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グリブル小説「彼女」
 

 

彼女

 

誰もいない、何もない場所に立つ。
ブロックを高く積み、そこに、そこら辺に落ちていた空き缶を乗せる。

「リザードン」
俺は、モンスターボールから出しておいたリザードンを呼んだ。
リザードンはどすどすと歩きながら、俺に近寄ってくる。
「行くぞ」
その指示とともに、リザードンは炎を細かく連射した。
全ての炎は、先ほど置いた缶めがけて飛んでいく。

もちろん俺のリザードンだ。
はずすわけはない。

「…」
全てを打ち落としたのを確認した後、間髪入れずに別の缶をリザードンの前に投げつける。
四方八方から投げつけるが、これももちろん、全てを打ち落とす。
「飛べ!!」
その指示とともに、缶を俺の周りにまき散らせば、一つ残らず、缶は焼け落ちていく。
一切、俺には当たらずに。
「…よし」
下に咲いていた雑草が、燃える匂いが立ちこめる。

俺は一息ついた後、最後の一缶を不意打ちに投げつけた。

「がうっ!」
俺がよしと言ったにも関わらず、リザードンはそれめがけて少量の炎を吐く。

俺の命令がなくても、不意打ちに自己判断ができる。

よくできた。

 

 

 

 

 

そう頭では言葉を言うつもりだった。

なのに、

「まて!!!」

言葉は、否定の言葉をかけている。

しかし、時はすでに遅い。
吐かれた炎は、缶めがけて飛んでいく。

缶の向うにいる、人物にも…。

 

 

まずい…。

このままでは、缶に当たって炎の威力は半減されるものの、勢い余った炎は直線的にその人物に向かっていってしまう。

この距離からでは、助けるにも間に合わない。
相手がポケモンを持っていたにしても、不意打ちにリザードンにやらせたものだ。
瞬時に状況を判断してガードさせるなんて、よっぽどの腕じゃなきゃできない。
むしろ、ポケモンを出している時間がない。

なんでこんなところにいるんだ。
いくら少量の炎と言えど、半減されても炎は炎だ。
やけどだけですめばいいが、直撃したらそれだけじゃすまない。

「ブルー!!」
間に合わないと分かっていても、俺は彼女の名前を呼びながら、走り出していた。

あんなの避けられるわけない。
俺くらいならまだしも、女のあいつには…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…」

 

 

 

 

 

 

ん?

 

 

 

 

 

 

「あっぶないなぁ。もう少し人の気配感じてよ」
グリーンともあろう人が。あたしじゃなかったら避けられなかったよ?

なんて言ってるのは、目の前にいる少女でいいんだろうか…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こいつ…

 

 

 

避けやがった。

しかも、紙一重で…。

確かに顔のサイズくらいの炎の玉だ。
缶で半減してるし、少し顔を動かせば避けられるとは思う。
だが、それを瞬時に判断して、体を動かす反射神経があればの話だ。

「…ん?どうしたの?」
彼女は何事もなかったかのように、首を傾げて俺を見ている。

 

 

 

こいつ、化け物か…。

 

「あ、今失礼なこと思ったでしょ!」
もうっと頬を膨らませた。
「…っ」
俺の心は見透かされてるのか?
「もう。ほんと気をつけなよ?あたしだったからよかったけど」
「いや、おまえだからよくねーよ」
心臓止まるかと思ったぞ。
「あら、心配してくれたの?」
「…心配した意味は一瞬でなくなったけどな」
ここまですごいやつとは思わなかったよ。
俺はこいつを相当甘く見てたみたいだ。
「うふふ。まぁ修羅場潜ってますから?」
彼女は普通に微笑みながら言う。

そういうことを、笑顔で言わないでください。

「……はぁ」
俺は彼女に近づいて、そっと頬に触れる。
「何?」
避けたときに少しかすったのか、頬が少し赤くなっていた。
「悪い。今度からは気をつける」
「わぁ、グリーンが素直に謝った」
「…」
おまえなぁと文句を言おうとしたが、言葉は飲み込んだ。

申し訳ないと思った。
痕は残らないとは思うが、女の顔に傷をつけたわけだし。

「大丈夫よ、痛くないし。気にしないで」
彼女は優しく微笑み、頬に触れていた手に優しく触れる。
「でも、ごめん」
「痕残ったら責任取ってくれるんでしょ?…まぁ残らなくても一緒にいる気だけど」
彼女はあくまで楽しそうに微笑んだままだ。
「なっ、おまえ!」
顔が熱くなる。
どうしてこう、こいつは平気でそう言うことが言えるんだ。
「大好きよ?」
「…っ」
だから……
「大好き…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「好きだ…」

 

2006年6月19日&21日 Fin


あとがき

兄さん受けだなぁ。こんなんでいいのかよ兄さん!!!もっと攻めろよ!!!!!とか思いますが、兄さんが攻められるわけもなく。というか、たとえ兄さんが攻めたとて、姉さんのが強いので、結局受けになります。あら可哀想(え)あははははは。
まぁなんかカラオケでふと兄さんの修行風景が頭に浮かんでしまったので書き起こした代物です。しかもカラオケで(笑)姉さん最強伝説みたいな感じですけどね。まぁ彼女は実はこういう人です、みたいなお話なので、タイトルが「彼女」となりました。しっかしなぁ、恐ろしい姉さんだ。紙一重で迫り来る炎を避けるなんてね。怖い怖い。どんな修羅場をくぐったらそんな風になれるのかって感じですが(笑)まぁしかし実際こんな修行をしてるかは謎ですけどね。ちょっと命中精度を上げる修行でした(笑)まぁこれはほんとはグリーンの息子がやる話しだったりして。それを無理矢理グリブルにしました(笑)
しかしまぁ、だいぶあたしの話しにも兄さんが姉さんを好きな感じが出てきましたねぇ。意外だ(え)頑張れ兄さん!!(ええ)