Twinkleより ―大切にしたいこと― 2001年10月29、30、31日
ずっと、一緒にいた人が、突然いなくなるっていうのは、凄く寂しいと感じてしまう。
よく、大切な人ほど、失ってみなければ分からない、なんて言う。でも、確かにそうかもしれない…。
私は…私はあなたに会わなくなって、初めて気付いたの…。あなたの大切さを…。いかに、私の側にいるのがあたりまえで、もう、いなくてはいけない存在になってしまったと…。
「ただいまー」
バタンっと思いっ切りドアを開ける、弟クアル・リンクス。
「…おかえり。もう少し静かに開けなさいよ…」
私、クアルの姉のラリス・リンクスが、呆れながら言った。
「いーじゃん。自分の家でどーしようとさ」
そう、ここはクアルの家。私はここの居候兼管理人みたいな者。だってクアルは、月に一度帰ってくればいい方なんだもの…。
「そーだけどさ」
もう呆れてしまうばかり。
「あれ?シオンは?」
ふと、辺りを見渡して聞いてくる。シオンというのは、本名シオン・ルーファス。私の彼氏のようでそうでない人。なんていうか、友達以上、恋人未満な関係の人。
「来てないわよ」
「うへーめっずらしー。毎日のように来てそうな勢いだったのに」
なんだかすっごくびっくりしてるみたい。
「あの人も、毎日暇ではないのでしょ?」
素っ気なく返す。そう、確かに彼は、毎日のようにうちに来ていた。でもここ一週間近く、彼に会っていない。
「まぁー、姉さん相手に、そんなに時間なんか割いてらんねーよな…。とうとう捨てられたか?」
ははっと笑いながらからかってくる。
「…」
私は作業していた手を、思わず止めてしまう…。冗談で言ってるっていうのは分かるのだけれど…でも…。
「…姉さん…?」
無言になった私を不思議に思ってか、声を描かけてくる。
「…そうね、捨てられちゃったかも。っていうか、ここまで長続きしたのが不思議なくらいでしょう?」
私はクアルに、顔を見られないようにきびすを返し、その場を離れようとする。
「…あ」
かける言葉も見つからないのか、そのまま後ろ姿を見送るクアル。
「…っていうか、私なんか最初っから相手にされてないっしょ」
くすっと笑うように、クアルへと振り返る。
「…いや、でも」
何か言いたげな顔をするが、それ以上は何も言ってこなかった。
「あんたが一番良く知ってるでしょう?この私に彼氏なんてできるわけないじゃない」
笑顔を絶やさずに話をする。
「…そ、そーだよなー。ははは」
クアルも笑って返す。
「ところで、今日はあんた、何時までここにいるの?」
話題をいきなり変えてみる。
「いや、荷物を少し取りに来ただけだから、夕方には向こうに戻るよ」
クアルは、組織の寮暮らしなの。(なら家を建てるなよ…)
「…そう、繭ちゃんによろしくね」
私はそう言い残して、居間を後にした。繭ちゃんっていうのは、クアルの彼女のようなそうでない人。
「…姉さん…変に悩んでなきゃいーけど…。まぁー俺には関係ねーからいーや」
素っ気なく言うと、クアルも居間を立ち去り、自分の部屋へと向かっていった。
私は、部屋の扉を重々しく閉めた。
「…捨てられた…か」
扉を背にして座り込みながら、そう呟く。
「…否定できないってのが、むなしいよなーはは」
顔を片腕で押さえながら、そんなことを言ってみた…。
「…あれ…?」
ふと、頬を伝う涙。
「…なみ…だ…なの?」
目から零れ落ちてくる雫に、涙と名前を付けるのに戸惑ってしまう。認めたくない…。彼のことでこんな…泣いてしまうだなんて…。
「…いつのまにか…、いるのが当たり前になっちゃったんだね…」
涙は止めどなく流れてくる。ここ一週間、考えなかったわけじゃない…。ただ、捨てられたっていう言葉まで、怖くて考えられなかっただけ…。クアルに言われて、初めて自覚してしまう…。
「シオン…」
ここまで彼は、私の気付かないうちに、私自身の中で、大きくなっていたんだね…。
「…えーーーい!!来ないならこっちから行ってやる!!」
涙を拭って立ち上がり、大声で言い出す。そしてドアを開けて部屋から出た。
「おわ!?…ねっ…姉さん?」
出た瞬間クアルと出くわす。
「ちょっと出かけてくる。戸締まりよろしくね。鍵はいつもんとこだからねー」
そう言いながら階段を下りていった。
「…なんだ?っていうか姉さんが出かけるなんてめっずらしー」
そうクアルは不思議そうな顔をして言った。そうね、私家から滅多に出ないし…。
