優しい人 「あれ、グリーンどこ行くの?」 わーいわーい幸せぇ。 「えぇええひどーい!いいじゃない!ちょっと見てすぐ買ってくるから!!」 幸せは長くは続かない。 「…グリーンの馬鹿ぁ」 なんで?なんでここにいるの? 「な…なんで?帰ったんじゃないの?」 いつから待ってたの? 「…ど、どうして?急いでたんじゃないの?」 少し冷え込み始めた夕暮れ時に、1つの暖かいぬくもりが伝わってくる。 冷たいけど、でもどことなく優しい人。 「グリーン、大好きよ」 2005年6月15日
Fin
なんだか長くなったぞ?!2ページで終わるかと思ったが倍になってしまった。まぁいいや。ほんとは「待ってて悪かったな」で終わるはずが、伸びに伸びてしまった。これは、ある漫画の一言でぐわっと来たので採用。ぱくりとか言わないで。話は全く違う。っていうかアレは学園モノだった。っていうか待ってて悪かったなとかちょっと萌えません?萌えません?もうあたしは萌えたんだよ。っていうか兄さんがクールになりきれてない度が高くて笑う。クールというよりただ冷たいだけな感じですが。どうにもうちの兄さんはあまり姉さんを好きではないので。でも、いちお傷つけるつもりで言ってはいないんですよ。すっごくうざいとも思ってないし。むしろうざいを通り越して慣れた、みたいな(ひど)で、なれると逆に、ないほうが変な気分になったりしてね。そうさせたら姉さんの勝ちです(笑)で、まぁ傷つけるつもりじゃないからさ、兄さんは。でもあんまり人との関わり方が分からないから、知らずに傷つけちゃったりして。そういう自分を少し気にしてくれてると嬉しい。で、謝罪のために、言うこと聞いてあげたりね。でも「言うこときく」とは言いたくないプライドの高さ(笑)冷たくあしらっちゃうけど、でも、心の中は優しい心の持ち主さんなので、優しいんですって話で。今は誰でもそうなるけど、そのうち姉さんだけの優しさができてくれるといいなぁと思います。でも他の女の子に同じ優しさ振りまいてたらやだなぁ。それを考えると、姉さんは少しだけ特別なのかな。だといい(笑)
タマムシに買い物をしに行こうとしていたあたしは、前に見知った後姿を見つけて声をかけた。
「……なんだおまえか」
彼はあからさまに嫌そうな顔を浮かべる。
「…あたしで悪かったわねぇ。で、どこ行くの?」
そんな言葉でめげません。
ぎゅっと腕に抱きついて仕返しよ。
「なっ!?離せ!!」
「い・や」
予想通りの反応に、あたしはぎゅっと掴んで抵抗した。
「…っ…はぁ」
彼は諦めたのか、大きくため息をついて歩き出す。
「わっ、待ってよ。で、どこ行くの?」
抱きついたまま歩かれたらバランス崩すじゃない。
「どこだっていいだろう。おまえに関係ない」
あいかわらず冷たいなぁ。
「えぇ向かう方向一緒っぽいから気になるんだけどぉ」
置いてかれないように、ぎゅっと抱きついたまま歩く。
「タマムシに行くのか?」
「うん」
あ、一緒だった。良かった。
「…はぁ」
あ、そんなさらに嫌そうな顔しないでよ。
「…買い物?折角だから一緒に行こうよ」
「嫌だ」
即答!?
「えぇ!!なんでよ!!」
「女の買い物なんか付き合ってられるか」
あぁ、グリーン苦手そう。
「……うぅう……いいじゃない!どうせ向かう先も帰る場所も一緒なんだから!ねっ!ねっ!いいでしょう?」
必死に彼に食らいつく。
折角久しぶりに会えて、しかもデートみたいなことができるなんて、こんな嬉しいことないじゃない!
ちょっとくらい付き合ったって罰あたらないんだから!!
