ゴークリ小説「今日も、良い日になりますように」
 

 

今日も、良い日になりますように

 

「ゴールド?」
森の影で、ポケモンに囲まれて座り込み、膝に顔を埋めて、何も答えない彼…。
私はそんな彼の名前を、呼んだ…。

「弱い癖に粋がってんなよ!!」

たぶん、彼が今、最後に聞いた言葉だと思う…。

有頂天だったんだ…。
ここ最近、挑まれたバトルバトルで全勝していたから。

「俺様の実力よー!!」
なんて粋がって、自分の力に固執して。

その勢いでバトルをふっかけられて、弱いと勝手に決めつけて。
そして、ぼろ負けして。

それで、言われてしまったあの言葉。

勝てると思いこんでいたバトルほど、負けると悔しい物はない。
あの彼が、落ち込んでいることをここまでわかりやすくするくらい、いつになく、落ち込んでいた。
本当だったら、

「そうやって有頂天になってるからよ、馬鹿でしょ?」
とか、
「油断してるからこうなったんでしょ?」
とか言って、一悶着起こしてやりたい所だけど、今日のゴールドには、それができなかった…。

 

 

 

「…俺…トレーナーとして、大事なこと忘れてたんだ……」

そう言って、泣きそうな顔をされた時、胸が詰まる思いを、私が感じた…。
私がそう感じてしまったんだから、当の本人であるゴールドは、いったいどれだけのショックを受けたんだろうと、心が痛んだ。

「バトルはいつでも真剣勝負さ!どんな相手でも、ぜってー手は抜かない。バトルする相手に失礼だろ?」

いつも、レッドさんが言ってた言葉だ。

ゴールドに昔、聞いた話……。

たぶん、それを思い出したんだと思う…。
ゴールドは……。

 

 

「……ゴールド」
彼の近くに座り、彼の名を優しく呼ぶ。
「ざまぁーねーよなぁ…。自分で油断して、相手をなめてかかって、それでぼろぼろに負けてんだからよ……」
泣いてるのかどうかは分からないけれど、声が少し上擦ってるように聞こえた……。
「それで自分のポケモン傷付けて、バトルした相手を侮辱して…。……何やってんだろうな……俺……」

こんな弱音はらしくない…。
でも…時には必要なのかもしれない…。
そうやって、後ろを振り返ることも…。

 

 

私が……できることは…

 

 

 

 

 

 

 

「…ゴールド……いっぱい泣いたご褒美…」
そう言って、彼の頭を優しく撫でてみた。

私ができること、それは今、今の彼を、見届けてあげること。
そして……

 

「…クリス…」
彼が顔をあげる。
「気付いただけ、ゴールドはすごいよ…」
にっこりと、優しく笑みを見せた。
「……俺は別に泣いてねぇ」
そう言いながら鼻をすする。
「はいはい」
私は優しく、頭をなで続けた。

 

そして、私にできることは、彼の背中を、押してあげること。

たくさん泣いて、たくさん喜んで、たくさん成長していって欲しいと思う。
私がそれを、見届けてあげるから…。

苦しいなら、悲しいなら、後ろを振り返ることだって、大事だから…。
そんなときも、私が見守っていてあげる…。
そして…私が、先へ進めるように、背中を押して、あげるから…。

だから…あなたは前を見て、進んでいってほしい…。

あなたらしく…
ゴールドらしく……。

 

 

 

「ったく余計なことしやがってよ」
すたすたと道を歩く。
「何よ、バトルに負けてぴーぴー泣いてたくせに」
もちろん、言い返すことは忘れない。
「泣いてねーって言っただろ!!」
「あーらじゃあ目から流れてたあの涙はなんだったのかしらね〜?」
「あれは鼻水だ!!」
ふんっとそっぽを向く。
「そんなベタな言い訳、今時はやんないわよ?」
馬鹿でしょ。
「なんだと!?」

 

こうやって、変わらず喧嘩して、バトルを楽しんで、時に有頂天になったりして…。
そんなあなたを、ずっと、ずっと傍で見ていくから…。
だから、安心して、大きくなっていってね。

 

「置いてくぞ!!」
「あ!待ってよ!!」

今日も、良い日になりますように…。

 

 

2006年3月4日 Fin


あとがき

えーと、確かWeb拍手置いてた時期にリクエストを貰って、しかもネタはほぼ1年前という代物に、やっと日の目があたりましたのは、何を隠そう、星嶺様の「見たい」という一言でした(笑)ゴークリが見たい!って言われてあぁ、ネタだけはあったなぁ、「見たい!」みたいな感じで。とりあえずバイト中にメモったほぼ出来上がった物は手治してして小説にいたしました。懐かしかった。こんなの考えたっていうのは頭にあったんですけどね。まさか1年もかかって日の目を見るなんてねぇ。すいません。ゴークリをリクエストしてくださったweb拍手のお嬢さんかお兄さん。お気に召してくださいましたならどうぞお持ち帰りくださいませ。もうきっと増えることのないゴークリでございますゆえ(笑)最初で最後のお楽しみとしていただければ良いかと思います(笑)まぁネタが浮かべばいいんですけどね。大抵グリブルになっちゃうので。
しかしまぁ、まるでクリスがお母さんのようですよねぇと思います。見守っていくからとか、大きくなっていってねとか。母ちゃん!!って感じがします(笑)まぁでも星嶺様にはなんか支え合ってるみたいでいいねぇと言われたので、そう思っていただければきっといいんだと思います(笑)私的には二人が一緒にいる理由ってこんな感じなんじゃないかなぁって思ってます。ゴールドはかっこつけで、こんな弱味なんか特に好きな女になんか見せたくないけど、でもそれでも、一番弱くなれるのは彼女の前だけだったり。クリスもこんな奴の面倒なんか、私くらいしか見れる人いなそうじゃないですかって感じで、仕方なくとか言いながら内心でも傍にいて見守っていたいから一緒にいるみたいなね。お互いが持ちつ持たれつみたいなそんな関係であってくれるといいかもしれない。だからたまにお互いの意見がぶつかったりして喧嘩ばっかりしてるけど、でも喧嘩できるほどいろんなことを知りえていて、お互いが気持ちをぶつけ合えるってことだから、それだけいいんじゃないかなぁって方向で。
ちなみにこの話はちびギャラリーのある言葉から生み出されています。知ってる人は検索あれ(笑)