Twinkle外伝 −私が分かること…−
2001年11月7日、13日、12月31日
私は、あなたのことを、いったいどれだけ分かってるんだろう…。あなたは、私のことを、誰よりも分かってくれるし、誰よりも分かろうとしてくれる…。でも…私は…?
「…」
しーんと静まりかえった居間。私、ラリス・リンクスは、カップの入ったお茶をじーっと見つめていた。
「どうかしたんですか?」
弟、クアル・リンクスの彼女、上小園 繭(かみこぞの まゆ)ちゃんが聞いてきた。
「え?」
質問の意味が理解できなくて、間の抜けた声を口にする。
「…なんか、ぼーっとしてるから、どうかしたのかと…」
心配そうに私を見つめてくる繭ちゃん。
「あーべつに…。なんでもないよ」
私は苦笑して答える。現在私は繭ちゃんとお留守番。クアルは仕事のため不在なのだ。全く。第2土曜だっていうのに、なんで仕事なのか…。
「…シオンさんは、今日来るでしょうか…」
そう、話題を変える。シオンというのは、本名シオン・ルーファス。私の友達以上、恋人未満って関係の人。「さぁー。まぁー夜には来るんじゃない?」
いつも勝手にやってくるから、いつ来るかなんて知らない。
「そうですか」
少し安堵した顔をする。
「何?そんなに来て欲しいの?なんならメールしとこうか?」
そう言って携帯を取り出そうとする。
「あーいえ。ただ、今日は新しい料理に挑戦しようと思っていて、できれば大勢の方に食べていただけた方がいいかなーなんて、思いまして」
慌てて言う繭ちゃん。
「ふーん。じゃーなおさら呼んだ方がいいんじゃないの?」
そうそう。私は再度携帯を手に取ろうとする。
「あーいえ、べつに。そんな、わざわざお越し頂いてまで、食べて頂くような物ではないですから…」
どうしても無理には来て欲しくないらしい。
「ふーん。まぁーいーけど」
そう言ってお茶を口に運ぶ。
「仕事でしょうかね?」
今現在いない理由を述べているのだろうか。
「じゃないの?」
私は素っ気なく答える。
「大変ですよね、寮暮らし」
そう、シオンは大学の寮暮らし。と言っても、しょっちゅううちで寝泊まりしてるから、あんまり関係ない気もするけど…。
「一人暮らしっぽくて楽なんじゃない?」
なんかことごとく素っ気ない言い方。
「そぉーでしょーか…」
繭ちゃんは不思議そうな表情を浮かべながら言う。そして私のカップが空になったのに気付くと、それを持って台所へと向かっていく。
「もう一杯、飲みますか?」
そう聞いてくる。
「…うん、もう一杯もらおうかな?」
良く気が付くよね。私はふと、笑みを零しながら答えてしまう。
「ねー繭ちゃん…」
私が、お茶を入れてる繭ちゃんの後ろ姿に話しかける。
「はい?なんですか?」
自分がさっきまで座っていた席に、座り直しながら答えてくれる。
「…繭ちゃんはさ、クアルのこと、どれだけ知ってるって言い切れる?」
そんな質問を投げかけてみる。
「え?」
繭ちゃんは、不思議そうな顔で私を見つめた。
「…あー別に、試してるわけじゃないから、安心してね。ただ、好きな人の事って、どれだけ分かってるもんなのかなーって思ってさ」
私は慌てて内容を修正する。
「え!?いや…そんな…」
繭ちゃんは真っ赤な顔をして、その場に縮こまってしまう。どうやら好きな人という言葉に反応したみたいだ。
「…ふふ…反応可愛いー」
私は微笑しながら、そう言った。
「もう、からかわないでくださいよ!!」
真っ赤な顔で私に言ってくる。なんだかうぶうぶね。本当に。(ラジドラ参照)私は笑いが止まらなくて、その後も少し笑っていた。結局繭ちゃんが怒ってしまって、その話は流れてしまう。本当に、ただのからかい話になってしまった…。少しは、本気だったんだけど…。
その夜…。(といっても21時)
「ただいまー」
そう言ってドアを開けるクアル。
「おかえりなさい」
繭ちゃんが笑顔でクアルを迎える。はたから見ると新婚夫婦だわよ。
「…なんだよ…」
気付けば、クアルが私をいぶかしげに見つめていた。
「へ?」
間の抜けた返事を返す。
「人の顔じろじろ見てるから」
あら、そんなに見てたかしら?
