グリブル小説「涙」
 

 

 

「…うっ…」
アタシの足を枕にしていた彼が、そっと目を覚ます。
「やっとお目覚め?」
アタシはほっと一息ついて、そんなからかい口調で、今し方目を覚ました彼に、言葉をかけた。
「……ブルー!?…っく」
彼は目を覚ました途端、アタシの顔のドアップに驚いたのか、慌てて起きあがる。
その際、アタシが顔をどかす作業も忘れない。
しかし、身体の痛みに負けたのか、彼はそのまま倒れそうになった。
「あー、いきなり起きあがるから」
アタシは彼を支えるように、元の位置に戻す。
「…女の膝の上でなんか寝てられるか」
彼は悔しそうな顔をしながらも、結局痛みで身体を動かすことができないのか、そのままの体勢で言った。
「けが人が何言ってるのよ。少しは甘えておきなさい。まったく。そんなこと言えるようなら、大丈夫ね」
まったくこいつは。そんなことを思いながら、口元に笑みを浮かべた。
「…怪我…。俺は…」
痛みで意識がはっきりしないのか、苦痛に顔を歪めながらアタシを見る。

今の彼は、例えるならぼろぼろだ。
そこら中がどろや血で汚れていた。

「それはこっちが聞きたいわ」
アタシは呆れたように、彼に答えた。

 

 

事の発端は、数時間前にさかのぼる。
たまたまオーキド博士に用事があったアタシは、マサラタウンまでやってきていた。
そしたら、

「おやブルー。久しぶりじゃな」
さっきまであたふたとしていたオーキド博士は、アタシを見るなり作業をしていた手を止めた。
「お久しぶりです、オーキド博士。どうかしたんですか?」
慌て具合が尋常ではない。
「そうだブルー、グリーンを知らないか?」
少し焦った様子で、博士はアタシに訪ねた。
「グリーンですか?ここ最近連絡もしてませんけど」
どこかに修行に行ったということは、前にナナミさんからの話で聞いていたけれど、それ以来はとくに用事もなかったから、連絡もしなかった。
「…そうか」
それを聞くと、博士はおもむろにため息をつく。
「…グリーンに、何かあったんですか?」
オーキド博士の慌て方、グリーンの行方。この二つから結びつくことは、ただ一つだ。
「いやなぁ、もう修行に出ると言ったきり連絡がとだえてしまったんじゃ」
「そんなこと、しょっちゅうじゃないんですか?」
修行なんてそういうものじゃないの?逐一連絡でもしあっていたのだろうか。
「いや、そうなんじゃが。昨日用事があってな、ピジョットに伝言を頼んだんじゃが、どうやら居場所が分からなかったようでな。戻ってきてしまったんじゃよ」
オーキド博士は、アタシから視線を反らした。おそらく、最悪なパターンも頭に入れているのだろう。
「ピジョットが居場所を掴めなかった?」
手持ちのポケモンが主人の場所を分からないなど、滅多にあることじゃない。ましてや、人よりも感覚の鋭いポケモンが。
「修行の場所を変えたのかと、わしも考えたんじゃがな。レッドやイエローに聞いた他の修行場所でも、見つけることはできんかった」
博士の喋る声が、だんだんと沈んでいく。自分で言いながら、再認識しているのだろう。

いつもの修行場所から姿を消したグリーン。
ポケモンで発見することができない…。

まさか…。

 

 

!?

