淋しさ…
 

 

Twinkleより         淋しさ…       2002年4月4日、5日

 

風邪をひきました…。
滅多に風邪というか病気をしない私が…。でもそういう人にかぎって、かかると結構辛いわけで…。

「はぁー関節痛い…」
私はベットにごろごろと寝っ転がりながら言い出す。
私はラリス・リンクス。弟のクアル・リンクスの家で管理人中。そんな中、風邪を引いてしまった…。

1人の時に、風邪を引くと、淋しいって本当ね…。

「しかも暇ーーーー」
誰もいないし、関節痛くて動けないし…。
おかげで朝から何も食べてない。べつにお腹空いてないけど…。

朝起きたらこの状態。頭は痛いわ熱っぽいわで、体温はかったら39度2分。今は38度に下がったけど、それでもつらいのは変わらない…。
暇だからって誰かを呼ぶわけにもいかないし…。
うつしたらかなりの迷惑よね…。

「はぁー」
溜め息しか出ない。私はごろんと寝返りを打った…。

静かな時が流れる…。
聞こえるのは秒針と、外を吹く風の音…。

「…」
私は思わず携帯を手にしてしまう。

電話する相手は…彼氏?のシオン・ルーファス…。
あいつは医者だから、呼び出しても不自然ではないのだけれど…。

…携帯をいじる手が止まる…。
リダイアルの画面まで来て、私は電源を切ってしまった。

なんだか、呼び出すのに抵抗を感じる…。
きっと仕事中だろうし(滅多に人来ないけど)…迷惑かかるからやめた。

私は頭から布団をかぶり、そのまま気を失うように深い眠りへと沈んでいった。

 

「エレウィンちゃん、こっちで遊ぼう」

どこ…ここ…。

「エレウィンちゃん、こっちおいでよ…」

エレ…ウィン…?
エレ…姉?

「クアル、今日は何して遊ぼうか」
「エレ姉!勇者ごっこしようぜ!エレ姉はお姫様だぞ。俺が勇者だ!!エレ姉は俺が守る!!」
「まぁー頼もしい勇者さんね」

これは…過去の…記憶…。

柱の影から…見ていただけの…私の記憶…。

今、目の前に繰り広げられているのは、私が入り込めなかった世界…。
入れて貰えなかった世界…。

「あ!ラリスちゃん、ラリスちゃんも一緒にどう?」
エレ姉が私に気付いて、にっこりと笑って言い出す。
「!?」
私はびっくりして後ずさる。
「えーラリスも?」
「俺ラリス姉と遊ぶのやだ」
まわりの子達が避難の声をあげる。
クアルも、かなり嫌そうに言い出した。
「そう言わないで、みんなで一緒に遊びましょう」
ふんわり、まわりを包み込むような笑顔をみんなに向ける。

この笑顔が嫌い…。
あの時の私には、死んでもできるような笑顔じゃなかったから…。
なんだか、自分は余裕なんだって言われてる気がした…。

「ちぇー。エレ姉が言うなら…。そうだなー魔王役ならラリス姉にぴったりなんじゃねーの?」
クアルの提案に、まわりがあははと笑い出す。

やめて…。
思い出したくない…。
あの時のことなんか…。
やめて…。

「べつにいいよ。あんた達みたいに暇じゃないから」
そう、冷めた口調で言い残して、その場を去った。

「何あれーせっかくエレウィンちゃんが遊んであげるって言ったのにね?」
「いいんじゃね?いたって邪魔だろ?」
「あははそれもそっかー」

遠くから聞こえる悪口…。

昔から、人と付き合うのが苦手だった…。
いつも、エレ姉と比べられてばかりで…。
どこへ行ったって、エレ姉が、エレ姉はって…そればっかり。

誰も、私を見てくれない…。

気付かないうちに、私は元の姿に戻り、暗闇を走っていた。

「はぁー、はぁー」
私はいったんその場に立ち止まり、肩で息をする。私はそのままそこに座り込んだ。

何故、いきなりこんな夢を…。
そういえば、あの後、私はセラフィム兄のとこへ行ったんだっけ…。

セラフィム兄だけだった…。私を私として見てくれたのは…。
セラフィム兄だけが、私の支えだった…。

なのに…

「どうして…いなくなっちゃったの?」

私は膝を抱えて、膝に顔を埋めた。

淋しい…。

ここには私1人しかいない…。
…ここにはじゃない…。

ここでも私は1人なんだ…。

誰にも必要とされない…。
誰からも認められない…。

私は…誰?

 

「ラリス」

 

…声?

 

「ラリス」

 

…この声は…

 

「ラリス!」

 

シ…オン…。

 

 

「ラリス!!」
「…」
私は、そっと目を開けた…。
目の前には、シオンの顔。

どうしてシオンがここにいるの?

…そういえば…さっきのって…もしかして…夢?

「きゃっ!?」

私はいきなり抱きしめられる…。

「ちょ!?シオン?」
いきなりのことにかなり焦る。
なんでいきなり抱きしめられてるの?

