It wants to believe you. あなたを信じたい あなただけでも…
これを読む前に、Twinkle外伝−ラジオドラマ− 夏のバカンスでの恋
をお読み頂いた方がいいです。読まなくても平気な人はいいですけど。

 

Twinkle It wants to believe you. あなたを信じたい あなただけでも…

 

 私は、人を信じることができない…。いや、人の信じ方を知らないのかもしれない…。ううん。知らないんじゃない、本当は知ってる。でも、信じるのが、怖いんだ…。
 私には、信じ、信じ続けてみようと、思う時、思うこと…、そういうことを、感じたことがない。本当はあなたを、信じてみたい…。信じてみたいのよ…。

 「…」
私…、ラリス・リンクス。今、弟クアル・リンクスの家に、勝手に住んでいる。弟は、かなりのお金持ちで、この家も8LDKのお屋敷なみ。でも、とうの家の主が、ほとんど帰ってこないので、私が使わせてもらってる。
 今、私は居間のソファーに、クッションを抱えて、考え事をしていた。
「…」
私は数ヶ月前、無事というか、いや案外無事じゃないのかもしれないけど、まぁー彼氏ができました。前々から、彼氏らしきというか、そう思われていた人はいたのだけれど、私がその人を、彼氏と認めてよいものか、躊躇していたため、彼氏と名のつく人はいませんでした。ところが、まぁーいろいろあって、無事その人を彼氏と認めることができました。あの人を信じない私が…。でも、その分悩みを増やしたのも事実。悩みというか、不安。ふと感じてしまう孤独。なんだか、前よりも大きく感じてしまう。なぜか…。
 人は、恋をすると泣き虫になる。そう聞いたことがある。確かに、私もその一人かもしれない。そんなことを、考える時間が多くなった…。
「…」
考え事をしているせいで、私は扉が開いたことに、気づかなかった。
「おーい、ラリス?」
そう、扉から入ってきたのは、私の彼氏、シオン・ルーファス。
「!」
シオンは、私がソファーに座っていることに気づくと、私の前まできてしゃがみ、私に視線を合わす。
「ラリス」
「!?」
シオンが目の前まで来て、初めて気づく私。
「どうした?考え事か?」
「…シオン」
びっくりした顔で、シオンと目をあわす。
「…どうした?」
優しく訪ねてくる。
「…ううん。べつになんでもないの…」
私は首を振って答える。
「…うそつき。なんでもないって顔じゃないぜ?」
「う…」
シオンはすっごくするどい。心理学とかも学んでて、私が考えていること、全部見透かされちゃう。あんまり、私は自分のことを話さないから、こういう人のがいいんだろうけれど。でも、ときに、ちょっと困る。考えてること、分かられちゃうんだもん。
「何を考えてたんだ?」
 私の隣に座る。
「だからなんでもないー」
クッションを抱えてぶーたれる。っていうか、言えるわけがない。あなたのことを考えてた、なんて…。しかも不安に感じてるなんて…。言ったら、どうなるか…。
「ったく」
ふぅーとため息をつき、上を向く。私はそんな彼を、クッションの影ごしに見つめる。
「…」
「ん?」
ふと見つめていることに気づかれる。
「う…」
ぱっと目を反らす。それと同時に顔が赤くなってしまう。
「…」
シオンがこっちを向いてるのが、なんとなく分かる。
「…」
うひゃー…気づかれたかな?どうしよう…。真っ赤な顔をしながら、そんなことを考えていると、シオンが頭に手をのせてくる。
「?」
そして、頭にキスをする。
「ちょっ、シオン?」
おもわず、シオンの方へ顔を向けてしまった。すると、額にキスをされる。
「ん…」
次々に、顔じゅうにキスを落とされていく。まるで、キスの雨のように…。
「ちょ…、シオン、やめて」
私は顔が真っ赤になっていくのが分かる。必死に彼を突き放そうとするのに、力が強くて突き放せない。
「シオン…う」
ただただ、顔じゅうにキスを落とされていく。唇を除いて…。
「ちょっ…お願い、やめて…」
私は必死に抵抗する。でも、抵抗も無駄になり、とうとう、首すじまでシオンの顔が降りてくる。その間、シオンは一言も口にはしなかった。
「やっ…」
次々に首筋に赤い痕を残していく。
「つ」
体中が震える。恐怖と、不安に押しつぶされそうになる。
「い…。シ…シオンお願い、やめて…」
最後は、ほとんど涙目になりながら、訴える形になる。頭の中がぐちゃぐちゃになる。
「…お願い…」
声まで震えてくる。
「…」
