Twinkle−桜とおまじない− 2001年4月9日 4月始め…彼らの家の近くの桜が、一気に芽吹いた…。桜は、儚い時を、とても美しく過ごす。たった、たった1ヶ月あるかないかの間なのに、あんなにも美しく、綺麗に咲き誇っていられる。彼女達は、たまにそれを羨ましいとも思った…。儚いのに美しい、綺麗な桜に…。 「うっわーーーーすっごーーーい」 「うっわーーーー」 「おまじない…」 おまじない。とても魅力的に感じてしまう女の子…。それに頼らないで、自分の力でなんとかする女の子…。中には男の子もいるのかしら? 桜。春にしか咲かない桜。儚くて、美しくて、素晴らしくて。でもとても一生は短い。でも、また一年たてば、春がやってきて、桜が咲き乱れる。恋も、そんなものなのだろうか…。いや、きっと違うんだよね。 彼女たちは今、この桜を、この人と一緒に、また来年も見れるようにと…願っている…。 Twinkle-桜とおまじない- Fin 2001年5月4日 あー一ヶ月たってしまった。いろいろ忙しかったもんな。もう5月です。桜は散ってしまいました。とっくに。でも、八重桜は咲いてました。もうきっと散ってますね。いや散った。はぁー。さみしい。くーーーーーー。 この話を思いついたのは、ふと散ってきた桜を、素手で取ったことから始まりました。取った時「うわおう、素手で取ったよ」っと驚いてしまいまして、それで、その時にあのおまじないを思い出して、これを桜とかけて、話にしようって感じで決まりました。学校の帰り道に話を考えて、決まりました。その日に最初は書き記しました。ちょうど通学路に桜並木があったから、生まれた作品ですね。誰にこれをやってもらおうかなーって、一通りオリジナルキャラをあさったところ、この4人にお願いしました。他の人では結構難しくてね…。でもまぁーこの4人で良かったかなーって思ってます。 まぁーここまで読んでくださいまして、ありがとうございました。
この家の主?いや、無理矢理に主に成り下がった、ラリス・リンクスという女性が、窓からの景色を見て叫ぶ。
「本当ですね…」
この主の弟の彼女である、上小園 繭もその言葉に同意する。
「桜なんか毎年咲くじゃん」
夢もロマンもないことを口にする、基、元主の弟クアル・リンクス。
「そんな、夢もロマンもない言い方を…」
ラリスが窓に向いていた体を、ひたすら食事をしている弟、クアルへと向ける。これこそ花より団子と言うべきだろう…。
「そうですよ、クアルさん。見てください。すっごく綺麗ですよ」
珍しく繭が一生懸命になって言う。
「まぁー暇なら後で見る」
軽く交わして、また食事をしだす。繭の言うことなら返答はするらしい…。
「ったく…」
ラリスが、呆れながらその場を離れる…。でも、繭はその場所からは離れず、ずっと外を眺めていた。その視線の先には、見事に咲き誇った桜が、一本だけ立っていた。
「…」
あんまりにも真剣に、その桜を見るものだから、クアルは気になり、席を立って繭へと近づく。
「そんなに綺麗?」
後ろから話しかける。
「あ!…えー」
クアルに気づき、一度は後ろを振り向くが、すぐに桜へと視線を戻す。その視線はとても優しく、何か、暖かいものを感じさせるようだった。
「ふーん」
クアルも桜を見る。あまり花や、女が綺麗だとか、可愛いとかいう物に、興味のないクアルとしては、その桜も、別にこれといって興味がもてる物ではなかった。でもなんとなく、繭と一緒に、桜を見る。少しずつではあるが、もう散り始めている桜を…。
「クアルさん」
ふと、繭が口を開く。
「へ?」