「はぁー、はぁー」
こんなに走ったのなんて、すっごく久しぶり。体力ないよなー。やば…。
「はぁー。そういえば、ここに来るの初めてだっけ…」
そう、いつも来てもらってばっかりだったから。私は初めて、彼の家を訪れる…。なんで知ってるかって?まぁー教えてはもらってはいたんだけど…。来たのは今回が初めて…。彼の家は、こぢんまりとした診療所。彼はお医者さんなの。ここは、私の居る街から、隣町へ行く途中。彼はかなり中途半端な所に住んでいる。でも私も、街外れに住んでるから、中途半端といえばそうかな。
「本当にあってるよね?」
今更だけど、不安になってみたり。
「…」
私はドアノブに手をかけようとして、あることに気付いてしまった。
「そういえば…もし本当に会いたくなくて、来なかったとしたなら…どうしよう…」
本当に、今更気付いてしまう。おかげで、不安で扉が開けられなくなってしまった。
「…でも、会うだけなら…いいよね」
そう自分に言い聞かせるように、そっと扉を開けた。
「…お邪魔しまーす」
いちお診療所なので、勝手にお邪魔します。
「…」
しーんとしてる。誰もいないみたい…。私は安堵の気持ちに包まれる。それにしても、診療所に人が誰もいないなんて、平和というか。なんというか…。
「…シオン?」
いちお鍵が開いていたから、家の中にはいると思うんだけど。
「…中ってこうなってるんだ」
診療所らしきところから、普通の家らしき所に入る。
「…平屋なのね…」
うろうろしながら、辺りを見渡す。
「…シオーン?」
名前を呼んでみる。当然返事がないのだけれど。
「…あ!」
発見。一番奥の部屋の、ソファーの上に寝っ転がっていた。
「…この部屋は…」
この部屋にあるのは、本が大量に入った本棚と、パソコンと、それが乗っている机と、今シオンが寝てるソファーだけ。でも机の3分の2は本で埋まっている。部屋のほとんども本ばかり。
「シオンって読書好きなのかな?…医学書?」
そう、この中のほとんどの本は、医学に関する本ばかり。それ以外は、機械やパソコン雑誌ばかり。
「趣味の巣窟ね」
足の踏み場もないような所に、隙間を見つけては、部屋の奥へと進んでいく。いちお、窓から漏れる光で、地面は見えている。
「…シオン?」
そぉーっと、シオンの頬に触れてみる。起きる気配はどうやらないみたい。残念なような、良かったような、そんな複雑な気持ちに苛まれる。
「よっぽど疲れてるのかな?」
そんなことを言いながら、ちょっと見つめてみたり。まじまじと顔なんて見たことないし。それにもう…これ以上、あなたといることが、許されないかもしれないから…。見納めにね…。
「…」
また泣きそうになる。私はそんな気持ちを必死にこらえようとした。
「…!」
私は机に目をやって、あることに気付く。
「…レポート?」
何か、レポートのような物を、机の上で発見する。それには、医学に対することが、事細かにまとめられていた。
「…むー」
私にはよく分からないけれど、どーやらこれで徹夜をしたらしい。パソコンの画面に、*アフターダーク(*パソコンを一定時間操作しないと、動き出すプログラムのこと)が出ているところを見ると、終わった後パソコンをつけっぱなしで寝てしまったと見える。(実はパソコンに詳しいラリス)
「もしかして…ここ1週間来なかったのは…これのため?」
机にレポートを戻しながら、シオンの方を向く。
「…」
ちょっとほっとする。でもあんまり安心できないのは、私がそうであって欲しいと、願っているだけだからだろうか…。
「…まともに御飯食べた?」
苦笑した後、答えの返ってこない、そんな問いをかける。
「…」
少し痩せたように見えるのは、気のせいなの?そんなことを思いながら、毛布をかける。
「…まだ、起きないよね?」
そう確認するために、もう一度頬に手を添える。
「…」
やっぱり起きない。
「よし。がらにもないこと、してみようかな」
そう言いながら立ち上がり、台所を探し始める。そう、がらにもなく料理でも作ってあげようと思ったのだ。さすがに洗濯やら掃除まではしてあげないけど、(自分が嫌いだから)あの人のために、料理くらいならできるから。
「うわー」
ちょっとびっくり。迷って探した台所は、案外綺麗で驚きを隠せない。
「すっごく汚いと思ったのに」
なにげに失礼なことを言ってみたり。だって徹夜の後って汚いと思ったし。はっ!?もしや食べてないの?
