顔を背けるあなた。
そういう可愛いところも、あたしは好きだ。
いかにさっきの感情が本気だったかを知れて、ますますあたしは調子に乗る。
「………冗談でも言うな」
ぎゅっと抱きしめる力が強くなって、少し息苦しくなったけど、彼があたしを離さずに、愛してくれてるのだと思えたから、なんとなく安堵に変わった。
あとがき
感謝の気持ちを込めて、荻野様に捧げまする。どんぞ!(いらん)