「グリーーン!」
俺の読書の時間は、外から聞こえてきた甲高い声に失われた。

窓の外

「…おまえ、近所迷惑だ!」
窓を開けて、空気の入れ替えをしていたせいもあり、外から叫んだ彼女の声は、部屋に響き渡った。
ここまで聞こえたということは、外にはかなりの勢いで丸聞こえだろう。
「こんな、丘の上の一軒屋に来るのなんて、あたしかレッドか、研究関連の人だけじゃない!」
それだけ来れば十分だろうと突っ込んだら負けか?
「……何をしに来た」
俺は諦めてため息をついた。
「何って、あなたに会いに来る以外に何があるのよ」
馬鹿?とでも言いたさげな顔で、さもあたりまえというように言い切られた。
まぁ確かに、俺の名前を呼んだのだ。
そういうことだとは思ったが、おじいちゃんの所に来たついで、とかではないんだな…。

何か約束をしてただろうか。
手帳の今日の日付は真っ白だったと思ったが…。

 


あぁ、真っ白だからか…。

「はぁ…。何を、しに来た…」
俺は何、を強調して再度問う。

俺に会いに来たのは分かったが、俺に会いに来て、おまえは何をしたいんだ。

「グリーンと一緒に居に」
「なっ!?」
「こんな往来で愛の告白なんかしてんじゃねーよ!」
「いたっ」
俺が彼女の言葉に真っ赤になったのと、そこにレッドが現われ、彼女の頭を小突いたのが同時だった。
「ったく。すぐそこまで丸聞こえだぞっ」
さっき、ブルーが挙げたここに来るであろうメンバーのうちの一人、レッドが訪れたのだ。
それ以外の奴でなかったことを、俺は心底良かったと思った。
「そんな大声で喋ってたつもりはなかったんだけどな」
彼女は小突かれたところを撫でながら、レッドを見上げる。
「こんな滅多に人の来ないとこ、ちょっと喋ってただけでも丸聞こえだっつーの」
はぁ、と彼はため息をつく。

確かに、ここにあるのはおじいちゃんの研究施設と、ポケモンを飼育するための牧場並みの平原があるだけだ。
それ以上存在しないここは、ポケモンが興奮して騒ぎ出したり、走り回ったりしない限りは、非常にのどかで静かな場所だった。
そんな所でこんな風に会話をすれば、そりゃあ、丸聞こえにもなるだろう。
自分で近所迷惑だと注意したはずなのに、自分自身が近所迷惑になってどうするんだ…と俺は自分で後悔する…。
しかもこんな会話…。

「はぁ」
心底今来たのがレッドで良かったと、その場にうな垂れた。

「つーかおまえはもう少し恥じらいというものを覚えろ」
俺が悶々と考え事をしてうな垂れてる中、レッドはブルーに説教をしだす。
「えぇ!一緒に居たいって思ってるどこが悪いのよ!」
彼女は負けずと言い返した。

彼女は説教をおとなしく聞くタイプではない。
俺もそれで何度頭を抱え、結局こっちが折れたことか…。

「思ってるだけにしろ!口にするな!こんなとこで」
ごもっともだ。
「口にしなきゃ伝わらないじゃない!」
「場所を考えろって言ってんだ!!」

そうだそうだ。
いくら人があまりいないとことは言え、あんな言葉を誰がいるかも分からないこんなとこで、しかもでかい声で言うなっ。

 


まぁ、言われて悪い気はしなかったが…。

「だって、グリーンが何をしに来たって聞くから!」


ちょっと待て…。
俺のせいかよ!

そう突っ込もうとして、俺はうな垂れていた体を起こし、再度窓から彼らを見る。
すると…

「へ理屈言うのはこの口かぁ!」
「いひゃいひゃい!何すんのよ!」
レッドが彼女の頬を摘んで引っ張る。
そして彼女はその手を払いのけ、軽く彼の胸にパンチをする。
「ったく。どうせおまえがそう言わせるような行動をしたくせに」
彼女が再度反撃をしようとしたのを、彼女の頭を撫でて諌める。
「うっさいなぁ。好きな人に会いに来て何が悪いのよぉ」
むっとしながら、彼女は頬を膨らませる。
「会いに来たこと自体が悪いんじゃない!そもそもそういう会話は部屋に入ってからしろってことだ!」
彼は、再度呆れてため息をつきながらでこピンをする。
「いった!もう!!」
「レッド、そこを動くな。しばく」
俺はぷつんっと何かが切れる音が、頭の隅で鳴ったのを聞かなかったことにして、そのまま部屋を飛び出した。
窓から飛び降りなかった俺には、まだ理性があったと思う。
「はぁ!?なんで!むしろ俺はおまえをかばったのに!!ってぎゃあ!!!」

この後結局、3人ともおじいちゃんにうるさいと怒られた。

それもこれも全部レッドのせいだ!

2010年1月11日&10月18日 Fin


あとがき
兄さんが激しくむっつりな話でした(笑)自分で読み返して「馬鹿だな兄さん!」って思ったのは言うまでもない(笑)なんでこんなむっつりなんだろう彼は。一人でにやにやして、一人でどきどきして、一人でもんもんとしてますよきっと(笑)うわぁー変態!(あれ)あはははは。まぁ兄さん馬鹿だなぁって思うそんな作品になりました。レッドが異常にかわいそうなお話ですが、兄さん馬鹿だなぁと思っていただければ幸いです(笑)←え。
このお話しは、あたしが駅へ向かう途中、カップルがアパートのさらに玄関の門の前から女の人が、2Fの窓から男の人が会話をしていたのが始まりでございます。べつになんとはない会話しかしておりませんでしたが(内容は忘れた)あたしの脳内ではこう変換されていたのでございます(変態)まぁでもなにやら見詰め合うというか、2人の間にはなにやらラララ〜♪みたいな空気が流れていたように見えるのは、きっとあたしだけだと思います(え)まぁただ業務連絡をしていただけだったような気がします(笑)それを見ただけでここまで話を考えるあたしは阿呆ですね。そこを通ったあたしがレッド役だったということで、レッドも絡ませてみました(笑)会話の邪魔はしたつもりはありませんでしたけどね(笑)まぁあたしが話を思いつくタイミングなんて、こんなもんです(笑)