グリブル小説「言葉の意味」
 

 

言葉の意味

 

「今日はあたしの誕生日!!」
「知ってるよ」
「えーうそ!ほんと!?超うれしーー」
いっそ「うれCー」とか表現した方が、嫌味具合が伝わるかしら。
「……1週間前からうるさくカウントダウンされりゃ、嫌でも忘れられないだろうが」
そりゃ、夢にまであたしが出るように、この1週間散々邪魔をしに来ましたから?
「それでも、会って開口一番は、『なんだ、また来たのか』って、眉間にしわ寄せて、いつもと変わらない声で言うし。あいかわらずプレゼントは用意してくれないし!嫌がらせぇ?」
にっこり笑顔で、怒りを込めた言葉を吐く。
しっかり、顔から声までマネするのも忘れないわよ?
「…俺には、仕事をしたいのに、その仕事の上にどかっと座っている目の前の誰かさんのが、よっぽど嫌がらせだと思うがな」
彼も負けじと文句を返す。

今あたしは、彼が仕事をしていた机の上にある、書類の上にどかっと座り込んでいる。
あたしがどかない限り、絶対に仕事ができない状況を作り上げたのだ。

「彼女の誕生日なのにも関わらず、仕事を入れてる目の前の誰かさんよりは、よっぽどましだと思うんですけどぉ?」
にっこり笑顔の『ふぶき』をお見舞いするわよ?

1週間前からカウントダウンしてるのに、休みにもせず、あげくプレゼントも用意しなきゃ、おめでとうの言葉一つもない相手に、これくらいの嫌がらせ、可愛いわよねぇ?

「…はぁ…俺にイベント事を期待するな」
「開き直りやがった!!」
ちゃぶ台返すぞ!
「…はぁ…うるさい女だ」
「誰がうるさくさせてっと思ってんのよっ」
彼の顎を掴んで顔を近づける。
「さぁ」
「…っ」

この素でしらばっくれた顔。
けちょんけちょんにしてやろうかしら…。

「…はぁ」
手を離して溜め息を付く。
もう溜め息出ちゃうくらい呆れちゃう。

「…どけ」
「いや」
「仕事ができん」
「するな」
「しないわけにいかないだろう」
「ほんのちょっとくらいいいじゃない!」
「うわっ!?」

そのままグリーンの首に腕を回してぎゅっと抱き付く。

「お、おい」
あわてふためく彼を見て、少し心が晴れた。

べつに、祝ってくれるなんて、期待してないし、プレゼントくれるなんて、微塵も思ってない。

思ってないけど、期待してないけど…。

 

 

でも…

「…好き…」
「はっ!?」
「グリーンが好きっ。好きな人にくらい、おめでとうって、言われたいよっ…」

あたしという存在が、この世に生まれたことを、あなたに受け容れて欲しいの。
あなたという、あたしが愛した人に、あたしという存在を、受け容れて欲しい…。

「…」
「べつに、プレゼントもいらないし、生まれてきたことに、感謝するような言葉なんかいらないから…。だから…ただ、誕生日を祝う言葉だけ…頂戴…」
そう言う意味を込めて言ってくれれば、なおいいのだけれど…。

 

 

 

 

「…ブルー…」
耳元で、あたしを呼ぶ彼の声が聞こえる。
彼の胸に顔を埋めていたあたしは、そっと顔を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺も…好きだ…」

 

 

 

 

 

 

「っ」

 

「誕生日、おめでとう…」

 

 

 

 

 

あたしという存在も、思いも、何もかもひっくるめて受け容れられた気がした…。
しかも、誕生日とは違う…言葉で。

誕生日に関係なく、あたしが受け容れられたような…気がした…。

自惚れ…だけど…。

「ずるい人…」
涙が出そうで、再度胸に顔を埋める。

「なんで…言えって言ったのおまえじゃないか…」
優しく、髪を梳く手が心地良い。

「そうだけどぉ……」
声が震えそうで、それ以上、言葉を飲み込んだ。

 

2007年6月1日 Fin


あとがき

忘れてましたが何か?あははははは。いやぁもううっかりだよ!!!速攻で考えたよぉ。ほんと1時間もかからずに書いたよぉ。ありえねぇえ。びっくりだ。実際数週間前に思い出したときも、風様の日記を見たときでした。そして今日、アーコ様の日記を見て気付いたど阿呆。「おぉおお!!今日姉さんの誕生日じゃん!!!」ぎゃああああ!!みたいな。そもそも過ぎてた気分でした。ほんと今日思い出して正解でした。あぁもうびっくり!!はぁはぁ。
まぁそんなわけで、即興に考えた話で申し訳ないですが、これで、姉さん誕生日おめでとうって方向で。え?ダメ?ごめんなさい(汗)
っていうかさ、今年で4回目なんですよ、姉さんの誕生日祝うの。4年ですよ4年!!ありえねーーーびっくりだ。ポケスペを好きになって、もう4年目になるんですねぇ。おそろしかぁああ。ひぃいい。まぁ4回も姉さんの誕生日ネタを書けば、つきるってもんです。人間様は3部作ってのがお好きなようですし、3作目で2人もラブラブしたことですから、初心に帰る意味で、別な感じのお話にしました。でもいささか兄さんをかっこよく見せようと撃沈した感じでお願いします(死)まぁでも私的即興でも萌えることは忘れないって方向で頑張ったつもりです。つもり。まぁだから、兄さんの「誕生日おめでとう」って言葉はかなりいい加減な棒読みチックなんですよ。「好きだ」って言葉に全ての意味を込めたから。誕生日おめでとうなんて、大した意味はなくて、その「好きだ」に全ての意味を込めてますからね。声で表現できないのが残念です。夏樹さんカムバック!まぁ棒読みチックに言われた分、姉さんはすぐ泣かずに少し対抗できたわけで、そんな感じをくみ取っていただければ幸いです。
姉さんハッピーバースデー!