いきなりで少しびっくりしながらも、ちゃんと反応するクアル。
「食事が終わって、一息ついた後、桜を見に、外へ行きませんか?」
窓から見えると言っても、そんな目の前にあるわけではない。繭は、あんなに綺麗に咲く桜を、目の前で見たいと思ったのだろう。クアルに一緒に行かないかと、誘ってみる。
「あ…あーべつにいいけど」
少々、心の中でめんどくさいとか思いながらも、その笑顔に免じて、行ってもいいかなー、なんて思う。なんだか、今日の繭は少し違う。なんだかご機嫌みたいだけど、それとはまた違う。いつもよりも優しい目で、見つめている。雰囲気もどことなく、優しげな感じがする。そんな感じの笑顔を見せられちゃー、よっぽどのことがなければ断れない…。
それから数十分して、クアルと繭は外へと出かけて行った。家には、主のラリスだけが残った。ラリスは、さっき見ていた窓から、桜を見つめた。その桜を含めた視界に、クアルと繭が入る。まぁー遠くはないから、すぐに着くのは分かっている。しばらくその様子を見つめていた。
桜を目の前にして、はしゃぐ繭。風が、桜の花びらを散らしながら、繭の水色の長い髪を同時に揺らす。そんな風景が、すごく綺麗で、さすがのクアルも見とれてしまう。
「クアルさん…」
ふと、クアルの名前を呼ぶ。その言葉に、クアルは我に帰る。
「え?」
はっと気づいたような反応をする。
「桜の花びらのおまじない、って知ってますか?」
「お…おまじない?」
いきなり意味が分からない話をされて、言葉に詰まるクアル。
「はい」
にこっと笑って答える繭。
「いや…知らない」
知るわけがない…男のクアルが。いや、クアルだからこそ。そんな、おまじないなどというものを…。じつはそれを知りながらも彼に問う繭。
「桜の花びらが散ってくるときに、手で3枚掴むことができたら、恋が叶うっておまじない
…です」
桜を見上げて説明する。
「散ってくる時ね…。なんだか結構簡単そうじゃねー」
やっぱ、夢もロマンもないような答え方をする。分かってはいるけど、あまりいい顔は出来ない繭。
「いいえ。結構難しいんですよ」
いたずらっぽい笑みを浮かべて、クアルに言う。
「ふーーん…ほっ!」
なんだか信じていないような返事をしながらも、じゃー試してみようかと言わんばかりに、落ちてくる桜の花びらに、手を伸ばす。
「あっ。何!?うううう。てや!」
案の定、掴むことは失敗する。そんな行動を2、3回ほど続けていたが、いっこうに掴める気配がない…。
「うふふ。ほらね、難しいでしょう?」
そんなクアルの子供っぽい行動に、笑ってしまう繭。
「ちぇー」
簡単とか言いながら、結局一枚も掴めず、おまけに繭に笑われたことに、少し悔しさと恥ずかしさを覚えるクアル。子供のように少しすねながら、ばつの悪いような顔をする。そんな表情がなんだか可愛くて、また笑いそうになる繭。
「繭はさ、まさかそういうの、信じてるの?」
話を反らすクアル。
「え?」
いきなりで返答に困る繭。
「だから、そういうおまじない…、とか信じるのかって…」
なんだか、言いにくそうな言い方をする…。
「え?まさか…。信じる訳ないじゃないですか…」
さらりと答える。
「だよな」
予想通りの答えだったのだが、なんだか拍子抜けしてしまった。確かに前々から、神頼みやおまじないなどの類に、絶対頼らないし、信じてないってことは知っていた。でもなんだか、あの言葉や言い方は、信じていたっぽいと思っていたクアル。
「おまじないは信じてません。恋だって、夢だって、なんだって、そんな物に頼らずに、ちゃんと、自分の力で叶えたいもの…。じゃなきゃ意味ないじゃないですか?
