彼女はここ最近、よく泣くようになった。 tears 「…好き…好き…グリーンが好きなの…」 ここ最近、不安にさせては泣かせて、一人にしては泣かせてしまう。 「…グリーン…っ」 あぁきっと、俺が泣かせてる。 「あたしは、グリーンといるから幸せ…」 彼女の…幸せそうな笑顔に…。 「…じゃあ……じゃあどうして…どうして泣くんだ…」 「…好きだよ…」 何度も「好き」だとは伝えてきたつもりだ。 「…好きだ…っ」 どうすればいい…。 「好きだ…好きだ…」 部屋に凛と響く。 「…ほん…と…?」 「…好きだ」 もうこれ以上、涙が零れないように…。 「好きだ」
いや、よく……泣かせるようになった…。
言葉一つ一つ分、彼女の頬には涙が流れていく。
何が不安なのか、何をそんなに悲しむのか、俺には全然、分からなかった。
ただ、
俺を呼んでは泣き、
「…好きなの…」
と愛を囁いては涙を流す。
俺が…
「…ブルー…」
俺はそっと手を伸ばし、彼女の止め処なく溢れる涙に触れる。
「…っ」
彼女は、俺の手に身をゆだねた。
「おまえは…俺といて楽しいか?」
そんな、泣いてまで俺といて楽しいのか?
「……楽しいよ…」
彼女が、涙で上擦った声で答える。
「…俺といて…嬉しいか?」
そっと彼女の頬を撫でる。
「嬉しいよ」
徐々にはっきりする言葉に、俺は逆に戸惑いを隠せなくなって…
「…じゃあ…俺といて…」
言葉が…言えなくなる…。
「…っ!?」
一瞬、心を読まれたかと思うほど、どきりと心臓が跳ね上がる。
言おうと思ったことを言われたことにもだが、何よりも…何よりも…
途切れ途切れでも、彼女の言葉に、俺は少しずつ言葉を口にできるようになる。
そっと、彼女の涙を、拭いながら…。
「っ……」
彼女は何も、答えなかった。
「…何が不安?何が欲しい?どうして欲しい?」
どうすれば…どうすればおまえが泣かずにすむのだろうか…。
「…っ」
彼女は、口を開きかけては涙が溢れ、言葉を喉の奥に仕舞いこむ。
「…」
俺は、無理に聞こうとはせず、ただ優しく頬を撫でて、涙を拭った。
「……っ……きに…」
「え?」
やっと聞こえてきた、彼女の小さい声に、俺は耳を傾ける。
「…好きに…もっと…もっと好きに…なって欲しかったの…」
涙目で俺を見上げると、さきほどよりも多くの涙が、彼女の頬を伝っていった…。
俺は言葉を返す。
胸の痛みに耐えながら。
好きじゃなきゃ一緒にいるわけもないし、好きだからこそ、俺は今、こうしてる。
でも、彼女には届いていない。
こんなにも泣かせてしまうほどに…。
どう伝えればいい…っ。
どう言えば、どうすれば、彼女に俺の想いが、届くのか…。
あぁ、泣きそうだ…。
「好きなんだっ!!」
苦しい、もどかしい。
どうすれば…どうしたら…
「…っ」
しばらくの沈黙を、彼女が破る。
「……好き…」
彼女が、俺を見上げてそう言った。
「…好きだ」
俺は彼女の言葉に、返事を返す。
「……好き…?」
彼女は俺に、そう問うてくる…。
俺は優しく、それでいてはっきりと、言葉を返した。
「……っ…うん、大好き…」
「…っ」
ほんとに、ほんとに幸せそうに、嬉しそうに笑うから、俺はぎゅっと…ぎゅっと彼女を…抱きしめた…。
2008年6月8日 Fin
あとがき
兄さんが叫んだ!萌え!しかも好きだ!!なんて叫ぶのはもうありえない!!!ありえないけれど、でもありえるような話を思いついたので、この形があるわけですが。でもほんとしばらく書かない間に、本気で兄さんの性格が変わったっていうか、あたしの兄さんに対する態度が変わった。兄さんの姉さんに対する態度が大きく変わった気がします。
っていうか感覚あけすぎやんね、あたし(笑)本来ならこれ、マンガで描いたりするとすっごいふわふわしたキレイな話になるとは思うんですが、マンガなんかで描けないから切ないかな。でもこの話ならあたしの絵でも平気そうですけどね。沙耶の絵じゃ兄さんが「好きなんだ!!」なんて叫ぶのは似合わなすぎる。あたしか風さんあたりの絵がいいなぁ。なんて(笑)まぁマンガでかけない悲しさゆえに、小説でお楽しみくださいませ。お粗末さまでした。