「まぁーいっか」
そう言って腕まくりをして、料理の作業に移る。
「…えーと…じゃが芋に、人参にー…えーと玉葱と…お肉と…」
冷蔵庫の中をあさりだす。一人暮らしのため、そんなに食材はないけれど、いちお一通りの物はあるみたい。でも…
「なにこれ」
芽の生えまくったじゃが芋に、球根のようになっている玉葱。
「…いったい何時買ったんだろう」
いちお使えなくなさげなので、使うけどね。何を作るかというと、シチュー。今は10月。結構肌寒い時期。暖かい物の方が良いと思って。まぁーあとは、御飯炊いて、サラダでも作るかな…。
それから3時間くらい、食べて貰えるかさえも分からないのに、ずっと料理を作っていた。今日中に起きてこないかもしれないのに…。ただ料理だけをしていたのだ。そう、何も考えないようにするために…。
…誰かのために作るなんて、何年ぶりだろう…。最後に作ったのは、クアルが家を出ていく前の、誕生日の時か…。ずいぶんと…前だなー。そんなことを考えながら、しみじみしてしまう。
「…ん」
シオンが目を覚ます。
「…もう18時か…」
近くにあった時計を見て、時間を確認する。
「…あれ?俺、毛布なんかかけて寝たっけ…」
かけてあった毛布を、不思議そうに見つめて言う。
「まぁーいっか」
そう言いながらソファーから降りる。
「あれ?…なんかすっげーいい匂い…」
そう、もうここまで匂いが届くほど、料理は出来上がっていた。
「…なんでだろう?俺まだ夢ん中なのかな…」
そう寝ぼけて言いながら、本で転ばないよう気をつけて部屋を出る。
「台所から…か…?」
匂いだけを頼りに進む。(犬かおまえは…)
「…」
その頃私は、ただ無言でてきぱきと料理をこなしていた。そんなしーんとした空気に、炊飯器から電子音が鳴り響く。
「あ!炊けた…」
そう言いながら炊飯器のボタンを押す。その時、
「…ラリス…なのか?」
入り口の方から、シオンの声がした。私は思わず、喜んで振り返ってしまう。だって起きてくれるかどうかも不安だったし。
「…あ!おはよう、シオン。ってもうこんばんわかな?」
ふふっと笑いながら言うと、すぐに目線を反らしてしまう。だって、ずっと見てたら、泣きたくなってきちゃうんだもん。
「…あ…。どうして…」
シオンは、驚きを隠せないほどびっくりしていた。
「もうすぐ御飯できるから、顔でも洗ってくれば?凄い顔してるよ」
くすっと笑いながら話題を反らす。だってなんて答えていいか分からないから…。
「げっ!?まじかよ」
慌てて洗面所へと走っていくシオン。実は嘘だけど…。
「…ほっ」
思わず安堵の声を漏らしてしまう。だって、どうしてって聞かれて、答えられるわけないじゃない…。会いたかった…なんて…。
「げっ!?まじすっげー顔…」
シオンは鏡をみてびっくりする。いや、だから嘘だってのに。
「はぁー。それにしても…なんでラリスが…」
不思議そうな顔を、鏡に映す。
「…まさか…会いに来てくれた…なんて都合のいいこと、あるわけないか…」
頭をがしがし掻き、顔を洗い出す。そして、洗面所を後にする。
「…」
料理をしている私の後ろ姿を、静かに見つめるシオン。
「…!シオン?」
その視線に気付いてか、くるっと後ろを振り返って、料理のお皿を運び出す。
「あ…」
「どうしたの?そんなとこに突っ立って。座れば?」
くすくす笑いながら、テーブルに料理を並べていく。やっぱり目は合わせられないけど。
「あ…うん」
そう答えると、おずおずと席に座る。
「…」
私は料理を運び終え、台所の片付けをしていく。
「…なんか…そうしてるとさ、新妻みてーだよな…」
頬杖をつき、微笑しながらからかってくる。
「なっ!?…シオン…」
私は赤面して言い返す。
「はは、食べていい?」
じつは、食事を目の前にして、お預け状態だったりする…。
「あー…うん。口に合うかどうか、分からないけど…」
苦笑して答える。
「おまえが作ったもんなら、口に合うに決まってんじゃん」
スプーンを取り出して食べようとする。
「もう、からかわないで」
ぶーたれながら、反対側の席に座った。(いちお二人席)
「はは。べつにからかってるわけじゃないんだけど…」
そんなことを言いながら、スプーンを口へと運んだ。
「…」
私はどきどきしながらシオンを見つめる。
「ん…」
口にした途端、一瞬止まるシオン…。やっぱ駄目?
