グリブル小説「その笑顔に…」
 

 

その笑顔に…

 

「ごめんね…」
唐突の謝罪の言葉。
ぎゅっと後ろから首に腕を回して抱き付く。
「…今度は何をやらかしたんだ」
困った顔をしながら、またか、と彼は呆れたように溜め息を吐いた。
「…いや、べつに何もしてないけど…」
またって何?
「じゃあなんで謝るんだよ」

唐突の謝罪の言葉。
その意味は…

「…好きだから…」
「は?」
訳が分からないというように、あたしの手を離させ、あたしの方を向く。
「…好きだから…。だから…ごめんね…」
「…だから、なんで好きだと謝るんだ…」
彼は分からないというように、あたしを見上げる。
「…いっぱい…いっぱい、これから迷惑ばっかりかけて、あなたの邪魔ばかりを繰り返すだろうから…先に謝っておこうと思って」
そんな彼に、ぎゅっと抱き付く。
「…なんだそれ…」
「…好きなの…」

少し苦しげに声が出る。
別に、なんとはなしの、言葉だったのに…。

「…謝る必要性はないだろう…」
溜め息で一呼吸置いて、優しい言葉が耳に伝わる。
「え?」
「お互い様だろう…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…あたしは迷惑とか、邪魔だとかは思わないよ?」
お互い様って、どういう意味なの?
「じゃあ俺も一緒だよ…」
「………じゃあって…何よ」
じゃあって、どういう意味なの?
「さぁな」

肝心な言葉をくれないのに、無駄に説得力があって、それ以上は追求しなかった。
優しい手のぬくもりと、抱き付いてることを嫌がらずに受け容れてくれる彼の想いが、心地よすぎて…。

「…好き…」
「…あぁ」
言葉の代わりの優しいキス。
目を開けたらきっと、いつものように笑える。

 

2007年6月20日 Fin


あとがき

きっと、その笑顔に、兄さんは癒されるんだと思います。RALUKU様にいろいろ話を聞いてもらって、得た結果の一部を小説化したようなもんです。うちの兄さんが愛してくれない現象を、どうしたらいいかの答え。話しながらいろいろ気付かせていただきました。感謝してます。他に書かなきゃいけない小説があるのに、こっちが先に(笑)まぁこういうのは新鮮なうちに(ええ)形になったもん勝ち!!あはは。いかに、兄さんに好きだと言わせずに、姉さんの気持ちより上に見せるか。姉さんの気持ちよりも寛大に見せた気分はありますが、はたして好きという気持ちかは分からない感じになったなぁ。でも、全てを受けとめてあげた感は出せたと思いたい。姉さんの不安定さと、兄さんの気持ちの大きさと、姉さんがいかに好きかが出れば、うちのグリブルの完成さ。こういうのをどんどん形にしていきたいなぁ。頑張れ俺!!