くるっと、クアルの方を向いて笑顔で言う。
「そうだな…。そういうのは、自分の力で叶えなきゃ、意味ねーよな」
納得する。
「でしょ?でも…そういうことに、頼りたくなるときも…あるんですけどね…」
最後の方は小声で言ったので、きっと、クアルには聞こえていないだろう。でも、意味深な視線を、クアルへと向ける。その視線は、桜を見つめる視線よりも優しく、愛おしいものだったが、どことなく、寂しげな感じがするものでもあった。
「どうした?」
最後に言った言葉は分からなかったが、その視線が気になり、心配そうな表情で繭に話しかける。
「あ!いえ。なんでもないです。そろそろ帰りましょうか…」
慌てて答えて、帰るように誘導する。
「あ…あー」
なんだか、流されるままに答えるクアル…。
ふと、ラリスは口を開く。
「おまじない?」
「きゃっ!!」
ラリスは口を開いた後、すぐに後ろから、誰かに抱きしめられる。
「シオン!?」
ぱっと振り向いて、誰かを確認する。
「…よっ、ラリス」
シオンと呼ばれた彼は、そんなラリスに微笑して見せる。彼の名前はシオン・ルーファス。ラリスの彼氏?である。(なぜ「はてな」かは今は追求しないでください…)
「あんた、人の家に勝手に入ってくるなよ…。不法侵入だぞ…」
確かに…。だって、彼はここの住人ではないのだ。なのに勝手に入ってきて、後ろから抱きしめられるなんて、かなりびっくりする。ラリスは落ち着いた声で諭すように語りかけるが、内心はまだどきどきしていた…。
「いいんだよ。彼氏なんだからさ」
笑いながらラリスに言う。
「そういう問題じゃーないだろう…」
半分呆れ返って言う。
「ところでさ、おまじないって何?」
さっきとは打って変わって、真剣な表情でラリスを見下ろす。
「あー!…」
思い出したような顔をして、前を向いた。
「?」
シオンも、ラリスが見た方向を見る。
「桜の…」
ふと、言葉を口にする。
「桜?」
つぶやくような声を、一生懸命聞きながら繰り返す。
「桜の花びらが散ってくる時に、手で3枚掴むことができたら、恋が叶うっていうおまじない…。それを思い出していたの…」
桜を愛おしそうに見ながら、語り出す。
「ふーん、結構簡単そうだけどね」
興味なさげに答える。
「えー、結構難しいのよ」
ぱっと、上を向いてシオンと視線を合わす。
「ふーん。やったことあるの?」
難しいというのわ分かるんだから、経験したのだろうと思ったんだけど…。
「まさか。やるわけないじゃん」
笑いながら、また視線を前の桜へと戻す。
「なーんだ」
つまんないの、って感じの言い方。
「…」
また無言で、桜を見つめ始めるラリス。その表情を、少しシオンは見つめてから、口を開く。
「おまえは、おまじないとかって信じるの?」
抱きしめていた手を少しゆるめて、肩に手を置きながら言う。
「え?おまじない…?うーん。そうだなー」
少し考え込む。シオンは答えが出るまで黙っていた。
「半々かな?」
「半々?」
反復する。
「うん。だってさ、本当に花びらを3枚掴めたからって、恋が叶うわけないじゃない。ほかにも、いろんなおまじないとか聞いたことあるけど、どれも無理が多いのよね」
桜を見ながら言葉を紡ぐ。
「はぁー」
シオンはラリスの言葉を、そのまま聞く。
「だから、私は基本的に、おまじないは信じてないかな…」
なんだか明後日の方向を見ながら、自分で確認する。
「半々じゃないじゃん」
突っ込むシオン。
「はは。まぁーね。でも、全く信じてないわけじゃないのよ…。だから半々」
「え?」
言葉の意味が分からず、聞き返してみる。
「だって、恋や願い事を叶えるためには、まず行動してみなきゃしょうがないじゃない。ただ待ってるだけじゃ、何も叶わない。いきなり誰かが告白してくれるわけでも、願い事が叶うわけでもない。必ず、自分で行動しなきゃ始まらないのよ…」
愛おしそうな顔に戻る。
「まぁー、そりゃーそうだな」
言葉の意味を考えながら、納得していくシオン。
「だから私は、さっきのおまじないみたいなのは、とりようによっては信じないかな…。待ってるだけ、って感じのは絶対信じない!つまり、そのおまじないをしたことに対して、自分が行動するのに、勇気づけなんかをできたりするおまじないは、信じるの」
びし!っと言いまくるラリス。
「なるほどね…」
やっと何が言いたいか分かって、納得した。
「さっきのおまじないは、3枚掴んで、恋がうまくいくかもって思って、告白しようって思うならいいんだけど、告白してくれるって思っちゃうと、ちょっとね…」
「だから半々…?」
ラリスが言おうとしたことを、言ってくれたシオン。
「そう」
にこっと笑って、シオンを見上げる。
「ふーん。自分で行動あるのみ…っか」
シオンも桜を見つめる。
「でも、本当におまじないに、頼ってしまいたくなる時も、なくはないんだけどね…」
そんなことを呟きながら、後ろのシオンにもたれかかってみる…。
「…!」
今の呟きが、聞こえたのか、聞こえなかったのか、分からないけど、シオンはそんなラリスを、優しく抱きしめた…。
おまじない…。とても不思議なもの。人のやる気を起こさせる、何かがあるのかもしれない…。(そうじゃないのもあるけど…)
今、おまじないを実行中のあなた。頑張って、自分から行動できるように…成功するといいね。そして、叶うと良いね、願いが…。
あとがき
私は、桜がすごく好きです。っていうか、今年からめちゃめちゃ好きになりました。なんだかすっごく綺麗で…。