それに気づいたのか、シオンはキスをするのをやめた。
「…」
私はそっと目を開ける。
「…でだよ…」
「え?」
はっきりとは聞こえない、シオンの言葉。
「なんでだよ…」
「?」
言葉の意味が分からなかった。
「なんでおまえは…」
その言葉を言い終わるか終わらないかのところで、私にキスをする。今度は唇に。これが、初めての本当のキス。一度もされたことのない、唇へのキス。
「!?」
私が気付く前に、シオンは唇をはなす。その後は、ずっと下を向いてしまい、私には彼の顔が分からない。
「…シオン?」
なんとなく心配になって、名前を呼んでみる。
「…なんで、なんでおまえは、いつも一人で抱え込む?」
そっと顔を上げる。
「なんで、誰にも頼らない?」
私の目を、悲しそうに見つめる。
「なんで何も話してくれないんだよ!!」
そう、私に訴える。私は少しびっくりして、体を堅くしてしまう。こんなにシオンが怒ったのは、あまり見たことがない…。
「これじゃー、俺、どうしたらいいか、分からないじゃないか…」
すごく悲しそうな顔を見せたが、すぐに下を向いてしまった。
「シオン…」
「俺は、おまえが好きなんだ!!おまえじゃなきゃ駄目なんだよ!おまえじゃなきゃ…」
私を掴んでいた手の力が、強くなる。
「でも、俺にはおまえの気持ちは分からないよ…。伝えてくれなきゃ分からないんだ。どんなに分かろうとしたって、本心なんか分からない…分かんないんだよ…」
初めて聞いたシオンの不安。そういう風に、あなたは思っていたのね…。それから、私がある行動に移すのに、しばし時間がかかってしまった。私を好きだと言ってくれた言葉に、浸っていたのかもしれない。
「?」
私は、シオンの顔を、両手で私へと向けさせる。
「ラリス?」
シオンは、今にも泣きそうな顔をしていた…。
「なんて顔してるのよ」
私は苦笑しながら、シオンに言った。
「…」
シオンは何も答えずに目を反らす。顔は私がおさえてるから、目だけが反れる。それに、自分は少し悲しさを感じてしまう。
「ごめんね」
私は一言、そう呟いて、顔をおさえていた手を、そっと離した。その言葉に反応してか、シオンの目が、私をうつしてくれる。
「…あなたのことを、考えていたのよ」
優しく笑って囁く。彼が話してくれたんだもん。私も話さなきゃ駄目よね…。
「…え?」
少しびっくりした表情になる。ほんの一瞬だったけど、私は見逃してないよ。
「…彼氏彼女、っていう関係になってから、考えることが、いっぱい増えた。それと同時に、不安もね…」
苦笑して、シオンを見つめる。
「…」
不思議そうに私を見るシオン。
「昔からの不安が消えないの。どんなに関係に名前がついたって、私があなたを信じることができなきゃ、消えない不安。そう、私はあなたを、信じていないのよ…」
泣きそうなのは私なのかな…。
「…知ってたよ…」
「え?」
シオンの言葉に、本当にびっくりする。知っていた?信じてないことを、知っていたっていうの?
「おまえが俺を、信用してないことぐらい」
少し寂しそうな顔を見せる。
「う…嘘?」
びっくりしたままで、単語しか喋れない。
「嘘じゃない。ずっと見てきたんだ。それぐらいなら分かる…」
苦笑して答えてくれる。ずっと、見ていてくれた…。見守ってくれてたってこと?
「じゃー…どうして…」
どうしてこんな私なんかを…。その言葉は、怖くて飲み込んでしまう。
「言っただろう?俺はおまえが好きなんだ。おまえじゃなきゃ駄目なんだよ」
私が言いたいことが分かったの?なんだか、言いたいことの答えのように聞こえた…。
「シオン…」
さっきも確かに聞いたけど、今考えると、だんだんこっ恥ずかしくなってくる。自然と顔が赤くなってくる。
「いちお、信じて貰えるように、いろいろ努力はしたんだけどな…やっぱ駄目か…」
少し肩を下ろすシオン。落ち込んでるの?
「…ごめんなさい…」
今の自分に言える、精一杯の言葉かな?
「いいさ、ゆっくり待ってるよ。でも、謝らなきゃいけないのは俺の方でもある…」
苦笑しながら、私から目を反らす。
「どうして?」
どうして謝られるのかが、私には分からなかった…。
「…さっきはごめん…。なんだか、焦ってたんだ…。自分の気持ちが、全然伝わってないんじゃないかって。自分は、これからどうするべきなんだろうって…。なんだかいっぱい不安に考えたら…あんなこと…。本当にごめん」
私に頭を下げるシオン。
「いいよ…そんな…」
慌てて答える。なんだか、思い出して赤面してしまう。証拠も、首筋や、肩に残ってる…。