「そう?自意識過剰じゃないの?いつも誰かが見てるーって。まぁーおモテになるクアルくんは、そうなっても仕方ないのかしら?」
超嫌みたっぷりで言ってやる。
「んだよ…その態度…」
呆れながら言ってるようだが、内心お怒りモードかな。
「まぁーまぁー、そうかりかりすんなって。カルシウム足りてねーんじゃねーの」
後ろからの突然の声に、ばっと振り返るクアル。
「あら、シオン…」
ほらやっぱり来た。…あんた、不法侵入だよ…。
「こんばんわ」
いちおシオンが挨拶してくる。
「いらっしゃい、シオンさん。丁度今から御飯ですので、ご一緒にいかがですか?」
にっこり笑って繭ちゃんが言う。っていうか、みんな不法侵入突っ込まないし…。
「お、じゃーいただきます」
いきなりかしこまる。どうせそのつもりで来たんだろうに、白々しい。なんて思っても口にはしないけど。いつものことだからね。
「ってかびびった」
今更か!?クアル…。驚くの遅すぎ。
食事終了後…。
「さーて、お風呂にでも入ってこようかな」
そう言って、お皿を持って席を立つ。
「あーいーですよ、私がやりますから」
慌てて、繭ちゃんがそう言うと、私の持っていたお皿を取って片付けていく。
「あーそう?ありがとう」
そうお礼を言って、居間を離れようとする。
「なぁー、ラリス、俺も入りたい」
シオンが私を引き止めるように言う。
「…入ればいいじゃない」
いぶかしげな表情のまま、振り返って言う。だって、それをなぜ私に言うの?
「じゃー一緒に入ろうよ」
がたっと凄い音がする。クアルなんか、飲んでたお茶吐きそうになってるし。(きたな)っていうか、あなたさらりと凄いことを…。みんなしーんとしちゃったじゃないのよ。
「…シオンさん、それセクハラ発言ですよ」
少し顔を赤らめながら、困ったように繭ちゃんが言う。
「そぉーかねー?やっぱ駄目?」
頬杖をつきながら言ってくるシオン。その表情がなんだか余裕に満ちあふれていて、腹が立つ。まさか、私がOKを出すとでも思いこんでいるのだろうか…。
「駄目に決まってんじゃない!っていうか嫌」
そう即答してやったあげく、きっぱりと「嫌」と言ってのけると、私はその場から離れた。
「ちぇー」
シオンはテーブルにうなだれる。
「…やーい、ふられてやんの」
新聞の影から、からかい風にクアルが言う。
「うるせぇー」
そう言ってぶーたれた。その表情からすると、もしや本気だったんか!?それにしても、なんか今日のシオンは変。あんな甘え方、今までしたことないのに…。何かあったのだろうか…。シオンが甘えて来るときは、必ず何かある。何か、までは知らないけれど…。だって話してくれないから…。だから、聞かない方が良いと思って、聞いたこともない。でも、今日の甘え方はどうしても気になってしまう。本当に、どうしたんだろう…。
「ふぅー」
私はお風呂から出て、廊下を歩いていた。すると、
「ラーリス!」
「きゃっ!?」
いきなり、後ろから誰かに抱きつかれる。声から察するに…
「よっ」
やっぱり…シオンだ。
「もう、何よいきなり。脅かさないでよ…」
びっくりして早まった心臓を、必死に押さえて振り返ろうとする。でも力強く抱きしめられているため、振り返るまでに至らない。
「…髪の毛、いい匂い」
シオンは少しの量の髪の毛を手に取って、匂いをかぐ動作をする。そんなことしなくても匂うだろうに。風呂上がりなんだから…。
「ちょっ…シオン、離してよ」
これじゃ前に進むこともできやしない。
「やだ」
そう即答して、私の頭に顔を埋めてくる。
「やだ…って、ちょっと!廊下のど真ん中で邪魔でしょうが」
そう、現在廊下のど真ん中。人が通ろうもんなら邪魔で仕方ないだろう。
「今は誰もいないじゃん」
そんな屁理屈を言ってくるシオン。
「そういう問題じゃなくて…」
もう呆れてしまう。今のシオンに何を言っても離してくれないみたい。こうなったら、
「じゃーおまえの部屋ならいい?」
そういじわるそうな笑みを浮かべて言ってくる。
「もう!そういう問題じゃないって言ってるでしょ!!」
一瞬の隙を見て、私はシオンの腕から抜け出す。
「あっ」
「もう」
私はちらっとシオンを一瞥した後、廊下を進んで自分の部屋へと向かう。…一瞬見たとき、すっごく寂しそうな顔をしていたのは気のせい?
