Twinkle外伝ーラジドラー 夏のバカンスでの恋 2000年7月31日
「やっぱり、好きな人の存在って、大きいんだなー」
ラリスが、ふと言葉を口にした。
「なんだよ、急に」
シオンは、読んでいた本を閉じる。
「なんか、繭ちゃんを見てて、思っちゃってさ…」
「あー」
そう言われて、思い出したような反応をする、シオン。
「存在って、大きいなって」
なにかに、浸るような顔をして言うラリス。
「…おまえは?」
ふと、間を開けて問うシオン。
「え?」
「繭が、クアルの存在を必要とするように、おまえは、俺の存在を必要としてくれるか?」
いきなりマジな顔で聞いてくる。
「な…何をいきなり」
いきなりの質問に戸惑い、目線を反らしてしまう。少し顔が赤くなる。
「…」
シオンは、そこで黙ってしまう。
『どうしよう…本当のこと、言うべきかな?でも、恐くて言えない。だけど、なんかマジそうだし、答えないわけにも…いかないよね?』
心の中で、自分に問う。
「俺は、お前の存在を必要としてる」
シオンは椅子から立ち上がり、ラリスの前にしゃがみ込んだ。(ラリスはベットの上)
「…シ…オン」
ちょっと、顔を赤らめるラリス。
「…どう…して?」
「え?」
「どうして?どうして私なんかの存在なんか必要としてくれるの?私なんか、がさつだし、暴力的だし、自分勝手だし、素直じゃないし、いっつもシオンに迷惑ばっかかけてて、嫌われるようなことばっかりなのに…」
思いつくかぎりの駄目なところを、全部並べて言ってみる。言ってる自分が、悲しくなってくるくらいに…いっぱいある。
「…くっくく」
シオンはいきなり笑い出した。
「シオン?」
不思議そうな顔をして、シオンを見るラリス。
「あ、ごめん。なんかさ…。大丈夫だよ」
そう優しそうに諭し、シオンは、ラリスの頬に手を添えた。
「え?」
「君が思ってる程、俺は迷惑だなんて思ってないし、がさつとも、暴力的とも自分勝手とも、思ってないよ」
にっこり笑って、ゆっくり言う…。
「シオン」
「だいたい、暴力的なのは、弟のクアルに対してだけじゃない?素直じゃないのは知ってる。だから、少しでも素直になってもらえるように、日々努力をしているのだが、努力がたらずってね」
ははっと笑いながら、冗談ぽい顔で言う。
「…ごめんなさい」
少し気にするラリス。結局素直じゃないところは、諦められてるってことだよね?
「あ!
いや、構わないさ。そんなとこも、俺は好きだからね」
かなりさらりと言い切られる。
「…」
どっと真っ赤な顔をしてしまうラリス…。そりゃーそんなことさらりと言われればなー。
「それに俺は、きみがいれば、それでいい。素直じゃなくても、それがラリスなんだからさ」
微笑しながらラリスに言う。ある意味、凄く臭い台詞だが、実は本人結構マジ。
「…」
ラリスはその言葉に反応し、さっきよりも、もっと顔が赤くなる。それと同時に、下を向いてしまった。
「ラリス?」
ちょっと心配になって、話しかける。
「…とに…ほんとにあなたは、私の欲しい言葉を、いつもくれるのね」
今にも泣いてしまいそうな顔で、シオンに言う。その声は、今にもかすれ、消えてしまいそうだった。
「ラリ…ス」
どうしていいか、わからなくなってしまったシオン。
『今なら、言えるかな…。素直な気持ち』
そう、心の中で囁いた。
「ラリス?」
ラリスは、シオンの胸にもたれかける。
「私も…あなたがいてくれるだけでいい」
この時、ラリスは泣いていた。あの滅多に泣かないラリスが。
「ラリ…ス?…珍しいな。そんなに素直になってくれたのは、あの時以来かな?」
泣いているのが分かり、そっとラリスを抱き締めて、思い出したように言った。気分を変えるためか、少しおもしろおかしく言ってみる。
「やだ、そんな昔のはなし」
泣きながら恥ずかしがる。
「はは」
笑ってかわすシオン。
「ごめんなさい、ごめんなさい。素直になれなくて…本当に」
そのままラリスは、シオンの腕の中で泣いていた。いや、ただ流れるままの涙を、シオンが受けとめていただけなのかもしれない…。するとシオンは、
