グリブル小説「イルミネーション」
 

 

「えぇええまたぁ?!」
「…しょうがないだろ、この時期しか片付けできないんだから」
「去年もそうだったじゃない!!!」
「年末は何かと忙しいんだ。また正月後に相手してやるから」
「お正月後じゃ意味ないの!!クリスマスじゃなきゃダメ!!2日あるんだから、どっちか休みにしてくれたっていいじゃない!!」
「ジムに、クリスマスは関係ない。祝日でもないんだし。だいたいなんでクリスマスにこだわるんだ」
「そんなの恋人達の大イベントだからよ!!だからどっちか休んだってべつにいいじゃない!!」
「無理なものは無理だ」
「けち!」
「けちで結構」
「…………っグリーンの馬鹿!!!!!」
ばたんっとドアを開けてジムを飛び出す。

あー去年の繰り返し。

 

 

イルミネーション

 

 

「むーかーつーくーー!!!」
ばんっとテーブルを叩く。
「毎年こりないねぇ」
毎度レッドの家に上がり込んでは、こうやって愚痴の繰り返し。
「…懲りないのはグリーンよ!去年で少しは変わるかと思ったのに!!!あいかわらずジムの片づけがあるからクリスマスはダメってなんでなのよ!!!」
「まぁ、あいつにイベント事を期待するだけ無駄だろ?」
「そうだけどさぁ…」
眉間のしわがいっそう深くなる。
あたしがしわしわのおばあちゃんになってもいいのかしら。
「また今年も一緒にジムの片付けじゃダメなのか?」
ぽんぽんっとレッドはあたしの頭を撫でた。
「去年すっごい大変だったのよ!?手伝うから夜はずっと一緒にいてねって言ったのに!!終わるどころかそのまま大晦日まで終わらなくて大掃除まで手伝わされて、やっと話ができたのがお正月あけてからよ!?クリスマスはどこにいっちゃったのよ!!!」
グリーンのばかぁあああ!!!っと再度叫んだ。
「…そ、それはご愁傷様」
彼はひきつった笑顔を浮かべてる。
「馬鹿。ほんと馬鹿…。やっぱりグリーンは仕事が一番なんだ。一生仕事に生きて仕事に死んでいくのよ…。あたしなんか入り込む隙間なんかないんだわ…」
うぅうといじけて、テーブルにのの字を書いてみたり。

そんなことしたって、何を叫んだって、怒ったって文句言ったって、何したって、結局クリスマスを一緒に過ごせないのは変わらないんだけど…。
でも叫ばずにはいられないじゃない!

はぁ、クリスマスに、彼氏と一緒にいたいって思うことはわがままだろうか。
そんなにも難しい注文なんだろうか。
ただクリスマスに一緒にいたいだけなのに…。

「…あいつは仕事は仕事で割り切ってるからなぁ。責任持ってやってるだけなんだけどね」
「分かってるよ…」
レッドなんかに言われなくたって、グリーンのことなら分かるもん…。 

中途半端が嫌いで、最年少だからと馬鹿にされないように、しっかりと仕事をやりとげてる。
頑張ってるのも知ってるし、無理してるのも知ってるけど…でも……。
「…ブルー?」
「クリスマスにタマムシシティーにデートに行くのが夢だったのになぁ」
これじゃあ、一生叶わない…。

毎年クリスマスには、タマムシシティーのお店はデパートをはじめ、クリスマス仕様に飾り付けされる。
さらには中央に大きいクリスマスツリーが植えられて、雑誌に乗るような素敵なデートスポットに早変わり。
そんな場所に、彼氏と一緒に行けたらどんなに幸せか…

と、夢を見てたのは去年までだ…。

本当は分かってたんだ。
今年だって無理だってことくらい。
去年のことで嫌と言うくらい忙しいのは分かったし、頑張ってるのも、無理してるのもよく分かった。
それでいて、べつにあたしをないがしろにしてるわけでもなくて、むしろ、あたしのためにいろいろ頑張ってくれてるんだってことも気付いた…。

 

そう、気付いてしまったんだ…。
そういうことに…。

「やっぱり、わがままなんだよね…」

なんだかんだ言ってお正月終わった後に、クリスマスプレゼントの代わりに好きな物買ってくれて、一緒にデートして、ずっとあたしと一緒にいて話を聞いてくれた…。
疲れてるはずなのに…。

「…わがままつーか、普通ならできるけど、あいつは普通じゃないっていうか…」
普通にトレーナーやってる、暇人とは違う。
そんなの分かってるけど…
「分かってるけど、怒らずにはいられない!!」
むかつくし、淋しいし、悔しいし!!
分かってたって、分かってるからこそ!!!!怒らずにはいられないの!!!!
「まぁ、おまえはそうだろうなぁ…」
はぁと溜め息をつかれる。
「…ちょっとでもクリスマスを満喫できるような…………」

 

 

 

 

 

「ブルー?」
レッドが、あたしの顔の前で手を左右に動かす。

そうか…

「おーい?」
「そうだわ!!」
「うわっ!?」
あたしがいきなり立ち上がったことに驚くレッドは無視して、あたしはレッドの家を飛び出した。
「おい!」
レッドの呼ぶ声が聞こえるけど、あたしには聞こえない。

そうか、何もツリーはタマムシシティーだけにあるんじゃないし、飾り付けされてるのはお店だけじゃない。
クリスマスを満喫するだけなら、簡単にできるかもしれない。
あとは、

 

 

 

 