「博士!レッドは?」
図鑑がそれぞれの手元に3つ揃えば反応があるはず。
「そうか、その手があった!」
博士もアタシの意図に気づいたのか、慌ててレッドの家へと向かった。

その後は簡単だった。
アタシとレッドとグリーンのピジョットで、そこら辺の修行ができそうな場所を転々と探して。
図鑑が本当に役に立った、と見つけたときにレッドと笑い合った。

 

 

 

「レッドは?」
今ここにいない彼を、グリーンは訪ねる。
「レッドなら、へたに動かして悪化させると困るから、医者を呼びに、近くの町まで降りたわ。マサラにはすでに連絡済みよ。オーキド博士が安心してたわ」
アタシはそう、彼を見つけてからの事柄を述べていく。
「…そうか…。悪いな…」
彼は緊張がとけたのか、いつも言わないような言葉を口にした。
「珍しい。あんたが謝るなんて」
アタシは、しんみりした空気を吹き飛ばすように、冗談めかして言葉を述べる。
「…ふっ」
彼は喋るのも苦しいのか、ただ口元に笑みを浮かべただけの表情を、アタシに返した。
「!…あーそうだ」
アタシは思いだしたように、6つのモンスターボールを、彼に渡す。
「…」
目をつむっていた彼は、その行動に目を開けた。
「すっごく、心配してたわよ」
開閉スイッチが壊れてしまったために、助けを呼びにいくこともできなかった、グリーンのポケモン達。みんな心配そうに顔をゆがめ、グリーンを見つめていた。
「なんだおまえたち、情けない面だな」
彼は、ポケモン達を安心させるためか、微笑しながら、そんな言葉をかけた。

 

 

 

「?」
ポケモン達に向けていた視線が、アタシを捕らえる。
「…なんで、おまえが泣くんだ」
グリーンが、アタシにそう言った。

『すっごく、心配してたわよ』
心配してたのは、ポケモン達だけじゃないんだから。

「いいじゃない…アタシが泣いたって」
いいじゃない…アタシが心配したって。
アタシは涙を隠すように、目元を手で押さえる。
「駄目だ」
「なんでよ…っ?」
その言葉に手を離すと、彼の指が、アタシの涙を拭った。
手を挙げるだけでも、体中に激痛が走るはずなのに…。

「俺が困る」

 

 

 

 

「…馬鹿」
その言葉に微笑むと、涙がまたこぼれた。

 

2004年2月29日 Fin


あとがき

うがぁ!?ありえない!!!こんなグリーンはありえません!?絶対ありえな〜い。あああああ。っていうかこんなブルー姉さんもありえない!!!っていうか、本当は助けにきて、あとから良かったって泣くようにしようかと思ったんですが、っていうかそのほうがブルー姉さんらしいんですが、それじゃあグリブルにならない!?ただのグリーンさん危険でした話にしかなりません!?意味がなーい。なので無理矢理ね。図鑑がめっさ役に立ちました。はい。レッドを巻き込んだのは後付。最初はブルーだけだったんですけどね。そうすると居場所わかんねぇ!?みたいなね。で、なんでピジョットが分からなかったかは、地の奥底にうもれてたから。落盤事故か、地震か何かの地盤沈下かなんかに巻き込まれ、大変だったって方向で。イメージではあばらにひび入ってますね(死)痛みははんぱないんでしょうけどね。そういう周りを気遣える余裕が、彼にはあるといいな〜なんて無理矢理(死)ああああ。ごめんなさい!!!素人が書くもんじゃありません!!!うわぁ。すいませんすいません。本当はこういう説明も小説内でしようかと思ったんですが、雰囲気がぶち壊れるわ、レッド出てくんな〜みたいなんで、やめました。本当だったらこの後レッドが戻ってきて、病院運んで、事情を医者が説明して、しばらくしてだいぶよくってきて、話をするみたいなね。話も考えたけど、ここで区切るに限る!!!!って方向で。勝手にEND。あははは。すいません。レッドは最初から出す気じゃなかったので余計に。いや、レッド好きですよ?嫌いだからのけ者にしてるわけじゃないのよ!?ただ今回の話に出番がなかっただけで。っていうか私のグリブル話にレッドは一切登場しねぇ。あああ。名前だけ出たのが奇跡(死)レイエは話がないからな(汗)なんとも言えない。ってか1時間近くかかってしまったなぁ。ああ。
ここまで読んでくださってありがとうございました。これをアンソロ用にして前回の更新しちゃおうかな。あああ。