「あー待てよ」
慌てて私の後を追ってくるシオン。今は全然平気そうな顔してるけど…。ほんとに気のせいだったのかな?
「…」
私は無言で自分の部屋に入り、ベットの上に座る。
「…おじゃまします」
いちお異性の部屋に入るのに、遠慮してるのか、そんな言葉を口にしながら部屋に入ってきた。いつも勝手に人ん家に入ってくるくせに。何よこんな時だけ…。
「ふぅー」
私はシオンに聞こえるように溜め息をついてみる。
「…」
シオンは何も喋ろうとはしなかった。
「…」
ただ続く沈黙。シオンからは何も話す気はなさそうだ。でも、私はこの重苦しい空気に耐えかねてか、言葉を口にしてみる。
「…何かあった?」
っと。
「…え?」
びくっと、一瞬反応したのを見逃さない。
「何か変だよ?今日のシオン」
私は心配したような表情を浮かべて、シオンを見る。
「…そうか?べつに、いつもと変わらないよ」
そう、ポーカーフェイスで言ってのける。でも私の目を合わそうとしない。無理に反らしてる感じ。ポーカーフェイスだっていつもと少し違う感じがする。…この嘘つき。
「…そう?」
でも、それ以上追求しようとはしない。だって、本当に聞かれたくないことなら無理に話させたら悪いし…。「…あ!そうそう、今日一緒に寝ようぜ」
そういきなり話題を変えてくる。ってか…
「はっ!?」
私は凄い顔になる。
「なー、いいだろ?さっきも風呂一緒に入ってくんなかったしー、寝るときだけでもさ」
なんだか嬉しそうに話してくる。あんた、それが人に物を頼む態度!?ことごとくその余裕っぷりに腹が立ってくるわ。
「な…なんで急に。いつものとこに寝ればいいじゃないのよ!!」
私はどんどん顔が赤くなる。本当に、何を考えてるんだこいつは…。さっきから、セクハラ発言ばっかじゃないのよ。
「なーラリス。何もしないからさ」
くすりと微妙な笑みを浮かべながら言うシオン。
「もーそういう問題じゃないでしょうが!!」
きっと、今の私は真っ赤だろう。それを隠すために、思いっ切り後ろを向く。こんな顔見られたくない。絶対余裕不適の笑みで私を見てるわよ、あいつは…。
「これも駄目?」
そう私の耳元で囁きながら、後ろから抱きしめてくる。
「ちょっ…シオン」
もう心臓爆発しそう。絶対遊んでるでしょう…。
「駄目?」
…そんな寂しそうな顔されたら、断れないじゃない…。でも、このままOK出すのは、私のプライドが許さない。
「…はぁー。もう、いったい何があったの?あなたがこんなに甘えてくるなんて…」
大きな溜め息をついて、質問をする。もうこの際だ、聞き出してやる。自分だけ遊ばれるなんて嫌。少し困らせてやるんだから。
「え…なんのことだよ…」
あくまでしらを通し続けるつもりね。でも、見逃さなかったわよ、一瞬の反応。私を抱きしめていた手の力が少し緩んだし。
「たまに、甘えてくるよね…。何かあったんでしょう?」
私はシオンの方へ振り返り、苦笑しながら言う。
「…」
「…!」
振り返って見た、シオンの表情は、私が今までに見たことのない、寂しそうな顔を浮かべていた。
「シオン?」
さすがのこの表情に、私は少し焦ってしまう。もう、仕返しするとか、そういう感情はなくなっていて、ただ純粋に、今のシオンを心配するだけだった。だって、本当にいつもと甘え方が違うから。
「気付いて…」
「え?」
口にされた言葉は、今にも掠れ消えてしまいそうで、聞き取るのに苦労しまう。
「気付いてないと…思ってた」
ふと苦笑しながらそんなことを言う。
「…バカにしないでよ」
好きな人くらい、ちゃんと見てるもん。その言葉は、喉まで出かかって動きを止める。言いたいことはいつも言えない。だからいつまでたっても恋人未満のまんま。
「…」
シオンはただ苦笑するだけ。
「ずっと前から気付いてたんだよ?いつも話してくれないから、言いたくないんだと思って、追求しなかったけど」
そう、前々から気付いてはいたのだ。ただ話してくれないから、聞いちゃいけないものだとばかり思っていた。でも、なんか今日は…
「…俺に…気を使って…」
びっくりした表情をうかべてから、顔を真っ赤にするシオン。
「?」
その表情の変わりように、驚きを隠せない私。だってシオンが赤面するなんて、初めてみたもの。
「はは…あー…なんかすっげー嬉しいんだけど」
ふと笑みを浮かべて照れながら言う。恥ずかしいのか、私と目を合わせようとしない。
「へ?」
なんだか間の抜けた反応をしてしまう。こっちはまじめに話してるのに、いきなり嬉しいだと!?