「ラリス、泣かなくていいよ。俺のことなんかで悲しまなくていい。素直じゃなくてもぜんぜん構わないよ。俺は、いつまでも待ってるから。心配しなくていい。嫌いにもならない。逆に、俺が嫌われる方が恐いんだ…」
それが、シオンの本音。そう、いつもシオンは、ラリスに本当の気持ちを伝えてくれる。痛いほど。
「どうしていつも、あなたはストレートに気持ちを表せるの。伝えたいのに、伝えられない、表せない自分が悔しくなる」
一度顔を上げてシオンを見るが、すぐに下を向いてしまう。
「悔しがらなくてもいい。それに、気持ちは今、表せたじゃないか…。俺はそれだけでも、かなり嬉しかったりするんだけどな…」
そう言って微笑した。
「…」
ラリスは黙ってしまう。
「さて、そろそろ部屋に戻らなきゃ」
そう言って、大丈夫そうなところで、ラリスを離す。時刻は、夜の0時をさしていた。
「あ」
何かを言いかけるラリス。
「ん?いなくなるとさみし?」
それに気付き、後ろを振り返って、からかってみたりするシオン。
「なっ!そんなんじゃないもん」
赤面するラリス。それと同時に目線も反らす…。
「はは。じゃーな。おやすみ」
『どうしよう。行っちゃう。今居なくなられたら…やだ』
そう、心の中の自分が叫ぶ。その瞬間、
「待って!」
そう言って、ラリスはベットから立ち上がった。そして、
「!ラリ…ス?」
ラリスは、後ろからシオンに抱き着いた。突然のことに、シオンは理解に苦しむ…。でも、抱き着いたラリス本人も、自分の行動にびっくりしていた。
「…もう…少し…もう少しだけ、側にいて。お願い」
精一杯、シオンに伝えようとするラリス。震えながら口にする言葉は、消えてしまいそうなイメージを沸き立たせ、危なくてしようがない。
「ラリス…」
そうシオンが呟くと、そっと、ラリスの腕をほどいた。
「お前が、眠るまではここにいてやるよ」
そう囁いて、シオンは微笑んだ。
「…ありがとう」
ラリスの目には、さっきの涙が、まだ目に残っていた。その涙は、ラリスの水色の目を透き通らせ、きらきらと輝かせていた。シオンは、そんなラリスの目に、吸い込まれるような感覚を覚えた…。
「ん」
朝、ラリスは目を覚す。どうやらあの後、安心したのか、眠ってしまったらしい。
「あ!おはよ」
シオンの声が聞こえたと思ったら、目の前にシオンの顔が映し出される。
「あ!おっ…おはよう」
ちょっとびっくりするラリス。
「どした?」
不思議そうな顔をして訪ねる。
「ううん。なんでもない」
そう言って起き上がり、シオンを見て微笑んだ。
『また、二人で過ごせる日々が、始まるのね』
そう心の中で思うと、少し嬉しいような、恥ずかしいような、複雑な気持ちになる。でも、その表情はとても幸せそうだった。
「なんだよ、にやにやして」
ちょっと無気味がるシオン。
「べつに」
そう言って立ち上がり、シオンににこっと笑ってみせる。なにか、引っかかっていたものが取れたような、そんな曇りのない笑顔だと、シオンは感じた。
二人で過ごせる日々が、新たに始まる…。
Twinkle外伝ーラジオドラマー 夏のバカンスの恋 Fin
あとがき
いやはや、俊宇っす。裏にアップされました小説にはもう、コメントのしようがありませんね。ただ恥ずかしいばかりですよ。おいらはこんなん大好きさ!!(もうやけ)まぁーこれからこんなん増やしていきたいと思ってます。
この作品は、ラジオドラマの第4話の話の別バージョンです。もし2人がラブラブしてたらっていう話。これはさすがに自分演じれませんからね。まぁー近々第4話がアップされるはずなので、それを見たってください。
そうそう、これは直しをした後の小説なんですよ。これを書いたのが一年も前のことで、ずいぶん作品自体が古く、あまりにもおかしいところを直したんです。もしもとのが見たいていう人は、メールでお問い合わせしていただければ、直してないやつをお送りします。あれはもう公共の場に(すでに公共じゃない)出せる代物にあらず。
まぁーそんなこんななお話です。前の魔物マスターの話と少しテーマは似てますね。
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