「…う…うまい…」
「へ?」
ちょっとびっくり。そんな言葉、返ってくるとは思ってなかったから…。だって食べてくれるかさえも、微妙だったし。
「まじうめぇーよこれ」
めちゃくちゃ喜びながら食べ出す。本当においしそうに食べてくれる。その様子が、あまりにも嬉しくて…思わず笑みを零してしまう。
「あー、なんか久しぶりにまともな食事食った気がするよー…まじうめー」
なんか泣き出しそうな勢い。本当に食べてなかったのか!?
「…良かった…口に合ったみたいで…。ごめんね、勝手に台所使っちゃって…」
今さらながら謝ってみたり。
「あー、いいよべつに。こんなうまいもん食えるんなら、好きに使ってくれて構わないよ。いや、別にそれ以外でも…んぐ…使ってもいいんだけど」
食べながら喋らないで。
「…そんなに焦らなくても、まだいっぱいあるよ」
「んじゃおかわり」
そう言ってお皿を私に渡す。
「…くす…はーい」
そう答えると、お皿を受け取って、台所へと向かう。
「…なんか、いい感じだよなぁー…」
そう言いながら、私の後ろ姿を、頬杖をつきながら見つめていた。
「このまま…時が止まってしまえばいいのに…」
切なげに、自分を見る視線に気付いてか、私は振り返る。
「何?何か言った?」
不思議そうな顔をしながら、シチューの入ったお皿を前に置く。
「いや…幸せだなーって思ってさ」
微笑して私を見つめる。
「な…何よ…いきなり」
私は慌てて目線を反らす…。うわー今のでばれたかな…。いちお何もなかったかのように、さっきの席に座ってみる。
「…べつに」
ふと笑みを零しながらシオンは言った。気付いてない?
「?」
その顔に、疑問が浮かぶけれど、それ以上は追求しなかった…。
「なー、どうしていきなり、料理作ってくれたんだよ…」
食べ終わってから、シオンがそんなことを聞いてきた。料理は見事に全部無くなっていた。シチューも3杯もお代わりして…お腹大丈夫?
「え?…べつに…。ただの…きまぐれよ…」
食べ終わったお皿を、片付けながら答える。本当の理由なんて、言えるわけないじゃない…。
「きまぐれねー。本当?」
コーヒーの入ったカップを、口へと運びながら聞いてくる。
「まぁー、それとお礼かな?」
そう言いながら、食器を洗い始める。
「お礼?」
その言葉の意味を、理解できないシオン。
「いつも、シオンが料理作ってくれたりとかするからさ。そのお礼にと思って」
そう。いつも家に来たとき、料理を作るのはシオン。だって自分で作るの、めんどくさいんだもん。掃除だって滅多にしないし。(おいおい)気付くとシオンがやってたり。今考えると、本当に何で私なんかと一緒にいられるんだろう…。考えれば考えるほど、会いに来なくなった理由らしき物が、いっぱい浮かんでくる…。
「あーそんな…、別に構わないのに…」
そう言いながら、顔は嬉しそうに微笑んでいた。手料理(まともな物)を食べさせてあげたの、初めてだもんね…。そんなに嬉しかった?
