彼の祝い方 「はい、今日は何の日でしょう!」 彼は気の利いた物なんかあげられる人じゃない。 だからこれが、遠まわしな祝い方。 「…グリーン?」 2005年5月31日&6月1日 Fin
姉さんの誕生日にと書きました。絵は描く気じゃなかったけど、とりあえずできたわ。下書きだけどだけど。とりあえず、去年よりぜんぜん自覚がないです。姉さんの誕生日って。なんだろう、ここ最近忙しいからかな。なんだか自覚ないままに、とりあえず祝わねばと、慌てて立ち上がった感じです。イラストとしても、久しぶりに姉さんを書きました。なんだかグリブルの小説の更新ペースは、1年たってもたいして変わってないけど、でもなんだかどこかで、1年も経ってしまうと、心構えっていうか、考えが変わってきてしまうんでしょうかね。でもグリブルは愛です。なりメだけでいいとか、言っちゃいけない(死)あははは。
彼女は、なんの予告もなしにジムに押しかけ、彼の仕事の上にどかっと座り込んだ。
「………邪魔だ」
「ぶっぶー不正解!正解は、今日はブルーちゃんの誕生日でーす!!」
「………聞いてないし、答えたわけじゃない」
彼ははぁっと思いっきりため息をつく。
「っていうか忘れちゃったのぉ?1年前の今日、同じ時間にちゃんと教えてあげたのにぃ」
あのときあっつ〜いキスをくれたのは誰だったかしらぁ?っと彼女は彼をからかうような口調をとった。
「………そうだったか?」
彼の頬がほんのり赤みを帯びた、なら良かったのが、期待は大きくはずれ、彼はなんの反応も示すことなく、普通に言葉を返してしまう。
「もうっ!!グリーンっ!」
いい加減怒るわよ!っと彼女の表情が豹変した。
「…っていうか今思い出させられたな」
なんて真剣な表情で言われてしまう。
つまり、すっかり忘れていて、今言われて思い出した。
というか、思い出させられた、という話だ。
しかし、そんな事実を知って、黙っていられるほど、彼女は気が長い方ではない。
「ひっどーーーーい!!それが彼女に対する態度なのぉ?!」
っと、想像通りの反応が返ってくる。
そしてその怒りの矛先は机に向けられ、ばんっと机を叩くと、数枚の彼の仕事が、宙を待って床に落ちた。
「…それが仕事をしている人間に対する態度か?」
なんて、彼はため息をつきながら、落ちた仕事を拾っていく。
「…っ…っていうか彼女の誕生日に仕事っていうのもひどすぎるぅ」
仕事を邪魔したのは悪いと思っていたのか、一瞬言葉に詰まるが、負けじと言い返すあたり、彼女らしいと言えば彼女らしい。
「しょうがないだろ、忘れてたんだから」
彼は悪びれるわけでもなく、ただため息をついて呆れを表した。
しかしその言葉は、忘れていなければ仕事はしなかったようにも取れる。
「……っていうか忘れてたのがひどいっ。じゃあ誕生日プレゼントも何にも用意してないのねぇ」
その言葉に少し期待を馳せるが、昨日の期待のが大きいため、駄々をこねだした。
「俺に物を期待するな」
「じゃあ言葉を頂戴よ」
おめでとうくらい言ったっていいと思う。
だが、
「…俺に言葉を期待するな」
とあっさりあしらわれてしまう。
「何よそれ!!!」
言葉も否定されてしまうあたり、結局彼は彼女の誕生日を祝う気はないのだろうか。
さっきの期待は、泡のように消えていった…。
「…はぁ」
しかし、そんな彼女の心配はよそに、追い討ちをかけるように、ため息の数は増えていく。
「……何よ…何よ何よ…。誕生日くらい一緒にいたいって思ったっていいじゃないぃ」
不安に負けたのか、手で顔を覆って、彼女は泣き出した。
「…っ…なっ…おい」
そんな彼女に慌てたのか、立ち上がって取り繕うとするが、彼にはうまい言葉が見当たるはずもない…。
「…っ」
彼が悩んでる間も、彼女が泣き止むわけじゃなくて…。
「……はぁ。しょうがないなぁ」
彼はそう言うと、再度ため息をつき、覚悟を決めたように行動にでる。
彼女を仕事の上からどかし、仕事を片付けはじめた。
「…ぐ…グリーン?」
実際ウソ泣きだった彼女は、彼の行動に目を瞬かせる。
「…物も言葉もやれないが、代わりに時間をくれてやるよ」
諦めたのか、そうすると決めていたのか、はっきり彼女にそう言った。
「…じ…かん?」
時間をくれるというのはどういうことだろう。
よく問題を出されたとき、考える時間をやると言うが、それの一種だろうか。
などと彼女の頭では、関係ない「時間」がめぐっている。
「…おまえと一緒にいてやるってことだよ」
「きゃっ!?」
そんな彼女の考えを取り払うように、答えと共に腕を引っ張って、彼の腕の中に収められた。
気の利いた言葉なんか言える人じゃない。
ましてや、『誕生日おめでとう』の言葉ですら、仏頂面で、いい加減にしか言えない人で…。
だからこれが、忘れていたことへの、遠まわしな謝り方。
彼女が不思議そうな声を上げた。
「…っ」
彼は何も言わないまま、しっかりと彼女を、抱きしめている。
「………」
そんな彼の想いが、伝わったのか、伝わってないのかさだかではないが、彼女がそっと、彼の背中に手を回した…。
あとがき
まぁとりあえず、去年の誕生日話とつなげてみました。で、1年たっても、彼は彼のままでってね。いつまでたっても素直にはなれないけど、でも姉さんを好きな気持ちは1年で大きく変わったんだよっていう話です。で、彼の祝い方。最後の言葉を書きたいがために、第3者視点にしたのは内緒な話。第3者視点って、もしかしてグリブルでは初かしら。いちおいろいろな書き方はできますが、第3者視点は以外に苦手になりつつあります。姉さん視点だったんですけどね。最初は。最後に直すのが大変でした。
まぁとりあえず、姉さん誕生日おめでとう。兄さんとお幸せにね(おい)