虫刺されにご用心 「もうやぁーーーー!!」 そう、何が嫌なのかって、ここが夏の山という、絶好の虫が出る場所だからである。 蚊。 「やんっ!また!!」 「おまえの血はさぞかしうまいんだろうなぁ」 だって、そうでも思ってなきゃ、こんなとこであと1泊2日もやってけないじゃない。 実は、レッドが旅行に行こうと言い出したのがきっかけで、こんな山奥にいる。 「あ!!また!!」 「おい、何やってんだよ」 「レッド?」 あれ? ん? そういえばこの体制って… 「違う!!!変な誤解をするな!!!」 まぁいいか。 2006年7月10日 Fin
いやよくない!!落ちてない!!!
部屋に叫び声が木霊する。
「そう言うな。しょうがないだろ」
はぁと彼はため息をついた。
「山嫌い!!虫ばっかりでぇ、うわーん!!また刺された!!返せあたしの血!!!!」
別に虫は嫌いじゃない。好きでもないけど。
虫ポケモンには触れるし。あえてパーティーに入れようとは思わないけど。
とにかく、普通の虫はどうでもいい。
あの、黒くててかってるあれですら、嫌だけどとりたてて騒ぎ立てるほど怖くはない。
でも、自分に害のある虫なんか大嫌いだ。
身近なやつで言うなら、そうこいつ。
梅雨から秋にかけて、うざいってくらいいっぱい出てくるこいつ。
手で殺すにはさすがに抵抗がある。
山の中ではどんなに防虫しようが、すき間からまんまと入り込まれてしまう。
夏の露出の多い肌は、あいつらには絶好の食事場で。
防ぎようにも防げない。
見事にあたしは、あいつらの餌食になっていた。
彼は彼で暑さも感じないのか涼しげな顔をしている。
蚊も彼には近寄ろうとしやしない。
「蚊にもあたしの美貌がわかるのね」
ふふんっとそっぽを向く。
「はいはい」
彼はあきれたように再度ため息をついた。
湖の見える綺麗なコテージって聞いてたのに、ばりばりの山の中じゃない。
あたしはイエローじゃないんだから、森なんかみたってうれしくないわよ!!!
手ではたく。
「ほんと好かれてるな」
「グリーン以外に好かれてもうれしくない!!」
「おまえなぁ」
真っ赤な顔のグリーンが、いぶかしげな表情であたしを見た。
「っていうかかゆいー」
刺された部分を掻く。
「掻くなって」
そう言いながら彼はあたしの手を掴む。
「やぁーだぁ、痒いんだもーん!」
手を振り払って再度掻く。
「やめろって。掻いたって、かゆみは治まんねーから!」
「何もしないよりまし!」
「ましじゃない!やめろって」
再度彼があたしの腕を掴む。
「やぁーだぁ!!」
逆の手で掻こうとするが、
「だからやめろって!赤くなってるじゃないか」
両手を抑えられては、何もできない。
「だってぇ」
かゆみが治まらないあたしは、涙目で彼を見上げた。
「…昼間っからラブラブですこと。でも時間帯とかわきまえような?」
にっこり笑顔のレッドさん。
あたしたち何してたっけ?
かゆいから掻こうとする手を、グリーンが抑えて、反対の手で掻こうとしたのも抑えられて、つまり、両手を押さえつけわれてるわけで…。
グリーンがぱっとあたしの手を離す。
「いやいや、昼間っからお熱いことで!」
レッドはそのまま部屋を出ていってしまう。
「だから違うと言ってるだろ!!」
真っ赤な顔になったグリーンが、取り繕うためにレッドを追いかける。
「…」
取り残されたあたしは現状整理。
あとがき
まぁ何がいいかは、こういう旅行もそれなりにいい思い出つくりになったかなっていうね、なんていうか、兄さんが自分に触れてくれたりとか、構ってくれるなら、蚊に刺されるのも悪くないかなぁ、的な現金さを出したかっただけなんですよ。結局姉さんは兄さんが大好きなのでした!!って話なの!!!!!
あははは。なんかこう、姉さんが妙な説明口調というか、言い訳口調というか、いかにこう現状を良い物として考えようかっていう表現をしたかったので、おもしろ可笑しく見ていただければ何よりいいかなぁって思います。何をさせたかったのかと言いますと、掻いて真っ赤になってる姉さんの肌を兄さんに心配して欲しかったです。おまえのだけじゃないんだから、みたいな(死ね)あはははは。まぁ夏に書いたのに夏に更新しそこねた作品でした(笑)