現在(いま)

「…っ」
俺はふと目を覚ます。
一緒に眠っていた彼女が、身じろぎして俺の胸に顔を埋めたからだ。

ただ、一緒に眠ることに抵抗がなくなったこの頃。
こうして、彼女の動きに目覚めることもあれば、思った以上に寝過ごす日も、多々あるようになった。
それくらい、彼女と眠ることを自然に感じている自分に、呆れを通り越して、どうでもよくなってくる。
もう、これがあたりまえだったんじゃないかと、思えてしまっているからだ…。

「…」
彼女の、さらさらの長い焦げ茶色の髪の毛は、夜の闇には、より暗い色に見える。
白いシーツに散らばる彼女の髪を、優しく梳くように撫でた。

「…」
一緒に眠るようになったのは、彼女がよく夢に魘されるからだ…。
彼女自身は、もう大丈夫だとは言うけれど、彼女の過去は、より精神の深みに根付いているようで…。
こうして、一緒に眠っている現在ですら、彼女は助けを求めるように、俺のぬくもりに触れたがる。
夜中に泣き声で起こされて、会いに行くよりは一緒に眠る方が良いと、ここ最近泣かれる回数が増えたのも、影響してこうなっていた。
まぁ、俺がブルーに会える回数が減っていたのも、影響したのだろうとも思っていたのだが…。

「それがまさかな…」
俺の安眠に役立つとは思わなかった…。

仕事で疲れて眠ると、死んだように眠るのに、朝起きても、まだ体は重かったりする。
遅く帰る日は、まだ体が起きているのか、いまいち寝付きが悪かったりする日も多々ある。
それでも、ぬくもりがあるだけで、いや、人がそこにいるだけで………こいつが、そばにいることが、俺の安眠を促進してくれるようだ…。

まぁ、一緒に眠るようになったのが利いているかは不明だが、夢は現実を反映しやすい。
一緒に眠っているから平気だと、気持ちだけでも前向きになるのは、良いことだろうとは思う。
俺も安眠に役立ったわけだから、結果オーライだ。

「…」
まだ幸せそうに眠っている、彼女の頬にかかった髪を、優しく払う。
俺には、こんなことくらいしかしてやれない。
きっとこれからも、何かをしてやることも、どうすることもしてやれないのだろう。
それでも、こうして、幸せそうに眠る時間くらいは、作ってやれたらいいと思う。

「…っ」
俺は、優しく額にキスをする。

どうか、現在は幸せで…。

2009年7月12日 Fin


あとがき
やっぱり日付を超えてしまった!!さすが夜!(え)朝昼夜シリーズの「夜」バージョンです。初の微エロでも目指そうかなとか思ったのですが、なんとなく健全に(え)そして「昼」の方でも言ったように、兄さんの独白になりました。かなり馬鹿な兄さんではありますが、独白であるからこそ、少しは素直になってもらおうかなって感じで(笑)いろいろ譲歩してもらった感じです(え)
今回は姉さんが一言も喋ってませんね。きっと兄さんはいろんなことを姉さんが気づかないところで考えてるんじゃないかなって思います。RALUKUさんのグリーンは過去に関われないこと、どうしようもしてやれないことを悔やむ傾向があるのですが、そこが少し反映されてるかもしれません。きっと兄さんは求められたときに喜んで手を差し伸べてくれると思います。それまでは我慢。過去は人によって触れない方が良いこともありますから。まして本人が大丈夫だと言ってる時はとくにね。そんな我慢の中に、願う想いみたいなお話。「夜」っぽくないですけど、時間が「夜」って意味で。すべての話の時間軸が違うイメージですが、すべて同じとしてもぜんぜんOKそうですね。一人で平気な夜を過ごして、朝起きてお弁当つくって会いに行って、ジムで昼寝して、夜に一緒に眠って、幸せな朝を迎える。きっとこの二人は、そんな日常を繰り返してるんじゃないかなって思います。いかがでしたでしょうか、朝昼夜シリーズ。ただ幸せを過ごす彼女たちから、あたしたちも幸せをわけてもらいたいですなぁ。一生やってろよ!くそう!!