あれから数年後。
アタシは今、彼と同じ屋根の下にいる。
あのときのアタシだったならば、絶対、想像がつかなかっただろうな。
そう頭に浮かべながら、先ほどまで開いていたジュエリーボックスを、ぱたんっと音を立てて閉めた。
部屋から出て居間へ行けば、テレビの雑音に包まれる。
テレビの前に置かれたソファーには、さきほど思い出したためか、思わずくすりと笑ってしまうような彼が、そこに座っていた。
「グリーン」
アタシは後ろから抱きつき、彼の名前を呼ぶ。
「…?ブルー?」
いきなりな事にびっくりした表情をするが、誰だか認識したのか、アタシと視線を合わせた。
「こんなの見つけちゃった。覚えてる?」
抱きついたことに怒られる前に彼から離れ、さきほどジュエリーボックスの中から見つけ出した、真珠のピアスを彼に見せた。
「真珠のピアスか?」
彼はそれを手に取り、360度回転させて見る。
「そう。あなたがくれた真珠を、ピアスにしたのよ」
その反応じゃ、もう覚えてないかしら。
「俺があげたって、もしかしてあのずいぶん前に押し付けた真珠のことか!?」
彼は驚いて、体制をこちらに向ける。
「うふふ、そう」
彼の驚きようがおもしろくて、くすりと笑みを浮かべた。
「まだ持ってたのか…。こんなのとっとと捨てれば良かったのに」
彼は顔をしかめながら、そんな事を言い出す。
「やぁーよ」
アタシは否定の言葉と共に、彼からピアスを奪い返した。
「そんなのいつまでも持ってることはないだろう」
眉間にしわよりすぎよ。
「いいじゃない持ってたって。だって…嬉しかったんだもん」
初めて、あなたがくれたものだから…。
「…」
彼はなんとも反応に困った顔をして前を向き、テレビのチャンネルを変えていく。
「真珠ってね、6月の誕生石なんだよ?アタシの誕生月の宝石なの。きっと、グリーンは知らなかったんだろうけど、それでも、アタシにはすごく嬉しかった…」
じつは、アタシの誕生日、6月1日の誕生石も真珠だと知ったときは、あまりの偶然さに、思わず笑ってしまった。
「…真珠の意味に、長寿と健康ってのがあるが、おまえはそのまんまだな。殺しても死ななそうだ」
彼は黙っていたかと思えば、いきなり悪態をつき始める。
「どういう意味よ!!」
アタシは怒って彼のそばへいくと、
「…」
彼の、少し赤みがかった顔に、思わず笑いがこみ上げた。
「笑うな」
グリーンがアタシの額をはたく。
全部照れ隠しだったのね。
「だって…」
そうだ。もう少しからかってやろう。
「ねぇグリーン、もうひとつの真珠の意味って知ってる?」
アタシは上目遣いで彼を見る。
「…」
すると、彼も何かひらめいたような顔をして、アタシを見た。
「?」
その表情に疑問を抱えていると、いきなりアタシの頬に、彼の手が添えられる。
「あー知ってるさ。真珠は古来から、愛と美の女神、ヴィーナスと関係してきていた。さらには、月の雫の結晶や、人形の涙とまで言われ、伝説化されている。真珠のもう一つの意味は、“美”。あながちそれも、間違いじゃなかったかもな?」
彼は不敵に笑み浮かべ、そんなくさい台詞を、言ってのけた。
「なっ!?」
顔に熱が走る。
不意打ちだ。こんなこと言われるなんて思わなかった。
「ふっ、冗談だ」
彼はアタシの頬からぱっと手を離し、再度テレビのチャンネルを変えだす。
「なっ!?もう!!グリーンの馬鹿!!」
アタシが部屋に逃げたあと、一息ついてソファーに寄りかかっていた彼を、アタシは知らない。
2004年4月8日 Fin
あとがき
ようはつまりどっちもどっちってことさ!!!余裕に見せかけてグリーンも余裕じゃないって話です!!!!分かって!!!っていうかありえない。こんなグリーン絶対ありえないし!!!ルビーのがしっくりきそうだ。彼はこんなぎざったらしい台詞を平気で吐いてくれそうですからね。問題ないでしょう、あの人なら(笑)っていうかこんなに博識なのはグリーンしかいなそうって思ったんだよ!!!一生懸命考えたんだよ!!!きっと、きっとグリーンも、大人になっていくうえで、へたれ返上して、一生懸命余裕になったんだよ!!!それだけブルー姉さんがおぼれてるっていうのもあるんだけど、とにかく余裕になってくれグリーン!!!って感じで。っていうか絶対ありえないこんなグリーン。っていうか喋りすぎ。あの人こんな喋らない。まぁ自分の知識を話すときくらいはおしゃべりでいておくれ!!!頼むから!!!!あがががが。あーもう。
しかし自分でもびっくりです。真珠って1日の誕生石でもあるんだね〜。うわーもう!!ブルー姉さんってば!!!っていうか美だよ美。彼女にこそ素晴らしい。ちなみに最後冗談だって言わせたのは、歴代無表情キャラが丸くなったときに言う台詞No.?に入る台詞です(笑)いやうそ。あははは。でもたしか誰か言ったよ。絶対。まぁようは大人になって丸くなったって方向で!!!それも嫌だな!!!でもへたれはもっといや!!!頑張れグリーン!!!頑張るんだグリーン!!!ぐああああ。
ここまで読んでくれた奇特な方、ありがとうございました。ありえないグリーンを堪能できていただければ、この作品の意味はありました。では。
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