「いやだってさ、へへ」
口元を思いっ切り緩めるシオン。そんなに嬉しかったのかしら。
「…むー」
そう唸りながら私はふてくされる。だって、そんな表情見せられたら、私だって嬉しくなるじゃないのよ…。おまけに、これ以上聞けないじゃん。なんか上手く丸め込まれた気がするわ。やっぱり腹が立つ。調子を戻したシオンは、あいかわらず余裕の笑みで私を見据えてくる。なんだか何もかもがシオンの思い通りになってる気がしてくる。私は、彼の手で踊らされてる人形のよう。
「…シオンってずるいよね」
私は俯いてそう呟く。なんかもう、悔しくて悔しくておもしろくない。すっごくつまんない。ぎゅっと、手に力が入る。
「え?」
言葉の意味が理解できないのか、不思議そうな顔をするシオン。
「…もう、シオンのバカ」
私はくるっと後ろを向いて、シオンに背を向ける。ただその一言を捨て吐いて。私は一生懸命、口を開こうとする気持ちを抑えようと努力する。だって、今口を開いたら、何を言い出すか分からないもの。
「なんだよ…」
ただバカと言われたことに、不服を感じたのか、私を再度後ろから抱きしめ、そう言ってくる。
「べつに」
そう簡単にあしらう。
「まじでなんだよー、気になるじゃんか…」
しつこく問いただそうとしてくる。やっぱりずるいよ、シオンは…。
「…私のことは何でも聞いてくるくせに…」
私は俯いて、消え入りそうな声でその言葉を口にする。握っていた拳に、さらに力を入れて…。あーもう駄目だわ…。
「え?」
消え入りそうな声は、シオンには少ししか届いていない…。
「シオンは自分のこと、なんにも話してくれないよね!」
一度出てしまった言葉はもう止まらない。そう…今まで彼の話なんか聞いたことなんてない…。私が知ってることなんて…ほとんどない…。ううん。私は、あなたのこと…もしかしたら…何も知らないのかもしれない。そんな考えが頭をよぎる。
「そ、そうかな?」
いきなり叫びだした私に少し驚きながら、困った表情を浮かべて私を見る。
「そぉーよ…。いっつもそう!シオンは私に何も話してくれない!私はそんなに頼りない?いや、確かに頼りないかもしれないけど!」
私は、シオンから離れてそう叫ぶと、そこで言葉を止めた。息継ぎのため…。もう、肩で息してるし。
「…」
シオンはびっくりしたまま固まってる。
「でも、甘えてくるって事は、頼りにしてくれてるんじゃないの?…甘えてくるだけじゃ分かんないんだよ…。話してくれなきゃ、私にだってどうすることもできない…。もう少し、私を頼ってよ…。私だって…あなたのために…何かしたいのに…」
最後の方は、泣きそうになって俯いてしまう…。なんだかすっごく悔しい…。私は、バカみたいじゃない…一人で勝手にわめいて…ただシオンを困らせて…。本当…バカみたい…。
「…」
シオンはあいかわらず黙ったまま…。驚いているんだろう。私、こんなに、自分の気持ち、素直にぶつけたことないし…。でも、なんだかこの沈黙がすごく気まずい感じがして、俯いたまま顔があげられない。今のシオンの顔なんて絶対見られないな、これじゃ…。いったいどんな顔してるんだろう…。あ…もしかしたら、私嫌われたかな…。気持ちぶつけたの、初めてだし…嫌がられたかな…。
「…俺」
沈黙を最初にやぶったのはシオン。でも私は、何言われるか怖くて…
「もういい…寝る。あんなたもここで寝るんでしょ!勝手にどうぞ」
そうふてくされてるような言い方で、ベットに寝っ転がる。私は、シオンの顔を見ないように、頭から布団をかぶる。
「…ラリス…」
だって…これ以上聞きたくない…。何を言いたかったのかは、分からないけれど…。
「…」
あー悔しい…。なんだかすっごく悔しい…。何に対して悔しいのかよく分かんないけど…、でも、悔しすぎて、涙が出てくる…。
「ラリス」
小さいけれど、とても強い声で、私の名前を呟く。そして、私を後ろからそっと、抱きしめてくれた…。
「!?」
私は驚きが隠せない…。抱きしめて…くれてるんだよね…今…。ってことは、私、嫌われてないの?
