Blue wind おくりもの
「はい、これ」
私は自分でラッピングした小さな箱をティト…いちおう私の恋人のティトに渡した。
彼は少し不思議そうな顔をした。さては今日が何の日か忘れているな?こういうの興味なさそうだもんね。
「今日って何の日だっけ?」
思った通りの言葉が出てきた。
「まったく、仮にも彼女持ちなんだからちゃんと覚えときなさいよね」
私は仕方ないなあ、とため息をつく。
「今日はバレンタインでしょうが」
ティトは少し間をおいて、ああ、と納得した。
「これって、お返しとかしなきゃいかんの?」
なーんか嫌な言葉…。返すくらいならいらんってか?
「…べつにいいよ。でもさ、もうすぐ何の日か…覚えてる?」
覚えてないだろうよ、そういう顏してる。
「その日に期待してるから」
何の日かは教えてあげない。彼は本当に思い出せないみたい。ひどいなあ。覚えててよ…。
「じゃあね」
私はくるりと後ろを向いた。彼は黙ってる。相当考えてるらしい。頑張って思い出しなさい。
「あ、チョコ…感想聞かしてね」
「…おぉ」
彼の生返事を背中で聞いて、その場を去った。
次の日、私は彼にチョコの感想を聞いた。
「うまかった」
彼は、そう簡潔に答えた。…それだけ?まあいっか。たぶんまだ思い出してないんだろうな…。あと一週間だよ。2月22日、それが私にとって…良い日なんだけど、ある意味嫌な日。彼が覚えててくれなきゃむなしい。
「…なあ」
ふと彼が声をかけた。
「ん?」
「…いや、やっぱいーや」
「何よー」
きっともうすぐ何の日か、の答えを聞こうとしたんだろうな。本当に覚えてないんだね…。
ちょっと切ない。
「あ、私これから授業だから…」
「おう」
「じゃ…ね」
それから、私は彼に会っていない。
別に、避けてるとかそういうんじゃなくて、ただ会おうとしていないだけ。会おうとしないだけで一週間も会わないなんて…。少し、ティトが遠く感じた。
そして、決戦の日、22日。今日も会わなかったらシャレにならないな、と思いながら廊下を歩いていた。
「あっ…」
少し離れたところにティトを見つけて、思わず声を出す。彼はまだ気付いていない。私はなんだか急に不安になった。ティトは…思い出したのかな。今日がその日だってことわかってるかな…。そんなことを思ってしまって、彼を呼ぶことができない。私は彼の横を素通りしてしまった。
「フィーリー!」
そう呼ぶ声がした。彼の声が…。今…なんて言った?私の名前を呼んだ?滅多に呼んでくれない、私の名前を…。私は胸が熱くなるのを感じた。彼の方を見ることができない。それでも、ゆっくりと振り向く…。
突然、腕を掴まれた。
「!?」
訳のわからないまま、私は彼に引っぱられる。そして、人があまり来ない所に着くと、彼は手を話した。
「ティ…ティト?」
彼は黙っている。…何か真剣な表情?私の鼓動は早かった。
私の額に、彼はキスをした。そして、口脣へ…。
「誕生日…おめでとう」
もしかして…今のがプレゼント?
「これでいーっしょ」
素っ気無く言うけど、少し照れてるみたい…。私は嬉しかったけど…悔しい気もした。お金かかってないなーとかも思ったけど…、これだけで満足する自分が少し悔しい。
「誰に聞いたの…?」
今日が私の誕生日だって、思い出したとは思えない。(失礼)
「エルナ…でしょ」
図星だ。今ちょっと反応したもん。わかりやすい。私は、ティトの胸に顔を埋めた。…あったかい…。
「ありがとう、ティト…。大好きだよ…」
次の日、エルナに会ったからティトに教えたでしょと言ってみた。
「うん…。ごめん、教えちゃまずかった?」
「ううん。ありがと」
「あ、なんか素敵なプレゼントとかあったの?」
「うん、まあ…ね」
2002.2.14. 結城 沙耶
ちわー、沙耶です…。なんだかバレンタインものを書きたくなったので書いてみました。ティトフィーで。設定とかの説明をまったく入れなかったので、わかりにくかったでしょね…。ごめんなさい。とりあえず、図書室(?)にある「Blue
wind」の先のお話です。あれが4、5月で、これが2月なので、もうこの間いろいろ起きまくってます。そんな中ティトには彼女ができちゃったわけです。っつーか彼女はひかりんの希望でできました。私は乗り気じゃなかったです(笑)。今ではこんな話思いつくほど認めちゃってますが。そんなわけです。ってか…ラヴいですね…。はずかすィ。
ちなみに沙耶はバレンタイン全然意識してません。いやいや、好きな人でもいれば話は別ですが…(笑)。何せ私は15日が誕生日なもので、そっちしか頭にないんですよ…。ははは。えーとそんなわけで…、何しろヘボイ沙耶の小説ですが、読んでくれた方、ありがとうございました。よろしかったら感想ください。それでは。
2002.2.14. 結城 沙耶
挿し絵頂きました。少々漫画風になっております。一番ラブイとこを…。ぐふふ(怪)
さぁー行ってみよう!!
|