「……はぁ…勝手にしろ…」
再度ため息をついて彼のOKの言葉が返ってくる。
「ホント!?やった!」
あたしは嬉しそうに微笑んだ。
グリーンと一緒に買い物できるなんて!
グリーンと一緒に街を歩けるなんて!
グリーンと一緒にいられるなんて!
…なんて……なんて………
グリーンの用事はもう少し先。
あたしの用事はここ。
「そのちょっと見てに時間がかかるだろうが。俺はさっさと用を片付けたいんだ」
ジムの忙しい合間を縫って来たのか、さっさと終わらせて帰りたいらしい。
「すぐ終わらせるから!」
一緒に帰ろうよ!!
「…好きにしろとは言ったがおまえに付き合うとは言ってない。買い物するなら好きにしろ。俺は自分の用事を済ませる」
そう言ってそのまま道を歩き出してしまう。
「…っ…グリーンの馬鹿!!ケチ!!」
そう叫んでも、彼は振り返ることなく先を進んで行ってしまった。
「…ほんとに置いてくし…」
馬鹿。
結局一緒に買い物できなくて、街を歩けても入り口からほぼ200mくらい。
一緒にいれた時間もたった5分程度。
何それ。
何それ何それ何それ!!!
あたしのあの喜びを返せ!!!!
怒りが結局収まらず、ずいぶん余計なものを買い込んでしまった。
ストレスたまると買い物しまくるって本当ね。
「馬鹿、馬鹿馬鹿」
少しくらい付き合ってくれたっていいじゃない。
少しくらい相手してくれたっていいじゃない。
少しくらい…あたしと一緒にいてくれてもいいじゃないか…。
「……グリーンの馬鹿」
「誰が馬鹿だ」
「っ!?」
グ、グリーン?
帰ったんじゃないの?
どうしてここにいるの?
驚きで目が瞬きを繰り返す。
「……っ…待ってて悪かったなっ」
「え?!」
なんですって?!
なんで?!どうして?グリーンがどうしてあたしを待ってるの!?
「…」
彼は視線をそらす。
こんなタマムシシティの入り口で、いつ来るかも分からない人を、どうして待ってられるの?
だからあたしを置いて行って用を済ませに行ったんじゃ…。
「…急用だったからな。早く済ませる必要があっただけだ。べつに早く帰るために急いでいたわけじゃない」
つまり、あたしを置いていったのは、あたしの買い物に付き合ってたらその急用を済ませられなかったから置いてったってこと?
「……そう言ってくれればいいのに」
そうすれば、心に寂しさが生まれることはなかったのに。
お財布の中身も、寂しくならなかったのに。
「べつに言う必要性はないと思ったから」
「言うべきです!!泣くかと思った…」
最後の言葉は俯きながら呟く。
冷たい態度はいつものことだが、あそこまで拒絶されてしまうとさすがに傷つくんですけど。
「…悪かったな」
優しく頭を撫でてくれた。
「……ダメ、許さないんだから」
きっと彼をにらみ上げる。
「…っ、そう言われてもだな」
彼が困ったように逡巡した顔を浮かべる。
「はいっ」
「は?」
あたしが片方の荷物をグリーンに押し付ける。
「マサラまで持って」
つまりは荷物持ちしてってことと、一緒にマサラまで帰ろうという意思表示。
「……はぁ。そっちも持つのか?」
彼は仕方ないというように荷物を受け取り、もう片方の荷物も持とうとする。
「…こっちはいい。こっちの手はこうするの」
そう言って片方の開いた手で、彼の手を握る。
「っ!?お、おいっ」
彼は真っ赤な顔をするが、やっぱり振り払うことはしなくて…。
握り返してくれたあなたの手から、感じるあなたの優しさと共に…。
置いてくくせに、いつ帰ってくるかも分からないあたしを待っててくれる、優しい人。
怒るくせに、振り払うことをしない…優しい人。
「っ」
彼の顔は、帰り道の夕陽と同じ色。
あとがき