「…良かった…。来たら寝てるし。どうしたのか思ったら熱あるから…」
彼はぎゅっと私を抱きしめたままそう言い出した。

…心配…して…くれたの?

「シオン?」
それにしても、いつもとなんか違くない?
私は疑問に思って、不思議そうな声を上げてみる。
「目、覚まさないかと思った…」
彼は苦しそうにそれだけ言うと、私を抱きしめていた力を強める。
「シオン…苦しい…あうーー」
そんなに力を込めないで…。
「あ…ごめん」
抱きしめてる力は緩めてくれるけれど、抱きしめる事態はやめてくれない…。

「…目覚まさないわけないじゃない?…ただの風邪だよ?」
私はふと言葉を口にする。
「風邪だからって、死ぬ場合だってあるんだぞ」
「そんな大げさな…」
そうよ。こんなぐらいで死んだら嫌よ…。

あーでも…死んでも変わらないかな…。

自然と、自嘲的な笑みを浮かべてしまう。

「だいぶ熱が高いな…。心拍も早い」
そう言いながら、やっと私の体を離してくれた。
ってかあんた…
「抱きしめて熱と心拍測るな…」
そうよ。あんた何考えてんのよ。
「聴診器で測ってもいいんだけどさー、たぶん俺の理性が飛ぶかなーなんて」
なんて笑いながら言いやがったこいつ。
それでも医者か!!
「なっ!?ふざけないで!」
私は手元にあった枕を投げようとする。すると…
「ほら、病人はおとなしくしてろ」
そう言って私の腕を掴む。
「おとなしくさせてないのはどっちよ…」
むー。簡単に腕を掴まれてしまったことがなんだか悔しい。
それだけ弱ってるのかな…。

私はぽすんと音をたてて、ベットに寝っ転がった。

「いつから風邪っぽかったんだ?」
彼がいきなり聞き始める。
「朝方から頭がぐらぐらしてた。さっき測った熱だと38度ちょい。それからずっと寝てた」
私はそれを淡々と答えていく。会話をしてるのつらいから…。
「そうか。何か食べたか?気分は?ほかにどっか痛いとことかあるか?」
かれも淡々と喋り始める。私が辛いことに気付いたのだろけれど…
「そんないっきに聞かれても…」
そうよ、答えられないわよ。
「ふぅー。食べ物は朝から何も食べてないわ。気分は悪くないけど、関節痛い…」
答えられないとか思いつつ、答えてみたり…。
「大丈夫か?あ!口開けて」
そう言って鞄から銀のへらを出す。
「あー」
私は大きく口を開けた。
「真っ赤…。完璧風邪だな。連絡くれれば良かったのに…」
心配そうな顔をしながら物をしまうシオン。
「いや…、仕事の邪魔しちゃいけないと思ったかし…。病院に行こうかなーって思ったんだけど、体動かなくて…」
あははと苦笑しながら言った。
「はぁー。病人が人に気を使うな」
ため息をつきながら私の額をはたく。
「あいた!うう…」
額を抑えながら唸る…。
ぶつことないじゃないのよ。
「とりあえず薬飲まないと…。っていうかその前になんか食わねーとか…」
考えながら言うシオン。そしておもむろに立ち上がった。
「あーべつにお腹空いてないけど…」
あんま食べたくないなー。
「駄目だ。薬飲むのに、なんか胃に入れとかなきゃだから…」
そう言い切る。
「…分かった…」
渋々納得。あんま食べたくないんだけど…。吐くほどじゃないからいいか…。
「じゃー、なんか作ってくる…。勝手に台所借りるぞ?」
いつも勝手に使ってるじゃない…。
「どうぞ」
それだけ答えると、彼は部屋を出ていった…。

あーあ。駄目ね…。
いなくなっただけで淋しい気持ちがこみあげてくる…。
相当弱ってるわ…。

 

それから30分くらいして、簡単に作った食事を運んできてくれた。
つってもお粥だけど…。あいかわらず料理上手いし…。

「ごちそうさまでした」
そう言って、お皿の上にスプーンを置いた。
「はい、薬。とりあえず、解熱剤と抗生物質」
そう言って、私に薬を渡す。
「ありがとう」
そう答えて、一緒に渡された水で薬を飲んだ…。
「あとは、安静にして寝てれば治るよ。とりあえず、3日分薬は出しとくから、それを明日持ってくるよ」
そう言って、鞄を閉めた。いつも風邪薬とかを持ち歩いているのかしら…。
「うん。ありがとう。もう、今日は帰っていいよ。うつすと悪いし…」
にっこり笑って言う。
「いいよ。今日はここにいる」
言い切ったわね…。
「悪いよ…。明日だって仕事あるんでしょう。医者が風邪なんかひいちゃだめだよ。私は大丈夫だから心配しないで。ねっ」

本当は傍にいて欲しいのに…。
1人にしないで…。

さっきの夢を思い出す…。
1人になるのが怖い…。

でも、そんなの私の我が儘だから…。

「心配だ。病人をほっとけるか。おまえがなんと言おうと今日はおまえの傍にいる」
そう言って椅子に座りだす。
「…シオン…。大丈夫だってのにー…」
口ではこう言ってても本当はすっごく嬉しいの…。
傍にいてくれると、そう言ってくれたことが…すごく嬉しくて…。

