グリブル小説「リユウ」
 

 

リユウがなきゃ、ダメですか?

 

リユウ

 

静かな時間が流れる。
少し冷たい床に座って雑誌を読んでいれば、時計の秒針の音と、アタシが雑誌をめくる音しか聞こえない。
そんな、静かな空間。

そんな空間の中、読んでいた雑誌に影ができる。
「?」
どうしたのかと上を向けば、変わらない表情のグリーンが、そこに立っていた。

「…どうしたの?」
そう質問するが、
「!?」
その問いの答えは帰ってこず、変わりに彼のぬくもりに包まれた…。
「ちょっ!?なっ、何!?」
いきなり抱きしめられたことに同様を隠せない。だってグリーンがいきなりアタシを抱きしめるなんて…。
「…」
彼は何も言わず、ただアタシを抱きしめている。彼の表情は伺えない。ただ、アタシを強いわけではないのに、決して弱くもなく、しっかりと抱きしめているだけ…。
「どしたの?」
今まで緊張で強張っていた体の力を抜き、そっと彼の背中に手を回す。
「…嫌ならやめる」
「駄目!辞めないでよ、もったいない」
「は?」
その言葉に疑問を抱いたのか、少し力を緩め、アタシの表情を彼の目に映した。
「あなたからアタシを抱きしめてくれるなんて、早々あるものじゃないもの」
アタシはそう言うと、彼を抱きしめ返す。

そう、いつも頼んだって抱きしめてもくれないあなたが、いきなり抱きしめてくれるなんて珍しい。今堪能しとかないで、いつ堪能するのよ。

「そうだったか?」
今度は彼が少し強張る。
「そうよ…」
あなたがアタシを抱きしめるなんて…
「…どうかしたの?」
あなたに何があったのか…。
「べつに…」
「うそつき」
アタシは間髪入れずに言葉を挟む。あなたがアタシを抱きしめるなんて、よっぽどのことがあったんじゃないの?
「…なぜそう思う」
だって…
「あなたは理由もなしに、こんなことしないじゃない…」
あなただからこそ、理由もなしにこんなことをするとは思えないの…。むしろ、理由があったとしても、してくれなそうだけど…。
「…そうか?」
記憶をたどっていたのか、少しの間が空いた。
「アタシは、あなたに理由もなく会いたいって思うことあるけど、あなたはそうではないでしょう?」

時々無性に、彼に会いたくなる。
…彼からは、会いに来てはくれないから。
時々無性に、彼の声を聞きたくなる。
…彼からは、連絡なんてくれないから。

そしてあなたは毎回聞くの。

「何か用か?」

って。

そして私が毎回、

「べつに用はないけどさ」

って言えば、「なんだそれは?」と不思議そうに返される。

あなたに会うのに理由が必要ですか?
あなたの声を聞くのに理由が必要ですか?

リユウがなきゃ、ダメですか?

「…」
彼は言葉を失う。

何よりも、あなたは理由もなしにこんなことをする人ではない…。
あなたが一番、リユウを求める人だから…。

「何があったの?」
そう優しく問いかけても、
「…」
彼は口を開こうとはせず…。
「…本当に、なんでもないんだ…」
少しの間のあと、結局なんでもないの一点張りで…。

変わったのは、さっきよりもアタシを抱きしめていた力が強くなっただけ…。

「…そう」
アタシは彼にそのまま体を預ける…。

あなたは、決して話してはくれないのね…。

でも、こうしてアタシを頼ってくれたのだと、思ってもいいですか?

「だが、おまえの意見を借りるなら、こうしたかったから、こうしたって所だろうな…」
そう言って、アタシをぎゅっと抱きしめた。

 

リユウがなきゃ、ダメですか?

理由なんていらない。
私はそう思う。

 

2004年4月14日&15日 Fin


あとがき

うむ。わからん(死)あはははは。何がしたかったかって言うと、ただ私はブルー姉さんに頼らせたかっただけです。こういう弱いグリーンもまたいいんじゃないかなって思うのよ。この話は3話にわたり続いていきます。まだまだ序の口なのさ、って方向で、この微妙な終わり方をお許しください。ようはつまりだね、グリーンは本当まじ理由もなしにこんなことはしない、と私が勝手に判断しております。つまり、ちゃんと3話分に続いていくだけの理由があるのです!はい。最後のわざわざ理由をつけてブルー姉さんに抱きついているあたり、そこら辺を汲み取っていただけると嬉しいです。ちなみにブルー姉さんはあえて気づいて流しています。だって、ブルー姉さんが一番、言いたくないことがあることを、一番分かってる人ですから。うむ。まぁとにもかくにも続くんです!!って話です。続きはいつだろうね〜。あははは。がんばります。