言えない言葉 「なんかここ最近、ブルー可愛くなったよな」 なんだって? 「おまえ、あいつに直接言ったのか?」 わけのわからない感情が、俺の心を蝕んでいく。 気づいたら、自分でも予想しなかった言葉、口から零れ落ちた。 「…俺が言えない言葉を、おまえが言うなっ」 この感情に名前がつくのは、もう少し後のこと…。 2007年9月3日&30日 Fin
なんか、レッドさんは兄さんが言えないような台詞を、いろいろと伝えていそうで、それに兄さんが悔しさという名の嫉妬心を感じてくれるといいなぁって思います。まぁ兄さん自身、人を好きになる感情ですら、いまいちよく分かってないのに、姉さんを自分だけのものしておきたいという独占欲。レッドに言えない言葉を言われての悔しさと、嫉妬の感情を理解するには、まだまだ先になりそうだなぁって感じで。まぁ、心にじわりとでも感じることができたなら、それだけ姉さんの存在が兄さんにとって大きな存在になったってことだから、少し嬉しいですけどね。こういう話が書けるようになった時点で、僕の兄さんは少しずつ、姉さんを受け入れ始めているのかもしれません。この勢いで愛せよ兄さん!!頑張れ!!!でもほんとここ最近兄さんが姉さんを愛すことに違和感を感じなくなってきました。いい傾向です。がんばれ!!
そう、レッドがいきなり言い出した。
「は?」
何事かと、自分の耳を疑う。
「いや、おまえもそう思わね?一番近くにいんだし」
「なんなんだよ、いきなり」
なんでそんな話になったんだ。
「…いや、こないださ、俺が旅に出た地方にしかいないポケモンを、捕ってきて欲しいって頼まれたんだよ」
「それで?」
とりあえず話は聞いてやる。
「なんか、前のあいつはさ、物事を頼むというより命令というかさ、それこそ捕ってきた奴を奪わんばかりな感じだったじゃん?」
「そうだな」
そういやおまえ、バッチ奪われたことあったな…。
「それがさ、純粋に頼みごととしてお願いされて、実際捕ってきて交換したらさ、素直に笑顔でありがとうって言われたんだ」
なんで変な顔をする。
「それが?普通じゃないか?」
人間として。
「だってあのブルーだぜ?それくらいして当然でしょ?みたいなあの態度だったブルーがさ、今じゃあんな丸くなってんだぜ?!びっくりだろっ!」
そんな力説しなくても…。
「それと可愛いとどう繋がるんだ」
話を戻す。
「まぁだから可愛いつーか、素直になったというか、丸くなったというか」
「ふーん」
俺は本に視線を戻す。
「おまえはそう思わないのかよ!?一番一緒にいるんだろうがっ」
なんでそんな食ってかかるんだ。
「つーか俺の前じゃ、昔からそんなだったが?まぁ少し落ち着いた感はあるが」
昔ほどきゃっきゃ騒がなくはなったなぁとは思ったが。
「俺だけかよ!?」
「まぁ、おまえはいじりやすいからな」
反応がおもしろいから、ついついいじめてしまう。
「えぇええ?!」
「うるさい」
俺は持ってた本で、軽く額を叩いた。
「いてっ!?」
ほら、おもしろい顔。
「…はぁ」
俺は机に本を置いて、一息つく。
「…うぅくそう。おまえだって可愛いとか思ったことあんだろっ…少しは言ってやればいいじゃん」
「なんでそんな話になる」
仕返しか?
「だってこないだ可愛くなったって話をしたら、真っ赤になって嬉しそうにありがとうって言われたぜ?おまえに言われたらもっと喜ぶんじゃね?」
「え?うん」
そういやおまえ、天然タラシだったな。
「…っ」
なんだか分からない感情が、心を蝕む。
「…なんだよ、そんな眉間にしわ寄せて」
そんな感情が顔に出たのか、レッドがたじろいだ。
なんだ、なんなんだ。
じわりと、痛みのような、苦しみになる感覚。
俺は小さく愚痴ると、腹いせに机に置いた本を顔に投げつけ、部屋を出た。
「ふがっ!?な、なんだよ!!!」
俺が出てったドアに本を投げつけた音が、背中越しに聞き取れた。
あとがき