「でも…」
「本当にいいの。もとはといえば、私があなたたを、不安にさせたのがいけないんだもの…」
私も、彼から目を反らしてしまう。そう、私がいけないの。私が本当の気持ちを、彼に伝えないから…。彼を信じることが、できていないから…。でも、今なら言えるかもしれない。ううん。今だからこそ、言わなきゃ言えないのかもしれない。私の、本当の気持ちを…。
「ラリス?」
私は、まっすぐ彼を見つめた…。
「…あなたが…シオンが好き…。シオンがいなきゃ駄目なのは、私の方…」
泣きたくなる…。ううん。もう泣いていたのかもしれない。自分じゃ自覚できなかったけど、自然と頬をつたる涙…。自分で見て、初めて気付く…。私はそこで、顔を手で覆い隠した…。自分が情けない…。なんて弱いんだろうって、自覚してしまう…。こんな自分が嫌になる…。
「ラリス…」
少し、どうしたらいいか、困ってしまうシオン。そう、私は滅多に泣かない。だから、どう接したらいいのか、シオン自身も悩んでいるのだろう…。
「ごめんなさい…。私…」
これ以上は泣き声にかき消される…。
「…」
シオンは、私が言葉を紡ぐのを待つ。…本当は…本当は…
「…本当は、信じたいの…」
「…」
シオンは、静かに私の言葉に、耳を傾ける…。
「本当は、あなたの気持ちを信じたい。誰よりも、あなたを信用したいの…。ずっとそう思ってきた…。でも、怖くて…不安で…。もし、あなたに嫌われ てしまったら、どうしようって、そればっかりで…。この不安だけは、今でも消えないの…」
ずっと、言えなかった本当の気持ち。本当は、毎日不安でたまらない…。
「…馬鹿だな…。嫌いになるわけないだろ…。前にも言ったじゃないか…。俺の方が、嫌われるのが怖いって」
私の頭に、そっと手を置きながら言う。
「だって、人間はいつ心変わりするか、分からないわ…。あなただって、いつかきっと、変わってしまう…」顔を上げられない…。涙が止まらないの…。
「ふぅー。そこまで俺って信用ない?…俺は、おまえが好きなの。この気持ちは、この先死ぬまで変わらないよ…」
すっごく、真剣に言ってくれてるのが分かる…。本当は、その言葉も信用したい…。あなたの気持ちだって信用したい。だって、こんな私を好きだと言ってくれる、その気持ち…すごく嬉しくて、たまらないもの…。
「ごめんなさい…ごめんなさい…」
もう、謝ることしかできない。本当は信じたいのに、不安がそうさせない…。信じる前に、裏切られるんじゃないかっていう、不安が先に来る…。
「泣くな…泣かなくていい」
シオンはそっと、私を抱きしめてくれる…。
「…」
「いいんだよ。ラリスはそのままで」
優しく、耳元で囁く。
「え?」
言葉の意味が理解できなくて、顔をあげる。
「…ゆっくり、ゆっくりでいいんだ。それで構わない。時間をかけて、ゆっくり、俺を信じてくれればいい」
微笑して、ゆっくりと言葉を紡ぐ。その表情はとても穏やかで、私はその空気に、安堵と安らぎを覚える…。
「シオン…」
また泣きそうになる。今度は嬉しくて、だけれど…。
「…そうだなー、信じて貰えるように、俺も努力しないとな」
ふと話を変える。
「え?」
私はその瞬間、零れそうになった涙が止まった。…もしかして、泣きそうになったのに気付いたのかな?
「毎日、愛の言葉を贈るなんてどう?」
私の頬に、手を添えて述べる。でもその言葉は、冗談にも聞こえてならない…。
「なっ、毎日って…。っていうかおい」
おもわずつっこんでしまう。
「はは。だってさ、毎日愛を確認できるようなものが、あればいいかなーって思ったんだけど…」
兄さん、もしかして本気?
「やぁーよ、そんなの…」
「え?」
小声で言った声は、シオンには少ししか届かない…。
「やだ…。だって、言われなくなったら、嫌われたってすぐ分かるもん。そんなのやだ…」
そう、嫌われたっていう、証拠になる。そんなの、辛すぎて耐えていけないもの…。
「は、はは」
シオンが、いきなり笑い出す。
「な…何がおかしいのよ」
赤面して、シオンに言う。
「いや、ごめん。あーあ。そこまで信用されてないんだな…。まぁーここから頑張んなきゃだ」
そう言って、真剣な眼差しを、私に向けた後、そっと頬に手を添えて、キスをする。今回も唇へ。今度は強引じゃなくて、優しく、私を包み込むような、そんなキス。
「…ラリス、愛してる…」
そっと、唇を離した後、私の髪にキスをして、微笑しながら囁く。
「…私も、あなたが、大好きよ…」
自然と出た言葉…。もう、迷わない…。