「ふふ…あーそうそう、シチューと御飯の残りは、別のお皿に移してここに置いてあるから、冷めた頃に冷蔵庫に入れてね。まぁー忘れないうちに食べて…きゃっ!?」
私はシオンに、後ろから抱き締められる。
「…シ…オン?」
赤面しながら後ろを向こうとする。
「なー…なんでここに来てくれたんだ?」
静かに、それでいてはっきりとした口調で聞いてくる。
「え!?」
私はびくっとする。一番聞かれたくなかったこと。
「おまえが珍しいじゃん?うちに来てくれたことにだって、びっくりするのに、料理まで作ってくれるなんて…。どうした?」
そう、諭すように囁く。
「…」
私は黙って俯いてしまう。…やっぱり、シオンには見抜かれてしまう…。シオンは、心理学とか学んでて、なんとなく人の行動や、言動で心を読めてしまうみたい…。
「…最初見た時も、作り笑顔みたいで…。それに、俺とあんま目ー合わせようとしないし。なんか…あったのか…?」
心配そうに聞いてくる。
「…」
やっぱり気付かれていた。でも、私は答えられない…。なんだか泣きそうになってくる。答えられるわけないじゃない…。だって…あなたのことなんだもの。
「…あ!もしかして、俺が1週間近く会いに行かなかったこと、怒ってるとか?」
いきなり焦りながら聞いてくる。
「へ?」
なんか、間の抜けた返事になる。だって、いきなり話題が変わるから。
「はっ!?…もしや、これは俺の自惚れになるのか…。あ…っていうか、んなわけねーよな…。怒ってんなら料理なんか作ってくんないもんな」
ははっと笑って言う。なんだかどことなく寂しげ?
「…」
私は、決心したかのように顔を上げ、私を優しく包んでくれていた彼の手を、そっとほどく。もう泣きそうになる気持ちは、なくなっていた。
「あ…ラリス?」
不思議そうな顔で、私を見る。
「…片付けおしまい。私帰るね」
片付けをさっさと終わらせて、その場を立ち去ろうとした。
「お…おい」
慌てて後を追おうとするシオン。
「…あなたのその質問に…」
私は扉の前で立ち止まり、そう言葉を口にし始める。
「え?」
「あなたの望む答えを返すならば…」
扉を開けて、外へと歩き出す。
「…あなたに…逢いたかったから…」
にこっと笑って言った言葉は、今の私の、精一杯の素直な心。
「!?」
シオンはびっくりする。そしてその笑顔に、思わず見とれてしまう。
「じゃー、またね」
そう言って、手を振りながら走り去る。またいつか、あなたに会えると願って。
「…またね…か…」
苦笑しながら、シオンは私の後ろ姿を見送った。
それから、数日後の後―
「ただいまー」
またも、思いっ切りドアを開けて入ってくるクアル。
「…おかえり。今回は珍しく早いわね」
ソファーに座って、冷めた言い方で言ってみる。だって、こないだからまだ数日しかたってない。これはかなり珍しいこと。
「俺の家に、いつ帰ってこようと俺の勝手だ」
クアルも、冷めた言い方で返してくる。
「そうね」
くすっと笑って言う。
「ところで、シオンは?今日も…来てないのか?」
辺りを見渡して言う。
「何?もしかして、心配してくれてるの?」
余裕の顔で、クアルに言ってみる。
「バッ!?うんなわけねーだろ。誰が姉さんの心配なんか…」
「しー」
私は、あまりにも煩いクアルに、静かにするよう指で合図する。
「…って…シオン?」
そうなの。じつは、シオンは私の膝の上。疲れのせいか、私の膝を枕にして寝てるの。
「そう。来るなり寝ちゃったわよ」
私は微笑しながら静かに言う。
「なんだよー」
脱力するクアル。
「うふふ…心配してくれてありがとう。でももう、大丈夫」
笑顔でクアルに言った。
「だから、心配してねーってば」
ぶーたれて返すクアル。少し赤くなってるように見えるのは気のせい?私はそんな姿を見て笑っていた…。
大切な人ほど、失ってみなければ分からない。確かにそうだった。だから今は、もっとこの人を…もっとこの人と居る時間を、大切にしようと…思った。これからも…ずっと…。
Twinkle ―大切にしたいこと― Fin 2001年10月29、30、31日
あとがき
