知ってること、知らないこと
 

 

知ってること、知らないこと

 

「トアっていいよね」
「…は?」
ふとしたことで、一緒になったカフェテラスでの一言。
いきなりの言葉に、俺は間抜けな言葉を返してしまった。
「いいよね」
彼女、フィーリーは、テーブルにうなだれながらそう言った。

そう。ふとしたことで一緒になったのは、ティトの彼女のフィーリー。

「な、何が?」
話の流れがさっぱり読めないんだけど…。
いったい何がいいと言うのだろうか…。

「だってさ、トアはティトのことあらかた知ってるじゃない!」
顔をばっと上げて言われる。
「…あらかたって…」
あえて全部って言わないのは、ティトの性格を知ってるからだろう…。
「いいよね…」
テーブルで組んだ腕に、顔を乗せて言うフィーリー。
「…何かあったの?」
なんだかその表情に、くすりと笑みが浮かぶ。
俺は頬杖をつきながら、そう聞いていた。

「…べつに…。何もないけどさ…」
目線をそらし、そう否定する。

まぁあのティトのことだ。
また何かしでかしたんだろうな。

「じゃあなんで俺がいいの?」
だいぶ冷め切ったカップの中身に、口をつけながら質問する。

「…べつに…本当になんでもないよ…。ただ、ティトのことを知ってるっていうのがうらやましいなって思っただけ…」
そう彼女は顔を上げ、自嘲的な笑みを浮かべていた。

…あいつ、自分のことなんか話さないからな…。
10年一緒にいる俺だって、分からないことが多すぎる…。
なのに、1年も一緒にいないフィーリーには、彼のことは皆無だろうな…。

それが…不安…なのかな…。

「フィーリー…?」
何か慰めの言葉でもかけようと、彼女の名前を呼ぶが、それは彼女の後ろから現れた人物たちによって、やめるざるおえなくなる。
「何?」
彼女は俺を見るが、俺は彼女の後ろを見ていたため、彼女も恐る恐る自分の後ろを振り返った。

 

 

「…ティト…」
彼女はびっくりしたように、後ろにいた人物を名を口にした。
「珍しいね、エルナ。ティトと一緒にいるなんて」
俺は笑顔で、彼と一緒にいた自分の彼女、エルナに話しかけた。
「そこで会ったんだ」
彼女はにっこり笑って答えてくれる。
「おまえらが一緒にいるのも珍しいじゃん」
ティトがそこで、はじめて口を開いた。
いつもの無表情に比べて、いささかむっとした表情な気がするのは、気のせいだろうか…。
「俺もたまたま一緒しただけだよ。なぁフィーリー」
俺は笑顔でそう彼女に振った。
「え!?あ、うんそうだよ。何?ティト妬いてるの?」
彼女はいきなり振られたことにびっくりしていたが、いつもの調子に戻し、彼にそんな言葉を投げかけていた。
まるで、さっきまでの表情がうそのように。
「なんで俺が妬くんだよ」
彼はむっとした表情で、彼女を見る。
「じゃあなんですねてんのよ?」
少し歩き出したティトの顔をのぞきながら、フィーリーが問う。
「べつにすねてない」
表情や口調からするに、すねてるというより、いつもどおりととれるんだけど…。
でも、
「ティトってさ、すねてると無表情が怒ったような表情するよね」
そう彼女が呟いた…。
「…」
彼は驚いたように彼女を見る。
すると彼女は少し口元に笑みを浮かべ、
「…ティトの馬鹿、鈍感」
ティトの胸ぐらをつかみ、そのままキスをした。
「「わっ!?」」
俺とエルナは、同時に顔を赤くする。
おまえらここ、カフェテラスだって知っててやってるか?

「ば〜か」
そう言うと、彼女は先に歩いて行ってしまった。

「ねぇトア、フィーリーと何話してたの?」
エルナが首をかしげて聞いてくる。
「いや、何の話もしてないよ。一緒にお茶飲んでただけ」
俺はそう、彼女に笑顔で答えた。

だって、話していた内容は、無意味な内容になったから…。

フィーリーの前でのティトの表情は、俺が知ってるものじゃない。
たしかに俺は、昔のあいつはいろいろ知ってるけど、今のあいつは、君が一番知ってるよ。

俺は、フィーリーの後姿と、ティトの後姿を見て、ふっと微笑んだ…。

「え〜何?なんなの?」
エルナは不思議そうな顔でそう言う。
そんなエルナを、笑顔で頭を撫でた。

そんな、昼下がりのカフェテラス。

 

2003年5月8日&6月5日 Fin


あとがき

ってわけで、なんだかこうティトフィーがあまりにも本編で進みませんので、番外編みたいな感じで漫画で見たいなという意味を含めて小説を仕上げてものです。で、そのまま沙耶ちゃんには漫画にしていただきました。もちろんそれを見れるのは私だけの特権ってね(おい)あははは。まぁ最初これ直さずに沙耶ちゃんに送ってしまったので、自分であとから読み返して変な話〜とか思ってました(おい)まぁ今回ちょこちょこ直しはしたものの、どうなんでしょうかね。あまり根本的には変わってないみたいですね(汗)あははは。まぁそんなことはさておいて、とりあえずできあがってほっといたしたしだいです。
この話がなぜ浮かんだのか。それは、無限なる夢の美術館の方に沙耶ちゃんが書いた胸ぐらキスがあったからですね。あれで妙に感化されました。トア視点なのはやはり腐っても主人公ってところでしょうかね(汗)まぁそんなこんなでできあがった作品です。少しでもトアエルもいけるようにしたつもりだが、さりげなさすぎですね(汗)まぁ沙耶ちゃんはトアが「今のティトは君が一番知ってるよ」という台詞に感動したんだとか。ようございました(は?)まぁこの二人はすっごく好きです。幸せになってくれるといいな〜気分。うふ。