雪野 凍楼様 グリブル小説「緑と青の交わる場所で」

 

 

〜緑と青の交わる場所で〜

 

 

深く澄み渡った青い空。
どこまでも果てしなく続く空の青。

フワっとそよ風が緑の草原を撫でる。
赤や黄など、色鮮やかな花が咲いている草原の緑。

果てしなく広がる緑と青の交わる海。

俺はこの場所が好きだった。
マサラを見渡せるこの高岳が。

彼女の色が沢山見渡せるこの高岳が…

 

 

 

 

ページを捲る音だけが聞こえる。
今日はジムの仕事が休みなので俺はお気に入りのこの場所で静かに本を読んでいた。
しかし話の内容は頭には入っていかない。

久々の休日。
本当はあのうるさい女をたまには構ってやろうと思い、ブルーの家まで行った。
しかし家には誰も居ないようで、俺は仕方なくこの高岳に来たのだ。

「いつもなら呼んで無くても来るのに……今日に限って……」

俺はこの状況にイライラしている自分に驚き、その思いを振り払うように頭を振った。
なぜ俺があいつの事なんかを考えなくてはいけないのか。
しかも何であいつがいないだけでこんなにイライラしなくてはいけないのか。

「……ちっ」

俺は軽く舌打ちする。
本にはもう集中出来なさそうなので、俺は草原に寝転んだ。
気持ちのいい風が俺の頬を撫でる。
見上げれば彼女の瞳の色。
その吸い込まれそうなほど澄み切った青を眺めていると、さっきのイライラした気持ちは幾分か薄らいだ。

「……勝手な女だ。」

いつもならこんなに静かではないのに。
慣れというのはなんて恐ろしいものなのだろうか。

「……」

そう考えていると、暖かい陽気に誘われて、俺はうとうとし始めた。
そういえば最近仕事ばかりで疲れが溜まっている。
眠気には逆らえず、俺は深い眠りへと落ちていった。

 

 

 

 

「ん……」

何十分、何時間経っただろうか。
起きたと脳では認識しているのに、体が起きようとはしてくれない。
取り敢えず目を開かないで感覚を研ぎ澄ませてみる。
頭辺りに柔らかいものが当たって…

「?!」

俺は目を見開いた。
視線の先にはブルーが居る。
そして頭の下には彼女の膝が…

「なっ……ぶるっ……う……?」

膝枕されている事に気がつき真っ赤になってブルーを怒鳴ろうかと思ったが、それはできなかった。
ブルーの深い瞳はどこか遠くを映していて、それが俺には邪魔してはいけない領域だと咄嗟に悟ったからだ。
しかし一度発した言葉は待ってはくれなく…

「!あら、グリーン。やっと起きたの?」

ブルーの耳に届き、彼女は笑顔でそう俺に言った。
その咄嗟の微笑みがとても儚く脆いものに思えて……
気がついたら俺はブルーを抱きしめていた。

「!グリーン?」

「……」

ブルーが「どうしたのよ急に」と焦って言ったが、俺はそれに答えなかった理由が無ければ抱きついてはいけないのか?
俺はその言葉を飲み込み優しく、そして強くブルーを抱き締めた。

彼女はいつかこの空に溶けて消えてしまうんじゃないだろうか。
遠くを見据えた彼女は、まるで居なくなってしまいそうで。
その見据えた先に行ってしまいそうで……

……あぁ、いつからこんなに女々しくなってしまったんだろう。
ただ、俺はこの場所が好きで。
この空の色がお前の瞳に似ていて。

「……グリーン?」

いつからだろう。
あのどこまでも続く空が欲しいと思ったのは。

いつからだろう。
この草原で寝るのが安心するようになったのは。

いつからだろう。
青と緑の入り混じる海を見てると落ち着くようになったのは。

いつからだろう。
彼女を他人に渡したくないと思ったのは。

「……同じ青でも、俺はお前が欲しい。」

俺の言葉にお前は真っ赤になって。「何言ってるのよ!」と顔を背けた。
確かに、話の流れがおかしいだろう。でもそれでもいい。

「……しばらく膝は借りるぞ。」

そういうと俺はブルーの反論も待たずにまた目を閉じた。

 

 

 

 

深く澄み渡った青い空。
どこまでも果てしなく続く空の青。

フワっとそよ風が緑の草原を撫でる。
赤や黄など、色鮮やかな花が咲いている草原の緑。

果てしなく広がる緑と青の交わる海。

俺はこの場所が好きだった。
マサラを見渡せるこの高岳が。

彼女の色が沢山見渡せるこの高岳が…

 

 

でも、同じ青でも俺はお前の瞳の青の方が良い。
同じ緑でもお前と居れる俺が良い。
青と緑の交わる海よりも、お前と過ごすこの時の方が良い。

だから、そんな遠くを見ないでくれ。

俺はお前を繋ぎ止める言葉を知らない。
お前を安心させる言葉を言えない。
お前を支えるような事が出来ない。

こんなの俺の勝手な言い分かもしれないけど……
俺はお前の傍に居たいから。

 

 

「……っ」

考えていたら恥ずかしくなった。なにを考えているんだ俺は。
顔が熱い。もし赤面しているのならどうかブルーに気が付かれない事を祈るばかりだ。

「(……グリーン、顔真っ赤。何考えてるのかしら。)」

まぁ、こんな事、ブルーが見逃すはず無かったのだが。

晴れ渡る青い空。その青空の下に2人の男女。
声を押し殺して笑っている女に赤面している男。
青い空は全てを見ていた。
微笑ましいものを見るように、ゆっくりとその色を朱に染めながら……

 

 

END。


雪野 凍楼様からいただきました。
うちで小説やら絵やらを募集してるのを見て送ってくださった最初の作品です。いただいたのが3月終わりだったのに、今さら更新で申し訳ないです。
本当に兄さんったら!!って言いたくなるような素敵グリブルに感動しました。しかもマウスで書かれた挿し絵までついて送られてきたときにはもうグリブル萌え度数がいっきにMAX までいかせていただきましたよ!!!本当にありがとうございました!!
次回にはこれのブルー視点バージョンも更新させていただきますのでお楽しみに!!

俊宇 光