その後… 「じゃあな」 本来なら、あたしもグリーンも、マサラに帰って、それぞれの家で、別れるはずだった…。 「…グリーンは…帰らないの?」 そう、あたしのせいだった…。 確かに、グリーンとレッドに、心配させられるというのが、どれだけ苦しくて切ないものなのか、分からせるためにやったことだが、まさかこんな本気で探して、心配してくれるなんて、思ってもみなくて。 「あっ…あのっ!」 良かった、とりあえず、心底怒っているわけではないみたいだ…。 「あの…その…」 どうしても、伝えなきゃいけないことがある…。 「…はぁ…なんだ…」 唾を飲み込む音が、やけに大きく聞こえる気がする。 普段、こんなに緊張することなんかないから、どうやったら収まるのか、分からない…。 空気をうまく吸えないようで、喉が渇く。 「…ご…」 言いたいのに、言葉がうまく、口から発せられない。 苦しい。 「…ブルー?」 駄目…ちゃんと…ちゃんと…伝えなきゃ…。 「グリーンの奴、ほんとに心配して探してたんだぜ?ちゃんと、後で謝っとけよ?」 レッドが言ってくれたこと、嘘だと思いたくないから…。 だから、ちゃんと…… 「ブルー?」 「は?」 そう、この事態は、あたしにとっても予想外だったんだ。 あの置手紙は、本当に探して欲しいって意味で、貼っていったわけじゃない。 「いなくなったのは…なんか、静かな場所で、ぐちゃぐちゃした考え、まとめようと思ってただけで…」 自分が、わがままを言ってたのは分かってたんだ…。 結果的に、シルバーに八つ当たりする形に、なってしまったけれど…。 「それに…あんな別れ方したから、心配なんか、してくれないだろうし、どうせ、探してなんかくれないと…思ったから……」 結構遠くの、分かりにくい場所まで逃げ出して、一人になって、ぐちゃぐちゃした考えを、まとめるつもりだったんだ。 「…こんな、いろんな人を巻き込んで、迷惑をかけるつもりなんか、最初はなかったんだけど…」 「…だから…なんか…いっぱい………ごめんなさい…」 泣きそうで、目尻が熱くなって…。 「…はぁあああ」 「…」 流れる沈黙。 「…怒って…る?」 「……いや、怒ってるな」 「え?!」 「…まず、探さないだろうって思ってるあたりがむかつく」 心配していいって、許された気がした。 そんな…気がした…。 「……ほんとよ…ほんとに…ほんとに……心配したんだからっ」 「…っ……おかえりなさい…」 「……ただいま…」 優しく感じる、唇のぬくもり…。 2007年12月19日 Fin
遅ればせながら、声日記にアップした物語の後日談です。後日談っていうか、その後みたいな?あの話だけでは、姉さんがただのわがまま女王ですから、これじゃあ姉さんのいい部分がまったく表現されていない!!これはまずい!!!!と思い、急遽考えた話です。本当は1ヶ月前くらいに脳内に浮上した話だったのですが、更新するときに書けばいいやと放置してたら、だいぶ違う話になってしまいました。でもこれで、とりあえず姉さんが何を思い行動し、結果的にどうなって、どうしてそうなったのかが分かってくれたかなぁと思います。それで少しは、兄さんにとって姉さんが迷惑者ではなく、まぁ仕方ないよなぁっていう見方をしてくれればいいなぁと思います。好きだけど近づけなくて、好きだからこそ、どうしようもない想い。そんな葛藤、分かってくれると嬉しいです。原作者が俺なので、最後まで不完全燃焼なお話しになってしまいましたが、本当にリクエストありがとうございました!!
シルバーと別れて、トキワのジムの前で、イエローとレッドと別れる。
でも…
ジムに残ると言った彼に、そう語りかける。
「…だれかさんのおかげで、ただでさえ旅をして遅れてる仕事は、一切手付かずだからな」
ここまで、迷惑かけるなんて、思いもしなかった。
ジムに入った、彼の腕を掴む。
「…なんだ…」
彼は、いつもの仏頂面で、振り返った。
あたしは言いづらそうに、意味のない言葉達を繰り返していく。
「…用がないなら、仕事をしたいんだが…」
「あのっ…し…仕事ならっ…あたしも…できる限り手伝うしっ…だから…少し…話を…聞いて…」
必死に、彼を引き止めた…。
言い訳にしか…聞こえないかもしれないけど…。
彼は大きくため息を吐き、あたしをじっと見つめる。
「…あの……」
心臓の音が、空気を伝わって聞こえてしまいそうなくらい、大きく聞こえる気がする。
血が廻っていくようで、体が熱い。
伝えなきゃ、言わなきゃいけないのに…。
なんでだろう…。
あたしの異変に気づいたのか、彼は少し、心配気にあたしを見つめた。
「…ご…」
「…っ…ごめんなさいっ」
あたしは俯いて、彼にそう告げた。
「こんなっ…こんな大事になるなんて…思わなくて……どうせ…探してなんかくれないだろうしって…思ってたし…」
昨日、あんな別れ方をしておいて、いきなりいなくなったら、それこそ迷惑だと思ったからだ…。
いくら好きだって、相手の行動を制限することはできないし、文句を言う権利はない。
あたしにそんな権利はないことは、分かっていた…。
でも、好きだから関わっていたくて、好きだから、怪我したら心配だし、居なくなったらって思うと怖い…。
そういう気持ちの葛藤を、どうすれば抑えられるのか、分からなかった…。
シルバーにも、ちゃんと謝っておかなきゃなぁ…。
思った以上に、刺さった言葉が痛くて、人に八つ当たりして、人に慰めてもらわなきゃ、うまく、立ち直れなかった…。
迷惑かけて、心配させて、探させて、あなたの時間の邪魔をして、仕事を増やして。
謝らなきゃいけないことは、たくさんある…。
声がかすれそうで、喉の奥が震える…。
「…っ」
俯いて喋り終えたあたしに、彼のため息が突き刺さる。
あたしは思わず、びくっと震えた。
再度、心臓の音が、大きく聞こえた気がした…。
こんな言い訳じみた、自分勝手な理由、怒るだろうなぁ…。
「…いや…怒ってはいないが…」
彼は呆れたように息を吐き、近くの椅子に座る。
「…ほんと?」
あたしは少し安堵したように、顔を上げた。
どっちなのよそれ…。
「へ?」
ど、どこに怒ってるって?
「あげく心配しないだろうって思ってるのがむかつく」
「……」
迷惑かけたことを、怒ってるんじゃないの?
「…こっちだって、さすがに言い過ぎたと思ってたのに、いきなり居なくなるし…。どんだけ心配したと思ってんだ。このアホっ」
「いたっ…うぅ…」
でこピンされた額を押さえる。
「はぁ…俺も悪かったよ…心配かけて。…ごめんな…」
ちゃんと、届いた…。
ちゃんと、受け入れてくれた……。
いきなり居なくなって、やっと、帰ってきたら傷だらけで…。
近づいたら、突き放されて…。
「…ほんとに…っ…怖かったんだからぁ…っ」
気が緩んだように、涙がぼろぼろ溢れ出る。
「…うん…ごめん」
彼は、優しくあたしを抱きしめた。
「…っ…グリーン…」
涙声で、彼の名を呼ぶ。
「…ん?」
彼は、優しくあたしの頭を撫でた。
あとがき