ぬくもり ぬくもりが、安心できるものだったなんて、初めて知ったんだ…。 「おかえりなさい!」 ジムのドアを開けたら、いきなり何かに抱き付かれる。 「はぁ…ブルー…」 ここはトキワシティにある、トキワジムだ。 「…グリーンに会いたくなったから、会いに来たのっ」 なんでそう、こっ恥ずかしい台詞をぽんぽん口にできるんだか…。 「会いたいから会いたいって言って何が悪いの?っていうかいないから待ちくたびれちゃったぁ。どこに行ってたの?ジム放っておいて」 ぷぅっと頬を膨らませる彼女を見て、少し笑いそうになる。 「………あぁ…悪い、少しきずぐすりの買い物をな」 昔の自分から考えれば、大人になったんだなぁ、俺…。 「珍しいね、買い忘れ?」 いつもは、決まった日にタマムシシティで、1ヶ月分の備品を買い込んできている。 「…ここ最近チャレンジャーが立て込んでな」 春という、季節の始まりの性なのか、たくさんのチャレンジャーに見舞われた数週間だった。 そう言えば、こいつにもここ何週間か会ってないような気がする。 また文句を言われるのだろうか…。 「…ふーん、忙しかったんだ」 ぎゅうっと抱き付いてくる彼女のぬくもりに、飛びかけた思考が還ってくる。 「…あぁ、ものすごく…」 そう…そうなんだ…。 懐かしい彼女のぬくもりに、数週間分の疲れが一気に体に感じられるような気がした。 「わっ…わ…ぐ、グリーン?」 あぁ、体が重く感じる。 「…疲れた…」 ごめん、文句は後で聞くから…。 「……お疲れさま…」 「…ブルー…」 2007年5月17日 Fin
本当はこんな話しじゃないんですよ?(笑)当初4月8日に書かれた話はこれではないのですが、消してしまった以上、思い出せなくてですね、今日ふと思い出したのはあくまで断片的なもので、その断片的な話を書いただけで、対しておもしろみもラブ度もない話しだったので、再度肉付けしていくかのように話をまったく違うものに変えてしまいました。思い出せたのは、「会いたいから会いに来たの!」という姉さんの言い分と、「なんでそういうこっ恥ずかしい台詞を簡単に言えるんだ」という兄さんの言い分だけでした。これだけではストーリーにならないので、つーかそれを使った前の話が思い出せなかったので、今回の小説のテーマは、姉さんの存在に、兄さん癒されるの巻!という感じでお送りしました。本当は姉さん、文句をいっぱい言ってやろうと思ったのに、思った以上にお疲れのグリーン。そんなグリーンが、自分に甘えてくれるのが嬉しくて、思わず許しちゃったそんな一生やってればいいよカップルでお送りしました!(笑)この後姉さんの膝枕で目を覚ます兄さんは、すっげー真っ赤な顔して照れてくれるといいよ。そして散々姉さんにからかわれて、押し倒さ(自主規制)←に、なってない
「わっ!?」
誰か居る気配は感じていたけれど、いきなり抱き付かれるなんて、誰が想像するだろうか…。
俺もまだまだ、修行がたりないということなのだろうか…。
俺に抱き付き、ごろごろと猫のように懐いてくるこいつ。
「なんでここにいるんだ…」
所在なさげに宙を泳いだ手を、彼女の頭に乗せた。
お前の家はマサラタウンだろ…。
俺に会えたことが嬉しいのか、嬉しそうに俺を見上げてくる。
「…っ…なんでおまえはそういう言葉を平気で言えるんだ…」
はぁと俺は溜め息をつく。
勝手におまえが来たんだろう、とか、なんでも人任せにしたりするようなおまえに、そういうことを言われる筋合いはないんだがなぁ、とか、いろいろ言おうとして、話がこじれたらめんどくさいから、言葉をそのまま飲み込んだ…。
そう言って、俺は買ってきた買い物袋を彼女に見せた。
彼女は不思議そうに首を傾げた。
確かに、備品を切らすのは珍しいことだった。
ものすごく強いトレーナーもいれば、もう一度1から出直してこいと思うトレーナーと様々で、いつにない忙しさを、感じる毎日だった。
前に会ったのはいつだっただろうか…。
忙しかったのが、何週間あったかさえ思い出せない。
日付感覚がおかしくなるほど、めまぐるしい毎日だった気がする…。
つーか、メールか電話くらいすれば良かったのか…。
いや、そんなの俺に期待しないでくれ…。
「…っ」
あぁ、この感覚も久しぶりだな…。
すごく、すごく、忙しかったんだよ…。
なんだか力が抜けるように、彼女にもたれかかる。
彼女に負担にならない程度の力で寄りかかると、彼女は優しく、俺を支えてくれた。
どっと疲れが襲ってきたような、そんな気分なんだ…。
もう少し…このままで…。
「…っ」
返ってきた言葉、罵声でも文句でもない。
優しい、労いの言葉と、優しく抱き締め、頭を撫でる彼女の優しさとぬくもり。
体の力が抜けて、そっと、目を瞑った…。
あとがき