「ねぇグリーン、お花見に行きましょう?」
トキワジムの窓から見えた桜を見て、そんな言葉を口にした。
桜が咲いたら 前編
「はぁ?」
なんだいきなりと言わんばかりの顔が、アタシを捉える。
ここはトキワジム。グリーンがジムリーダを勤めるジムだ。
アタシはそこにたまたま遊びに来ていただけなのだが、仕事があると相手にしてもらえなかったため、ぼけっとしながら机にうなだれていた。
そんな時、発せられた一言。
「ね、そうしましょう。明日ジムも休みだし」
アタシはにっこりと笑顔を浮かべて、そう彼に提案する。
「な!?なんでおまえがジムの休みを知って!?」
さっきまでの情けない面から一変。
「あら、あなたの予定なら逐一更新中よ?」
おほほほほと笑いながらポケギアを出した。
「…」
嫌そうな顔の彼を横目に、登録されている番号を呼び出す。
「あ、もしもしレッド?」
まず連絡したのはレッド。
『あ?ブルーか?なんだ、どうした』
いつもと変わらないレッドの声が、ポケギアから聞こえてくる。
「ねぇ、明日暇よね?明日花見に行こうって話になったんだけどさー」
ほぼ明日が暇だということを前提に話を進めていく。
「俺はまだ行くとは言ってないぞ」
『へぇ、花見ね。いいんじゃねーの?暇だし』
レッドはおもしろそうだ、と言わんばかりに話に乗ってきた。
「本当!?やった!!」
「おい、聞いてるのか!?」
「ねぇ、そこにイエローもいるんでしょう?いたら代わってくれない?」
グリーンの言葉は徹底的に無視して、さっさと会話を進めていく。
「おい!」
もちろん彼のそんな言葉も無視。
『イエロー?なんでいるって分かったんだよ』
レッドは嫌そうにそう答える。
「さぁ?」
なんて言ってみるけど、さっきここへ来る途中、マサラへ向かうイエローの姿を目撃しただけだったりもするんだけどね。
『…代わるぞ?』
ぶつぶつ文句を言いながらも、レッドはイエローへと代わる。
「もしもしイエロー?」
グリーンも諦めたのか、何も言わなくなった。
『あ、はい』
びっくりしたような声が、ポケギアから聞こえてくる。
「明日花見に行こうって話になったんだけど、イエローはお弁当係ってことでよろしくね」
イエローは明日の昼食になるお弁当係。
『ええ!?僕が作るんですか!?』
今にもポケギアを取り落としそうになるくらいの驚きように、思わず笑みを浮かべてしまう。
「そう」
でもそんな彼女の驚きは無視。
『そ、そんな!?一人でなんて無理ですよ〜』
彼女は嘆きの声を上げた。
「誰も一人だなんて言ってないでしょう?クリスと一緒よ」
食事係はイエローとクリスの二人にお願いするつもり。
『あ、そうなんですか。…分かりました〜』
逃げられないことは承知してるのか、渋々OKの返事をくれた。
「それじゃあ、イエローはあと30分後にスーパーの前で待ち合わせしましょう。レッドには場所取りの徹夜組に回ってもらうから、せいぜい10時くらいまで寝ておくことね、って伝えてちょうだい。待ち合わせ場所はアタシの家。時間はそうね、10時30分くらいでいいかしら?遅刻は駄目よ」
これで用件は以上。
『…分かりました。それじゃ』
よし、レッドとイエローへの伝達おしまい。
「というわけで、グリーンも徹夜組だからよろしく!」
アタシはグリーンに振り向き、そう彼にも伝える。
「だから俺は行くとは…」
「もしもしクリス?」
「聞け!!人の話を!!」
もちろんことごとく無視。
『あれ?ブルーさん。お久しぶりですね。どうしたんですか?』
後ろできゃっきゃっ言う子供たちの声が聞こえる。彼女が手伝っていた施設にでもいるのだろうか。
「ん?ちょっと花見に行かないかって話しになってさ、明日あたりにどうかなって」
さっきレッド達に言ったことを繰り返す。
『明日ですか?…はい、大丈夫ですよ?』
少しの間の後、OKの返事が返ってきた。
「そこにゴールドもいる?」
いてくれれば楽なんだけど。
『はい、代わりますか?』
やっぱりいた。
「ううん。趣旨だけ伝えて。今日中に、アタシの家に来て欲しいんだけど、大丈夫かしら?」
今すぐ出てくれば間に合うとは思うけど。
『…はい、なんとか行きます』
嬉しいお返事ありがとう。
「クリスはイエローと一緒にお弁当作り頼むわね」
嫌とは言わせないわよ?