 私は、人を信じることができなかった…。いや、人の信じ方を知らなかったのかもしれない…。ううん。知らなかったんじゃない、本当は知ってた。でも、信じるのが、怖かったんだ…。

 でも、でもね、私は、どうしてもあなたを信じてみたいの。信じ、信じ続けてみようと、そう、感じたから。だから、今は、あなただけでも、信じていきたい…。

 でも、それは、遠い話じゃ、ないみたい…。

 

Twinkle−It wants to believe you. あなたを信じたい あなただけでも…− Fin

2001年9月19日


あとがき

 やっとこさ終わった。どうも、俊宇 光です。っていうか、時間かかりすぎ。しょっちゅう寝てしまって、結局3日くらいかかりました。でもなんとかできた。現在学校行くちょっと前。遅刻や!!どうしましょう。
 さて、今回、これを書くにあたって、じつはとんでもない理由があります。じつは、夢を見たのです。なんの夢かともうしますと、えー秋葉様に小説を貸してもらうという夢。それとどう関係があるのかというと、まぁー聞いてやってください。夢の中で、秋葉様に小説を借りた光。借りた小説は、なんと1/4がCM。どんな小説!?って感じですね。しかもキャラ紹介まで書いてある始末。ずいぶんと丁寧やなーと思いながら見る私。本当の小説の内容を読めっての。まぁーその絵が、夜麻 みゆき先生の絵に似てました。何故か…。
 まぁーとにかく、そこに書いてあったあらすじの内容が大変。もう、とにかくあまあまの恋愛小説だったわけですよ。どーしましょって感じ。まじで困りました。だって、それを見ての感想は…「読みてーー!!」だったからね。本当に読みたくてしかたがなくて、どうしようかと思い、夢の中で朝を迎えた私は、秋葉様にその小説を持っていないかを聞きます。ところが、「持ってない」の一言。メラショックです。やっぱり「読みてーー!!」と叫ぶと、そこで目が覚めました。おかげで、起きてからの第一声は、「読みてーー!!」でしたけどね。で、この世にないのならば、自分で書いてやる!!てなわけです。
 そして、今回、めでたくこれは漫画化される?こんなラブラブあまあまが漫画になっちゃう?。私死にそう。秋葉様が書くかもって。どうしよう。もう。でも書いて欲しいという願望もあったり。だから必死扱いて今終わらせてるんだ…。まぁー楽しみにしててください。裏へ行きます。
 こんな感じで生まれた作品ですが、あまあま大好きの人にはたまらないと思います。嫌いな方は絶対避けた方が身のためです。ではこのへんでばいなら。

夢の中に書いてあったあらすじ
「悲しそうにする少女に(名前不明)少年(左に同じ)が顔じゅうにキスをおとす…」
このワンフレーズしか覚えてません。うは。

載せて思った感想…なんだこの矛盾にみちた文章は。結局シオンさんは、話してくれないと分からないけれど、今のままのラリスでいてもいいって…。うーむ。
まぁー無理するなって言いたいのよね。きっと。うん。