ポテト味
「ねぇ、グリーンの好きな食べ物ってなぁに?」
ジムの仕事をしている彼に、ふと話しかけた。
「…は?なんだいきなり」
彼はあたしを振り返る。
「え?いや…グリーンって何か好きな食べ物あるのかなぁって疑問に思っただけぇ」
「おまえはいつも唐突だな」
彼は呆れたようにため息を吐いた。
「ねぇ、何が好きなの?」
今まで、特にこだわりのものを食べているようには見えない。
ぶっちゃけ、食べ物を食べてる姿を見る方が稀なくらい、彼は“食べる”という行為自体に、非常に無頓着だ。
放っておけば、3日くらい食べないこともあるのではないだろうか、と思うほどに…。
そんな奴に、好きな食べ物なんかあるのだろうか…。
嫌いな食べ物が、甘いものっていうのは知ってるけれど…。
「…食べ物…」
彼はまじめに答えてくれるのか、手をあごの下に置き、うーんと唸る。
「…」
あたしは彼の答えを待った。
彼の口から、料理の名前が出ることを期待して…。
そう、料理の名前が出ることを、期待して…。
しかし彼は…
「…バランス栄養食ポテト味」
「不健康!!!」
思わずあたしはそう突っ込んだ。
「何を言うか!?バランス栄養食。またの名を固形栄養物と言われるくらいなんだぞ!これひとつで、その日の一食分の栄養とカロリーが取れる優れものなんだ!!不健康なわけがあるか!?」
彼が珍しくそう言い返してきた。
よっぽどこれが好きなんだろうか…。
「それにしたって、そんな栄養食に頼った食生活なんてどう考えても不健康!ちゃんと手料理とかで素材そのものから栄養を摂るのが一番に決まってるじゃない!!」
「……っ…確かにそうだが…」
もっともらしいことを言ったせいか、彼はすんなりあたしの意見を聞き入れた。
確かに時間がないときに食べないよりは、簡単にでも栄養が摂れるという意味では便利だが、食事をする時間があるのなら、絶対そんなものに頼るのはよくない。
「っていうかそんなのが好きって…」
それってどうなの?
「いや、好きというか、こないだ新商品で出ていたそれが、案外うまかったからそれを思い出しただけだ…」
彼は、ばつが悪そうな顔で言う。
自分があまり、率先して栄養を摂ろうとしていないのは自覚しているようだ。
「…もう、そんなのばっかり食べてると、いざってときに体力なくなるんじゃない?…まったく。しっかり食べて、あまり無理はしないでね」
そう言って、あたしは作ってきたお弁当を、彼に渡した。
「……なんだ、そういうことか」
彼は手に置かれたお弁当とあたしを交互に見やる。
「うるさいなっ!今後の参考にしようと思って、好きな食べ物を聞いただけだし、栄養の話は不可抗力であって、決して「だからあたしが作ったのを食べなさい」みたいに言ったわけじゃっ」
「ありがとう…」
「……味の保証はしないわよ」
あぁ、可愛くない。
だってそこで、素直にお礼を言われるなんて思わなかったんだもの…。
彼はあたしが作ったものを、残さずきれいに食べてくれた。
結論。
好きなものもないが、甘いもの以外、嫌いなものもないらしい…。
2008年6月5日 Fin
あとがき
このままじゃ、衰える!!と思って、急遽考えたネタがおもしろかったので書きました。なんでこんな話になったかは不明。グリーンに好きな食べ物を聞きたくなって聞いたら、頭の中で昔食べたカロリーメ○トポテト味が過ぎり、グリーンってこういう微妙なすきそうだなぁと思って使いました。一時期からなくなっていたのですが、どうやら復活したようですね。あたしが高校生の頃、マラソン大会の参加賞としてもらったのですが、あのとき食べた味がすごく好きで好きで、いまだに忘れられません(笑)滅多にカロリーメ○トなんて食べないので(っていうかあれ以来食べてない)無性に食べたいです。復活したなんて、ますます食べたい。ああああ。ポテト味。みなさんもおひとついかがしら。
まぁそんなことを思い出したら、姉さんが弁当を出してきたので、こんな話に。ボクの小説を書くときはいつもこんなですよ(笑)よし、まだ衰えてない!と思いたい。ここ最近サイト更新できなくてサボりがちだったので、思いつくままに書き綴っていこうと思います。よろ!
写真はあの後買って食べたのに記念に撮ったので背景にしてみました。ネタバレ背景。でもいい具合に本名は反射で消えてくれました(笑)わざとじゃないです。
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