泣きそうだった…。

「病人が大丈夫なもんか…」
冷静な突っ込み…。
でも、本当に心配してくれてるのね…。
もしかすると、あなたのことだから、淋しいって感じている私の心に気付いているのかもね…。
「あはは」
私は空笑いをする。そして…
「ごめんなさい…ありがとう…」
聞こえるか聞こえないくらいの声。
せめてもの…素直な心…。

「ゆっくり休め…ずっと、傍にいるから…」
そう言って、私の手を握りしめてくれた…。

すぅーっと意識が遠くなる気がした…。
こんなに安心したのは、何年ぶりだろう…。

ごめんね…シオン…。ありがとう…。

本当にあなたは、いつも私の欲しい言葉をくれるよね…。

本当に…ありがとう…。

 

「ん…」
私は目を覚ます。朝の光が眩しい…。
「大丈夫か?」
ふと横から声がする。
「…シオン」
そう、横にいたのはシオン…。

本当に、ずっと傍にいてくれたの…?

手は握られたままだった。
昨日から、ずっと繋いでくれていたのだろうか…。

「熱はだいぶ下がったな…」
彼が私の首筋に手を当ててそう言う。
あう…少しくすぐったい…。
「ずっと…傍に…いてくれたの?」

「そう言っただろう?」
彼は微笑して答えてくれた…。

 

ずっと、1人だと思ってた…。

どこにいっても1人で…。

誰にも必要とされない…。
誰からも認められない…。

そう、思ってた…。

 

淋しかったの…。

ずっと…ずっと…。

でも、今は…あなたが…傍にいてくれる…。

 

ありがとう…。

 

 

Fin


あとがき

どうも、俊宇 光です。なんだか突発的に考えた話なんでわけわかりませんが、なんとか完成。本当は昔書いた風邪の話を掘り起こして変えようと思ったのに、あまりの駄文さに自分で撃沈。おかげで1から書く派目になったら全然違う作品になってしまいました。少しだけ前の文章も使ってますが、話の流れじたいが違ってます。本当は過去の話なんかなかったのに、なぜだかいつのまにかそっちがメインに…。題名がいけないんだい!!あああ。
過去話、いつかは出そうと思ってたのですが、まさかこんなにも早く出す羽目になるとは。うむうむ。まぁーこれが彼女が辿って来た過去の一部です。エレウィンさん初登場。私この人嫌いなの。っていうかラリスは私がモデルだから自然に嫌いになってしまうって言うか…。いや、本当はいい人なんですよ?エレウィンさんは。ただ、その優しさが逆に腹立たしいっていうかね…。誰のせいだと思ってんのよー。みたいな…ね?まぁー私はあーいう人嫌いなんで、かなり微妙かな?また蒼夜くんに怒られちゃうわね。先入観は捨てなさい!!って。あはは。
今回クアルミニ版が出てます。まぁーあいつの場合は小生意気なガキンチョ程度に思ってくださればいいかしらね?私クアルは嫌いじゃないですよ?結構かっこよく書ければなーって毎回思案してますし。なんていったて繭ちゃんのお相手さんですからね。ただクアルはかなりラリスさんにいじめられてましたから、嫌っていうか、嫌いになってるっていうか…。まぁーそれは現在も同じで、ただ血の流れだけで一緒にいるっていうか?彼は相当ラリスさんを嫌悪してることでしょう。でもま、兄弟としての絆はいろいろね。
じつはこれ自分が風邪をひいたからラリスさんに引いてもらってシオンさんに心配してもらおうって感じだったのですが、なぜだか過去から救い出してもらう話になってしまいましたね。あれ?どこをどうなってそうなってしまったんでしょう。まぁー今の私の心境がかなりどす黒くじめじめしたものだからかもしれませんね。
このお話は私の相談にのってくれた陣火さんへのお礼もかねてます。(作品内容が)彼にはまじで感謝してますよ。サンキュー。さっきまで電話でお話聞いてもらってました。早く寝ろって言われたのに寝てないですね。ごめんなさい。いいのよ!!お肌に悪いって言うけど、綺麗な肌じゃないからー。これ以上汚くなりようがないわよ!!気にすんなー!あはは。まぁーそんな感じなお話だったわけですよ。久々なシオン×ラリスでしたね。まじで久々だ。っていうかオリジが久々。ずっとドリームでしたからね。たまにはオリジもいいもんだ…。いちお今回は、久々なシオン×ラリス、風邪を引いた経験をここに話にしたり。そして、陣火様への感謝を込めて。を1つにまとめた作品でした。
ここまで呼んでくださいましてありがとうございました。なんだかあとがきがやたら長くてすみません。スペースの関係上どうしても…。いやまじでここまで呼んでくれたら感謝感激です。ではまた次回どこかで…。次はドリーム?                      2002年4月5日     俊宇 光