「あとは説得するだけなんだよね…」
はぁっと溜め息をつけば、白い息になって空へと消えていく。
「…30分くらいなら…大丈夫かなぁ」
あたしは窓の前で立ち往生。
去年は裏口、今年は窓の前。
勇気がでないのは去年のまんまか…。
「…えーい!!」
こんこんっと、意を決して窓を叩く。

ここは、グリーンが良く、書類を整理するときに使う机がある、部屋の窓の前。
電気がついてるから、今はここにいるはずなんだけど…

「…っ」
再度窓を叩けば、カーテンが開けられて、中の住人が窓を開けてくれた。
「おまえ、こんな時間に何やってんだ…」
彼は相変わらず、眉間にしわを寄せている。
少し疲れた顔もプラスされて。

いつも通り態度が変わらないのもいつものこと。
ケンカしてるはずなのに、そんなこと微塵も感じさせない態度。
それが時にむかついて、それがときに安心できて…

「ねぇ…グリーン…」
じっと彼を見上げる。
「ん?」
「…30分だけ、30分だけあたしにあなたの時間を頂戴!お願い…30分だけ…」
なんだかまた泣きそうになる。

泣く気なんかないのに。
なんでだろう。
断られるのが恐いから?
いや、玉砕覚悟よ。無理言ってるのは事実なんだし。
じゃあ…なんでだろう…。

「…」

沈黙。

やばい、本気で泣きそう…。

「…はぁ。玄関から来い」
そう言うと彼は窓を閉めカーテンを閉める。
「…」
電気が消されてドアが閉まる音がして、玄関のドアが開く音がして。
「…ブルー」
上着を着た彼が、あたしを呼んで。
「…………グリーン、玄関の呼び鈴押したって、仕事に夢中だと気付かないじゃない」
あたしは嬉しくて笑ってしまいそうな顔を無理矢理苦笑にして、彼に近付く。
「そうか?」
「そうよ…」
くすくす笑って、彼の腕に抱き付いた。

いつもみたいに怒ることも、振り払うこともしない彼が、申し訳ないと思ってるんだってことが、自惚れかも知れないけど、なんとなく感じ取れた…。

「どこ行くんだ?」
あたしは彼の腕を引っ張ってトキワシティを歩く。
「…ここ」
「は?」
「イルミネーション。綺麗でしょ?」
トキワシティの家々は、それぞれ個性溢れるイルミネーションで溢れている。
お店のそれとは違い、個人が好き勝手に装飾するクリスマスのイルミネーション。
質素なものから派手な物までそれぞれで、個性溢れる夜の展覧会だ。
「…こっち側はこんなに飾ってるんだな。電気代もばかになんないだろうに」
「もう!夢のないこと言わないの!!」
彼の額をこづく。
彼の帰り道とは逆のこの通りは、ちまたじゃ少し有名なイルミネーション激戦区。
まるで我が家が一番と言わんばかりの飾り付けに、投票所でもあったらもっとおもしろかったのに、なんてくすくす笑いながら通りを歩いた。

レッドの家の真向かいの家が、綺麗に飾り付けてたのを見て、トキワシティの噂を思い出して。
クリスマスらしさを満喫するだけなら、ここでも十分かなぁって、最高の妥協案。
まぁ何より…

 

「クリスマスに、グリーンとクリスマスデートっぽいことしてみたかっただけなの。付き合ってくれてありがとう…」
イルミネーションで飾られた通りを見終わった頃には、ジムに帰るには30分を過ぎてしまう時間で。
申し訳ないと思いながら、でもあたしはなんとなく幸せ感いっぱい…。
「…悪かったな」
彼が優しく頭を撫でる。
「…え?」
「…来年もたぶん、片づけが忙しいと思う。でも、また、この通りを歩くくらいなら、できるから…」

 

 

 

 

 

 

「…ずるい…」
「何が?」
「…馬鹿………でも…大好き…」
ぎゅっと抱き付いて、胸に顔を埋めた。

優しいキスと、優しい言葉と、謝りの言葉を同時にくれたら、それ以上文句なんか言えないじゃない。
むしろ、好きって気持ちが、余計に増しちゃうじゃない…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

馬鹿…。

…冷たい雪が、降ってきて、暖かいキスが、降ってくる…。

 

2006年12月24日&26日 Fin


あとがき
無茶苦茶である。知ってます(泣)すいません。なんかもう、姉さんの気持ちの赴くままにキーボードを押してたらこうなってしまいました(汗)去年のクリスマスの話しもはちゃめちゃだったものの、今回も輪をかけてはちゃめちゃだなぁと思います。知ってたけど(死)ぐすん。なんでこう、ギャグチックなのははちゃめちゃになるんだろう。僕は全部シリアス担当なのかしら。うーむ。ギャグを上手く小説で描ける人は尊敬に値する。おそろしきかな。まぁそんな感じで、おかしさMAXですが、去年よりもいささかラブ度は高いかな?兄さんがしっかり攻めっぽいというか、なんというか、なんというか。結局クリスマスにアップはできませんでしたが、他のを差し置いてとりあえず季節ネタ的にアップです。1月にクリスマスネタアップするのは嫌だと思ったので。
まぁしかしトキワシティがイルミネーション激戦区なんてねつ造もいいとこですね。ちなみに緑山スタジオがすごいので、その話を聞いてネタにしました。あの二人はこういうとこでもデート!って姉さんが喜んでそうで。うん。しかもタマムシシティのツリーもねつ造もいいとこだ。どこに置くんだ。あああ。まぁ勝手きままが「二次創作」のいいとこです!きゃっほう!