グリブル小説「届かない愛を、俺は送り続ける。」
 

 

届かない愛を、俺は送り続ける。

 

「っ…グリーンはやっぱりあたしのことなんか好きじゃないんだ!!!」

 

 

 

滅多に泣かない彼女が、大きな蒼い目に涙をいっぱい溜めて、そう吐き捨てて部屋を出て行った。

「……」

さすがの俺も驚いて、しばらく瞬きを繰り返したが、状況を完璧に理解することはできなかった。

とりあえず分かったことは3つ。
俺が彼女を泣かせたこと。
彼女が部屋から出ていったこと。
俺の気持ちを、否定されたこと。

たまに、くだらないケンカをするたびに、
『それが彼女に対する態度なの!?グリーンの愛がぜんぜん足りない!』
なんて、よくぎゃーすか騒がれた。
そのたびに俺は、はいはいと聞き流し、さらに彼女を怒らせた。

でも、そんな中で、俺は少しずつ、違和感を感じていた。

あいつは、自分の気持ちをストレートに表現して、痛いくらいの狂気的な愛を、俺に与えてくれる。
でも、俺の気持ちは、何にも届いていないような、そんな気がしていた。
まるで、雲を掴むような、馬に念仏を唱えるような。
そんな感覚を、感じ初めていた。

そばにいる時間が増えれば増えるほど、あいつを遠くに感じる。
口付ければ口付けるほど、想いは消えていく。
抱きしめれば抱きしめるほど、あいつが、消えていく。

あいつが望む言葉を言ってるはずなのに、あいつに届く前に、消えていくようで。

あいつは毎回、口付けても、抱きしめても、好きだと言っても、

 

「…もっと…もっと頂戴…」

 

と、泣きそうな声で訴える。
そして、

 

「ごめんね…」

 

と、小さく囁くんだ。
何が?と聞いても、彼女は苦しそうに笑って、なんでもないと首を振った。

 

 

あいつの中に、入り込めない何かがあって、その何かのせいで、俺の気持ちが全く届いていない。
本当に、俺の愛が足りないって話なのか?
やっぱり好きじゃないんだと言われるほど、ないがしろにしたつもりはない。
俺が駄目なのか?
俺がいけないのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

俺じゃ、あいつを支えきれないのか…?

 

 

 

 

 

 

「くそっ!!」
ばたんっと、ドアを乱暴に開けて彼女を追いかける。

分からない、分からないけど…手放す気なんか…ないんだ。
おまえに、手を差し伸べ続けることを、俺はやめたくはないんだ。
たとえ、お前が望まなくても。

「…ブルーっ」

 

 

 

彼女を見つけて、彼女の腕を掴んで、そのままぎゅっと抱きしめる。

「いやっ!!離して!!あたしのことなんか嫌いなんでしょっ!!離してよっ!」
「誰がそんなこと言ったっ!」
嫌いだなんて、言ったこと一度もねないだろ。
「だって…だって……あたしなんか…」

そういえば、こいつは自分を卑下する言い回しをよくする奴だった。
自分なんて…。
そう、よく自分を否定していた…。

「…あたしなんか……グリーンに…愛してなんかもらえないもんっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうか…そうなんだ。

俺の想いが届かないとか、俺の愛が足りないとか、そう言う問題じゃない。

自分に、自信がないんだ…。
愛されるほどの、自信がない。

愛を自分からあげることはできる。
どんなに自分を否定しても、想いは、止めようがない。
でも、想いを受け入れることができないのは、愛される自分なんて、ありえないと、自信が持てないからなんだ。

ここできっと、おまえだから好きなんだとか、おまえがいいんだって言ったって、こいつにはきっと、届かない、響かない。

 

だから…

「…っ!?」
「…」
彼女の暖かい手を、ぎゅっと握り締める。
「っ」
優しく口付けて、抱きしめて。
でも、そんなの、ぜんぜん役に立たない。

「ブルー……独りで、泣くなよ」
俺の口付けじゃ、おまえの涙は拭えないけど。
俺が抱きしめても、お前の傷を消すことはできないけど。

「…ブルー」
ぎゅっと手を握り、名前を、呼び続ける。

おまえにいつか、この想いが、届くように。

届かない愛を、俺は送り続ける。

 

 

ずっと…ずっと…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見せ掛けじゃない、本当のおまえに、会いたい…愛したい…」

 

 

いつか…いつの日にか…。

 

2007年9月9日 Fin


あとがき

わけわかめーーーー!!!!とか言わないで!!!やりたかったのは、兄さんの気持ちを受け入れられないのは、姉さんが自分に自信がないからってのを言わせたかっただけで――――す!!
つーわけで、ずっと書いて見たかった、「Love is here」の歌詞を元に製作した小説です。所々無理ありますけど、必死に頑張ったつもりです。兄さんのモノローグが少しお気に入り。というか、日本語が。あーいう言い回しが好きです。
まじめにグリブルというカップルを考えることができた気がします。今までなんでグリブル好きなくせに、グリブルを考えられないんだろうと思ってました。私の中では兄さんが決して姉さんを愛さなくて、姉さんが愛してるばっかりで、グリブルというよりブルグリだったんですよ。ところが気付けば、兄さんが愛さないんじゃなくて、姉さんが兄さんが姉さんを愛してることを認めてないだけなんだなぁってことに気付いて。自分が愛されるわけないと、そう思いこんでる姉さんの気持ちばかりを中心に見ていたせいなんだなぁって。でも気付けば、あそこまで狂気的な愛と自分勝手な行動ばかりしていて、それでも「好きだ」と言ってくれるのは、本当に好きじゃなきゃできないことだなぁと思えて、この作品はできました。これが俺のグリブルです。こんなんでよいですか?