『…はい、頑張ります』
うん、いいお返事。
「じゃね」
よしこれで4人確保。
っというわけで、
「行くわよね、グリーン」
彼に振り向き、にっこり笑顔を浮かべる。
「…」
「ね?」
有無も言わさぬ笑顔っていうのはこういうのを言うのかしら。
「…はぁ」
彼のため息は諦めの印。5人確保。
「徹夜組が嫌なら、朝の食材オール荷物持ちとどっちがいい?」
せめてあなたには選ばせてあげるわ。ジムの仕事でお疲れでしょうし。
どっちを取っても変わらないとは思うけどね。
「…徹夜組でいい」
この際どうとでもなれ、と言ったような声色に、思わず笑ってしまった。
「あとはシルバーね」
そう言いながら、誰よりもかけ慣れた彼に、電話をかける。
「…あら?」
つながらない。
「どうした?」
気になったのか、アタシのポケギアの画面を覗き込むグリーン。
「なんか繋がらなくて。電波が届かないのか、電源でも切ってるのかしらね。残念。シルバーは不参加ね」
どこにいるかも分からないけど、今連絡がつかないんじゃ、ちょっと参加は無理そうだし。
「俺も電源切っとこうかな」
彼はアタシから離れながらそんなことを呟く。
「あら、そんなことしても無駄よ。どこまでも追いかけてやるんだから」
「…」
彼のいつもより多い眉間のしわに、くすりと笑う。
聞こえてないとでも思った?
「さぁ、計画もばっちし。メンバーは揃ったわ。アタシは買出しに行くから、10時30分にアタシの家で待ち合わせね。じゃ!」
そう言ってアタシはジムを後にした。
もちろん、盛大にため息をついた彼のことなんか、完璧無視して。
その後は、アタシの立てた予定通りに事が進んだ。
イエローとアタシとで買出しを済ませ、クリス達と合流後、明日のお弁当の下ごしらえ。
実はイエローが料理が苦手そうで、クリスが「違います!!」って一生懸命止めてたっけ。ご愁傷様。
レッドはぶつぶつ文句を言っていたけれど、グリーンと場所取りに向かわせた。
今は幸せに寝ているゴールドも、明日になったらどうなることやら。
え?アタシ?
アタシは買出し兼企画立ち上げ役。あとは、明日の朝食当番かな?
あー明日が楽しみだ。
明日もちゃんと、晴れますように…。
2004年4月10日 Fin
あとがき
なんか長くなりそうなので前後編にしました。っていうかはちゃめちゃ具合が激しいな。なんか今までまじめに書いてたのがありえんわー。まぁしゃーないな。こういった次の日です!っていう話は必然的にそうなってしまうんよね〜。あははは。まぁ仕方ないです。私の文才ではうまい具合にはいきません。前後編にしてだいぶ助かったってくらいです。ああ。
カップリングはばりグリブル、レイエ、ゴークリですが、グリブル以外はあま〜い描写は出てまいりませんのであしからず。あーゴークリは微妙かな。まぁ後編をどうぞ。文才が0に限りなく近い文章をお楽しみください。
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