「…ごめんな…」
そう言いながら、私の頭をな撫でてくれる。
「…」
私は、一生懸命涙をこらえる。ううん…ただ泣き声を押し殺していただけなのかもしれない…。だって、嫌われるんじゃないかっていう、不安も一緒に押し殺したかったから…。それに、泣いてる…なんて、気付かれたくなかったし…。でも、これは精一杯の強がり。
「ほんとにごめん…。もう少し…もう少し待ってくれ…。必ず…話すから…」
そう言って、私を抱きしめる手に力を込める。
「…」
もう、涙は止めどなく流れてくる…。話してくれるの…?こんな私を、頼りにしてくれるって言うの?ねぇーシオン。
「…おやすみ」
そう言って私の頭にキスをおとすと、そのまま眠りについた。私を抱きしめたまま…。
「…バカ」
私はそう呟くと、自然と流れてくる涙を、ただ流し続けた…。
「…ん?」
私が目を覚ますと、外はまだ暗かった。
「…」
沈黙。聞こえるのは、規則正しいシオンの寝息と、時計の病身音だけ。暗すぎて時計は見えないけれど、だいたい3時くらいだろうか…。
「…シオン?」
私は、シオンの方へ向き直す。
「…すー…すー」
気持ちよさそうに眠っている…。とても、安心した表情…。さっきまで、何か思いつめていたような顔をしていたから、少し心配だった。でも平気みたい…良かった。今は自分も落ち着いた。ちゃんとシオンの顔も見れるし、あなたの微妙な変化にも気づけるはずよ…。
「…」
そっとシオンの頬に触れてみる、
「…私じゃ…あなたの支えにはなれないの?」
私はシオンの胸に顔をうずくめて目を瞑る。
「私…いつもあなたに頼ってばかりだけど、たまには、あなたにも頼って欲しいのよ…」
また泣きそうになる。胸が苦しい…。寝てるって分かるのに…どーしてこんなにもどきどきするんだろう。
「私…あなたのこと…何も知らない…。話してくれなきゃ分かんないもん…」
もう駄目ね…。いったい、いつから私は、こんなに弱虫になってしまったんだろう…。あなたを思うだけで、胸が苦しくなるの…。こんなにも、泣きたくなってしまうのよ…。
話してくれなきゃ分からない…。そうか、私も話さなきゃ分かってもらえないんだね…。今まで、あなたは話さなくても分かってくれるもんだと思ってた…。そうじゃないんだね…。
「不安…だった?」
ふとそんな言葉を口にしてみる。だって、私がこんなに不安だから。もしかしてあなたも…?なんて、自惚れかな…。
「…これ以上…私を不安にさせないでよ…」
そう言ってシオンの服を掴んで泣き出してしまう。泣き出すといっても、声には出さないけれど…。ただ、涙がとめどなく流れるだけ。…不安にさせないで…これ以上苦しめないでよ…。私…死んでしまいそうよ…。
「…ごめんな…こんなに…不安にさせてたなんて…」
すっと自分の背中に手がまわされるのが分かる。私は思わずびくっと反応してしまう。
「…起き…てたの?」
一生懸命涙をこらえようと、声を搾り出す。でも、今にも消えてしまいそうなほどの、小さな声。
「…おまえが抱きついてきたあたりかな?」
うーんと考えるようにして言い出す。
「…」
私は赤面してしまう。つまり、全部聞かれてたんじゃない。恥ずかしくてしようがない。この顔を隠すのだけでもひと苦労だ…。だって寝てるもんだと思って言いたいこと言ったのに…。それを全部聞かれてたなんて…。うひゃーもう駄目。
「ラーリス、顔上げてよ」
からかってるの?今上げられるわけじゃない。
「…なぁー」
そう言って私の顔を無理矢理上げさせる。
「…シオンのいじわる」
もう最悪。涙で汚れた真っ赤な顔。こんな顔、見られたくなんかないのに…。最悪だよ、本当にもう。
「へへ」
