グリブル小説「幸せの与え方」
 

 

「聞いて聞いて聞いて!!!!」
「聞こえてる!!!なんだ!」
興奮したあたしを、一喝できるのは彼だけだと思う。

 

幸せの与え方

 

「…あ、あのね」
彼の迫力に圧されて、あたしは少し落ち着いた。
「なんだ」
なんだかんだで、話を聞いてくれる彼が大好きだと思うあたし。
「えーと、あたしの好きな作家さんに会っちゃったのよ!!」
あたしは彼の腕をたたく。
興奮が冷めやまないんだ。
「はぁ?っていうか痛い」
彼はあたしの手を離させる。
「サイン会やっててさ、サインはもらえなかったけど、姿見れただけでもう幸せよ!!ずっとずっとあこがれてたから超うれしいんだけど!!」
街を歩いていたら、ある書店でサイン会をやっていて、誰かと覗いたらなんとあたしの憧れの作家さんだったのだ!
「そ、そうか」
今度は彼が気圧される。
「あたしあの人のシリーズ全部読んでるからほんとう嬉しくって!」
「あぁ、あのおまえの部屋の本棚にあるやつか」
ポケモンのこと以外の本を、あまり読まないあたしには、そのシリーズだけは異色に見えていたのだろう。
「そう!!ほんとすっごく感動できて、毎回泣ける話書く人なのよ!!絵もきれいだし、ほんとすっごい大好きなの!!」
何度読んでも泣ける話で、すごく大好きな作家さんなんだ。
「…そんなに言うなら読んでみるかな」
「ほんと!?ぜひぜひ読んでみて!!全巻貸しちゃう!!」
恋愛小説が主だけど、結構幅広く読むあなただから、大丈夫よね?
「…そ、そうか」
やっぱり、彼は少し気圧されている。
「…でもほんとすごいよね。あーいう人が、人を感動させれられる作品を書けるんだなぁって思った。書いてく話を読んで、誰かを幸せにできるなんと、ほんとすごいよ…」
あたしはうっとりと窓から空を見上げる。
「まぁそれが才能というものだ」
「あたしにも誰かを幸せにできるような何かがあればいいのになぁ」

あたしは、人を不幸にする力しか見につけてこなかったから…。
だから、自分の力で人を幸せにできる人が、すごく、すごくうらやましくて、あたしの最大の憧れ。

「…あるだろ」
「え?」
彼の言葉に、あたしは振り返る。
そしたら…

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ!?」
彼にキスをされた。

「…大勢の人は幸せにできないにしても、少なからず俺を幸せにはしてるよ…」
彼が優しく、あたしを抱きしめる。
「っ…」
あぁもう、何よそれ。
なんなのよ…。
「ずるいなぁ」
「なんでだ?」
さっきの興奮と感動と、今のそれ以上の感動と喜びに、涙腺緩んじゃうじゃない…。
「あんたのがよっぽど、あたしのこと幸せにしてるわよ」
くそう。
あたしだって負けずに幸せにしてやるんだから、覚悟しなさいね。

 

2008年3月18日&21日 Fin


あとがき

春コミで椎名様や源造様に会えた喜びをグリブルって形で表現しました。熱で朦朧とする頭でよく考えてっていうか思いついて書けたなぁって思う(笑)なんか興奮冷めやまぬうちにってことで。書いた絵や小説で人を感動させられる人ってほんとすごいと思うんです。何かしら自分がしたことが人の幸せに影響するってかなりすごいことだと思うんだ。なので、そんな幸せの与え方ってことで。やり方は違えども、何らかの形で姉さんは、きっと誰かを幸せにしたいって思ってるんじゃないかなぁって思います。それが兄さんにできてるならいいよねってお話でした。
あぁ苦しい。げへげへ(おい)