グリブル小説「幸せ」
 

 

「おまえってさ、結局ブルーには甘いよなぁ」

 

 

 

「……は?」
たっぷり間を空けて返された声は、情けなかった。

 

幸せ

 

「…甘いよな」
「何の話だ」

暇つぶしにトキワジムに遊びに来たときだった。
話す内容もつき、ふと思い立ったのがこの内容だった。

「おまえはブルーに甘いって話だよ」
まんまだろうが。
「だからなんでそうなったんだ」
彼は呆れたように書類を片付けていく。
「いや、気づけばおまえって、なんだかんだ言いつつブルーのわがまま聞いてるだろ?」
「そうか?」
グリーンが顔をしかめる。
「そうだよ。だってこないだなんかブルーがここに行きたい!って言ったのをわざわざジム休みにして一緒に行ったろ」
あれには驚いた。
いきなりやってきたブルーが、ここに行きたいとわがままを言い出した。
それをグリーンはジムがあるだろうにあっさりOKを出したんだ。
天変地異がおきるんじゃないかと思った。(言いすぎ)
「あれはいつか休まなきゃいけないと思ってたからちょうど良かっただけだ」
あぁ、お前の休みはいつも適当だもんな。
3週間ぶっ続けでジムにいるかと思いきや、3ヶ月近く無断でいなかったりするもんな。
ある意味融通がきくのか?(違います)
「でもそれにしたって、自分が休むことじゃなくて、ブルーのわがままを聞くことを優先したろ?」
だからブルーには甘いって。
「長期間放っておくとろくなことがないからな」
「……」
なんだその悟った顔は。
「…レッド、笑い事じゃないぞ?」
「わ、分かってるけど」
グリーンが、グリーンが女の扱いに慣れてきた感じがありえねぇ。
「笑うな」
「い、いや、わりぃ。しっかしまぁ、グリーンがそんなことを学ぶとはなぁ」
あぁ、おかしい。
「いろいろあるんだよ」
そんなつかれきった顔でため息をつくな。
何があったんだよ。
「…まぁ、で、それがどうした?」
「あぁ、いや、だから甘いって話であって」
そうそう、おまえはブルーに甘いって話だ。
「甘いか?」
「甘いよ。あとはほら、ブルーがどこでも抱きついても文句言わなくなったろ?」
昔は真っ赤になってひっぺがしてたのに。
「何をしても、何を言っても無駄だからな。いい加減諦めるしかないだろ」
はぁと再度ため息をつく。
「ぷっ」
しまった、笑いが。
「レッド?」
「わぁ怒るな!?悪かった!!そ、それにしても、まぁ長年一緒にいれば慣れるよな!!」
あぶねーあぶねー。
頭にたんこぶだけじゃすまねーところだった。
「ったく。まぁ、そういうことだ」
慣れというものは恐ろしいな。
あのグリーンですらこんなになるんだから。
「何か言ったか?」
「いいえ!?」
俺口に出したか?!
「まったく。くだらない話をするな」
片づけが終わったのか、深く椅子に腰掛ける。
「くだらないっていうか、グリーンはブルーには甘いよなぁって思っただけであって」
「別に甘いとは思ってないけどなぁ」
「…」
自覚ないところを見るといわゆる愛ってやつか?
「ぷっ」
「レッドぉ?」
「え!?あ!?すんません!?」
あわわわしまった。
「何謝ってんの?レッド」
「うわぁあああああああ!?」
噂をすれば本人!?
「…ブルー……人の上に乗るな…」
「スキンシップ、スキンシップ。愛を確認中」
ぎゅうっと力強く抱きつく。
「あほ」
顔真っ赤だよお兄さん。
「…い、いつのまに…」
そうだよいつのまに来たんだ。
「え、今の間に」
「人の上に乗ったまましゃべるな」
「細かいことは気にしない」
誰かこいつらを追い出せ。
「あいかわらずだな、おまえ」
「そう?っていうか何変な顔してるの?」
首をかしげる。
「そ、そうか?」
口がひきつってる気はするけどなぁ。
「つーかおまえ、なんで来たんだよ」
無理やりおろし、彼女を見る。
「え?イエローの家で遊んできたからついでに寄ったの。このか弱くて美しいブルーちゃんがこんな夜に一人歩きなんて危ないでしょ?」
夜ってまだ夕方だぞ?
「か弱くて美しい?どこにいる?そんな奴」
「ちょっと!ここここ!!」
ブルーが自分を指差す。
「どこ?」
「ここだってば!!」
おまえらいい加減にしろ。
「つーかおまえなんか襲う阿呆はいないだろ。何より夜じゃないし、夕方だ」
たしかにブルーなら返り討ちだし、まだ明るい。
「もう!!どうして遠まわしに一緒にいたいって言ってることに気づかないのよ!!」
馬鹿ぁああっと叫ぶ。
「……おまえ、それ言ったら遠まわしじゃないだろ」
お兄さん顔赤いよ?
「だってぇ、グリーンがあんまりにも鈍感なんだもの!」
グリーンが恋愛系に鋭かったら俺は嫌だよ。
「…はぁ。ほら帰るぞ?」
ため息をつきながら、ブルーの頭を撫でる。
ほらやっぱりブルーには甘い。
「はーい」
嬉しそうに微笑むブルー。

まぁ、おまえらがそれで幸せなら、俺は別にいいけどね。

「…ねぇ今日ね…」
「…ふーん」

がちゃ…ばたん…かちゃ。

 

 

 

 

 

 

かちゃ?
「ん?」

 

 

 

 

 

 

「うわぁあ!!待って!!俺も帰る!!置いてかないで!閉めないで!!グリーン!!!」

 

俺が幸せじゃない!!!!!

 

2005年10月31日&11月1日&12月24日 Fin


あとがき

ごめんね。レッドさん。あなたはなんて損な役回りなんだろうねぇ。ごめご。そんなつもりじゃなかったのよ?ただこう、おちがね。レッドさんはこんな役回りというか(ひど)まぁ何が言いたかったかって言うと、ただ、兄さんは姉さんには甘いよね!!て話ですよ。なんだかんだ言いながら、はぁってため息ついて姉さんにOK出しちゃうんですよ?絶対そうなんだ。で、なんかこう、いろいろ頑張って兄さんを振り向かせようとするその行動が、兄さんにはかわいくってかわいくって仕方がないのよね(姉さん馬鹿?)案外確信犯的な部位もあったりするのかもですけど。でもあんまりいじめすぎるとっていうか、放置プレイがすぎると、姉さんが怒ったり泣いちゃったりするので、ほどほどに、かまってあげるくらいはしてあげるのです(何様!?)なんていうのかなぁ、兄さんはきっと、自分を好きな姉さんが好きなんじゃないかなぁとか思う(笑)いや、きっと姉さんが嫌いになるころには兄さんがどっぷり落ちちゃってるとは思いますけどね。でもなんか普通の恋人同士っぽい会話を始めてさせてあげられた気がします。初めて!?もう19歳くらいの設定とかなら大丈夫かなぁ(汗)なんか兄さんが悟ってなれてしまってるし。でも19歳であのラブっぷりはうざすぎ?甘すぎ?OKじゃなかったらすいません!!