こんな日常生活、見たら笑えますね…
Episode.1 〜せんべい〜
ぱりん、ぽりん、ぱりぱり…
「…何食べているんだ?」 「ふぇんふぇい」
ある日の午後、ブルーがいすに座り何かを食べていたようだ
「…それはオレが買ったモノなんだが」 「え? あ、そうなの。 ゴメン、これで最後だわ」
ブルーが悪びれもなく、袋に入っていた残りの1枚を口にくわえた
「ふぃふぃふぁなひ、ふぁたふぁってふぃへはへふかふぁ(イイじゃない、また買ってきてあげるから)」
何を言っているんだがさっぱりわからない、グリーンがブルーのそばにズズィッと近寄った
ぱりん
「……ふぇ?」 「…ふぉうひひ(もういい)」
グリーンがブルーのせんべいを口でくわえ、割っていってしまった…
「…なんだ、もったいない。 食べ物を床に落とすな」
半分に割れたせんべいをすでに食べ終え、グリーンがしれっと言った
Episode.2 〜会話〜
ブルーは寝そべってTVを見、グリーンはソファーによりかかって本を読んでいた
「……ねぇグリーン、アタシのこと愛してる?」
何かこう「今日の夕ご飯は何?」と同じ口調で、特に意味も無いような感じで訊いた
「愛は試すもんじゃない、応えてやるもんだ」
これもまた「今日の夕ご飯か、そうだなハヤシライスだ」と全く変わらない口調だった
「へぇ、んじゃ…どうやって応えてくれるの」 「こうやって毎日、お前のそばにいてやるだけで充分じゃないか」
こうした会話でさえ、2人は顔を向き合おうとしない
「…あきれた、この前と同じじゃない」 「お前が毎日、訊いてくるからだろ」
グリーンは姿勢を崩さず、本を読み、コーヒーを飲んでいる
「せめて、キスぐらい言いなさいよ」 「…なんだ、言って欲しかったのか」 「バカ」
ブルーがグリーンの顔に両手を添え、そのまま顔だけ天井を向けさせた
……なんだかするはずのない、苦いブラックコーヒーの味がした
Episode.3 〜お風呂〜
「ね、グリーン。 一緒にお風呂入ろ」
ある日の夜、バスタオルとパジャマを持ったブルーが、さも当たり前のように言った
「断る」 「あら、照れてるの」
ブルーがグリーンのほほを指でつんつんとつついた、グリーンの表情は変わらない
「オレがそういう理由で断っているものだと、お前は思うのか」
不敵に微笑むグリーン、その笑顔の裏に何があるかわかったもんじゃない
Episode.4 〜ナイフ〜
「きれいなナイフね」 「ああ」
刃物には不思議な魅力がある、それが何処を示すのかはよくわからない
「これで指を切ったら、痛いのかしら」 「多分、血が出るんじゃないのか」
そう、ヒトや動物に大抵流れているあの赤い血が
今持っているグリーンのナイフ、実は結構前から何故か持っているものだった
「なぁブルー、ヒトの三大欲望を知っているか。 食欲、睡眠欲、性欲だ」 「…なんか最後のヤツだけ、妙に強調しなかった?」 「気のせいだ」
グリーンが手に持ったナイフの角度を変え、その光沢を滑らせてみる
「オレはもうひとつ、それに加えたい」 「何を?」 「殺欲」
ブルーがナイフを受け取り、自分の手の中でくるくると回した
「何ソレ」 「ヒトが他者を殺したくなる欲望のことだ」 「んなの、あるわけないでしょ」 「なら何故、戦争がある」 「……それもそうね」
ブルーがナイフのさやを取り、刃を納めた
「食欲は他者を殺す。 睡眠欲は己を殺す。 性欲は相手を殺す。 わかるか?」 「何となく。 でも最後のヤツだけ妙に強調しなかった?」 「気のせいだ」
さやに納められたナイフを、グリーンは上から押さえつけた
「他者を食らって、己が生き。 己を眠らせ、危険にさらし。 相手を得て、満足し」 「いやね、それって。 特に最後のヤツ、自分の欲求の為に相手を得るんでしょ」 「そうだ。 そもそも男女の仲は4通りしかない」 「へぇ?」 「男が好きで、女が嫌い。 女が好きで、男が嫌い。 男も女も嫌いか、男も女も好き。
…言われてみれば、確かにその通り
「もっとも、性欲の対象になるのが異性とは限らんがな」 「あー、やだ。 その方向はいや」
ブルーがふくれっつらをする、そんな話は今訊くもんじゃない
「ヒトの三大欲望、つきとめてみたら殺欲につきましたとさ」 「うわ、いやなまとめ方。 もっと頑張りなさいよ」 「何を、オレは殺し方なんて知らないぞ。 食欲の為に、自らすすんで他者を殺したことも。 睡眠欲の所為で、己の命の危険に遭ったことも。 性欲を己の為だけに、満たしたことも」 「…だから、何で最後のヤツだけ妙に強調するのよ」 「気のせいだ」
グリーンがしれっと言う、コノヤロ…あくまでしらをきるつもりだな
「この、ムッツリスケベ」 「……」
結局、この話が再び話題になることはこれ以降…無かったという
こんな日常生活、見たら笑ってやってください どーでもイイことですから、別に んでもって、どーでもイイけど…この短編集もここでおしまい
俊宇 光 |