どうも、俊宇 光(しゅんう ひかり)です。今回は後書きスペースが腐るほどあって逆に困ってます。いつもなくて困るのに。なんかまるまる一枚分以上あるし。どうしよう。まぁーなんとかトークばかりでうめていきましょう。
さて。今回はここまで読んでいただき誠にありがとうございました。なんだか小説のスランプに陥ってしまった私は、書きたい物も書けず、唐突に生まれたこの話を、しかも手書きから始めるという、中3以来のことをしてみたり。ここ最近全てパソコンうちの小説ばかりでしたが、なんだか今回手書きでやってみて、いやルーズリーフに書いたのですが、小説家が原稿用紙まるまる一枚を捨てる理由がなんとなく分かった気がします…。私もやぶりすてたい。がしかし、パソコンうちした方と、手書きの方とで微妙に違うので、捨てることはできませんね。まぁー違いが見たいって方は、これと一緒にそっちも読んでやってくださいませ。いやーそれにしても小説のスランプなんて味わったことなくて、今結構焦ってます。書かなきゃいけないのが他にあるのに…(じゃーこんなことしてんなって感じ)あーもうどうしたらいいんだー。誰か助けて…。
そうそう、何故これをこんなにも早く完成させたかと言いますと、友達が読みたいと言ってまして、考えたのが29日で、打ったのが昨日。で今は今日。みたいな感じで、2日も待たせてしまったのでさっさとやってるわけです。まぁー早く書けるのが私の特技ですから、これくらい頑張らないと駄目駄目ですね。よっしゃーファイト!!
あ!これ裏行きです。サイトの裏行き。もう決定。だってこんなやばいもん表に置いておけるほど私はすごくないです。絶対駄目。これでやばいって言ってるなんてまだまだだね(リョーマ風)とか言うあなた、つまりあなたはもっとやばいってことではないのか?なんだかこのごろ私は裏行きばっか書いてる気がする。そんなに作り物の愛に、私はそこまで飢えてるんですね。あーもっと見たい。誰か作り物の愛を…。見てーよ。こう純情恋愛系物語みたいな。なんか胸にずきっとくるっていうか、なんていうか、そんなもんが読みたいのよ!!私は。(大丈夫かおまえ?って感じ?)
あースペースうまんねーな。まぁー言うなればどうしてこの話を思いついたんでしょう。なんだか登校時間中単語テストの勉強をしていた光ちゃん、ふと思いついた話がこれでした。説明になってねー。まぁー本当にそうなんですよ。でも考えていたのはラリスが最初泣くとこと、食事を食べてるシーンだけ。最初にクアルが出てくることも、ここまでラリスを苦しめることも、この状態では考え出されていません。最後なんて昨日になる10分前くらいかに決めたし。(おいおい)そんなんでいいのか?とか思うでしょうが、そんなんでいいかを決めるのは読者様、あなたです。
あー現在2時すぎてしまいました。もう、あとがきでこんなに時間使っていいのか?さっさと寝ろって感じです。4時間しか寝れないやん。昨日12時に寝ただけで、授業中眠かったのに。どうしよう。まぁーなるようにしかならないか。(おいおいそんなんでいいのか…)たぶんいいんだろうな。それにしても寒い。このままだと湯冷めで風邪ひいて大変な目に。ぎゃー。どうしよう。っていうかまじ寒い。毛布を頭からかぶって書いてましたが、それでも辛いですね。そして机といすの高さが合わない故、体中痛いし。なんかいろんな変な格好して頑張ってたからな。まぁー自業自得というか…。
さて、本当にもう書くこと無いんで、去ります。もう本当にここまで読んでくださいましてありがとうございました。っていうかこんなくだらないあげく、ひたすら長いトークまでも最後まで読んでくれたことに、深く深く感謝を申し上げます。これからもどうぞ見捨てないでよろしくしてやってください。おそらく私の愛に対する飢えがなくならないかぎり、この二人は永遠にラブラブしっぱなしでしょう。(この二人が一番考えやすくておもしろいんだよ)まぁー違うキャラでも試してみたいとは思いますが。はい、そりでは本当にここでおさらばです。ではまたねー。
2001年10月31日 俊宇 光
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