そう笑いながら、涙を拭ってくれるシオン。そして額にキスを落とし、鼻の先、頬と下ってくる。
「ちょっ…シオン」
私はびくっとしてしまう。こういうのに慣れてないし…。いや、慣れたかないけどね…。
「今日は休みなんだよね…ゆっくり眠れるかな?」
そう言って話題を変える。今日はもう日曜日。確かに休みだけど…。
「シオン?」
話の意図がよみ取れず、困ってしまう。
「二度寝可能だよ…?どうする?」
にっこり笑って私を再度抱きしめてくれる。そうね、まだ3時30分。二度寝することは可能ね。明日は休みだから遅くまで寝てても大丈夫。そう言いたかったのね…。
「…おやすみなさい」
そう言って私は、笑顔を浮かべて、眠りにつく。意識が飛ぶのに、さほど時間はかからなかった…。泣き疲れたというのか、安心してぐっすりと眠れる。あなたの、胸の中だからだろうか…。
「…おやすみ…ラリス」
そう言って、私の額にキスをする。
「…はぁーあ…。自分で寝るように進めといて難だけど、ある意味これは拷問かも…」
そう呟きながら苦笑して、シオンも眠りについた。
「んー」
私は目を覚ます。珍しく良く寝たって感じ。
「…おはよう」
シオンが挨拶してくる。先に起きてたのね。
「…お…おはよう」
まともに顔が見られない…。なんかめちゃめちゃどきどきしてるんだけど。
「…どーした?」
その様子を不思議そうに見るシオン。
「なんでもない」
慌てて首を振って言う。
「そう?ならいいけど」
くすりと笑って、私の額にキスをする。
「なっ!?シオン!!」
がばっと起き上がる。
「はは。…はぁーあ…。ラリス」
ふと真剣な目で私を見て、私の名前を呼ぶ。
「え?…はい」
びっくりして反応する。
「…何から、話そうか…」
目を瞑り、そう言いだす。
「え?」
話して…くれるの?
「…聞いて、くれるか?」
微笑して言う。とても優しい顔で私を見つめてくる。聞いてくれるかって?そんなの、答えは決まってるじゃない。
「…うん」
まだ、分からないことばかりだけど、これからずっと…長い時間をかけて…知っていけるかな…あなたのこと…。ねぇ、シオン。
Twinkle外伝 −私が分かること…− Fin
2001年11月9日、12月31日 俊宇 光
あとがき
最悪…。やっぱ書くんじゃなかったかしら…。スランプいやーーーーー(汗)もう…誰か助けてー。このままじゃ何も書けなくなるーーーー。小説読まなきゃ駄目かしら…。はぁーあ。
ってなわけで、これを書いたあといくつか読んだりしてました。それからドリーム小説にハマリ、今にいたるわけです。ドリーム小説の影響が少なからず入ってます。少しどころかだいぶ書き直してますし。まぁーやばい表現が多いのは、これを書いていた授業中家庭科に文句を言ってください。だってねー、あれよ。そう、あれよ。保健でも勉強するあれを家庭科でもやってたわけですよ。まぁー簡単にいうと家族計画てやつですか?はは。もう、何回18禁路線にいきそうになったことか…。ああ。これでも抑えたほう。駄目
なかた、ごめんなさい。
まぁーそんな感じの小説でした。これを考えた理由は忘れましたね。やば。もう年だ。まぁー一ヶ月以上経ってますしね。
はい、以上今年最後の小説ということで、最後のあがきで無理矢理終わらせました。現在紅白聞きながらやってます。
そういや、最初押し倒したりと事件があって、なんとか直してここまで完成させたんですよね。今年の締めくくりにはどうかとは思いますが、このスランプを乗り越えるように、来年に行きたいと思います。今年もありがとうございました。どうか来年もよろしくしてやってください。では。
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