Twinkle−桜に願い事−
 

Twinkle−桜に願い事−

 

桜が咲いた。
今年も咲いた。

「残念でしたね。シオンさん、こられなくて」
繭ちゃんが苦笑しながら、私に話し掛けてくる。
「しょうがないんじゃない?急患だって言ってたし」
「あいつ本職医者じゃねーのに、いったい誰がそんな噂拾ってくるんだろうな」
弟のクアルが、お弁当を食べながら話題に入ってきた。
「ちまたじゃ有名だぞ?あいつの医者ぶりは」
セラフィム兄がそう言い出す。
「そうなんだ」
へぇなんて感心している私に、
「それって自分の彼氏に対する反応か?しらねーのかよ」
と、クアルが突っ込みを入れた。
「彼氏じゃないもん」
彼氏じゃないやい。
「そうだぞクアル!!誰があんなやつに大事な妹をやれるか!」
なんて怒り出すお兄ちゃん。
べつにあの人の人柄が嫌でそう言ったわけじゃないんだけど…。
「セラフィムはあたしのなのぉ」
膝の上に座っていたセルリエちゃんが、ぎゅううっとお兄ちゃんに抱きつく。
「はぁ」
クアルがあきれて、ため息をついた。
「ふぅ」
私はその場所を立ち上がり、靴をはく。
「どこ行くんだ?」
お兄ちゃんが、セルリエちゃんを撫でながら私に聞いてきた。
「花見。そのために来たんだし。どっかの馬鹿弟が寝過ごした性で、たいして景色もよくない場所だからさ」
なんて嫌味を言えば、
「うんだと!!」
「お、おちついてください!!」
怒ったクアル。そしてそれを止めるために慌てている繭ちゃんが見える。
「いってきまーす」
「戻ってくんな!」

いつものやりとりを受け流し、同じく花見をしに来た人々とすれ違った。

バーベキューやお酒を飲む、カラオケを楽しむ人々を横目に、桜が綺麗に見える小高い丘を登っていく。

「綺麗…」
歓喜のため息がもれた。

毎年桜は見るけれど、毎度同じことを思う。
儚いからこそ美しく、綺麗だからこそ人々はそれを愛でる行事を楽しむ。
まぁ、食べることに忙しい人ばかりだけど。
そんなことを思ったら、思わず苦笑してしまった。

「そういえば」
昔、彼と桜のおまじないの話をしたことがる。
散ってくる桜の花びらを、3枚キャッチすることができたら、願いは叶うというおまじない。
私はあまり信じないと言ったけれど、試そうとするのは人間の性なのだろうか。

「よっ」
私は桜に手を伸ばし、花びらを捕まえようとぎゅっと握る。
まぁもちろん、掴めるはずはないのだが。

「ほっ」
そうなると意地でも捕まえようとするのも、ある意味人間の性ということにしておこう。

「えい!」
「どんな願いをご所望で?」

 

 

 

 

 

 

 

 

見知った声。
でも、決してここにいるはずのない、あの人の声。
どうして…

「シ…オン…」
どうしてここに…。

私は慌てて手を下す。
なんか情けないところを見られた気がした。

「桜に頼ってしまうほどの願いってどんなのだ?」
彼がいつもの笑顔でそう聞いてくる。
「覚えていたの?」
昔に会話した内容を。
「覚えてるさ」
私の髪についた桜の花びらを取り、私の手の上に乗せてくれる。
「っていうか、どうしてここにいるの?」
どうして?
「来ちゃまずかったか?」
彼が苦笑を浮かべる。
「そうじゃなくて、メールじゃ『ごめん急患が入った』って書いてあったから」
てっきり来ないもんだと。
「行かないとは言ってない」

 

 

「…」
もう、へりくつよそれ。

「で、何を願ってたんだ?」

何を…

「…」
彼を見上げれば、
「ん?」
視線が合う。
「あ」
「ん?」
彼の頭にも、一枚の花びらが。
「花びら」
取って手に乗せた。
そしたら…
「あ」

さっき、シオンが取ってくれた花びらを合わせて2枚。
そして立った今偶然、私のその手の平に舞い降りてきた花びらと重なれば…

「3枚…」
「揃っちゃった」
願いが叶う条件はクリアしてしまった。
そして、願いは…。

 

「ラリス?」
「いこ!」
私は丘をかけ降りる。
「あ、待てよ!なぁ何願ったんだよ!」
「さぁねー」
教えてなんか、あげないんだから。

会えますようにと、願いたかったなんて。

 

 

 

 

 

 

「結局来たんじゃねーか」
クアルが悪態をつく。
「来ちゃだめなのかよ」
なんでみんなそう言うんだよぉっとシオンが嘆いた。
「つーかおまえ!!俺の妹を待たせるとは良い度胸だこら!!」
「わっ!!すんません!!」
セラフィム兄にはてんで弱いのよね。

「でも残念でしたね」
そこで初めて口を開く繭ちゃんが、気になる一言を口走った。
「何が?」
彼は分からないというように首を傾げた。
「もう少し早く来れば、ラリスさんの手作りお弁当が食べられたのに」
「何!?ラリスの手作り!?」
シオンが血相変えて私を見る。
「そんな驚く?」
私別に料理できないわけじゃないわよ?
「あたりまえだろ!!!あの滅多に料理しないラリスが弁当作ったなんて驚かずにいられるか!!」
「…」
そうなのぉ?
「つーか姉ちゃんが作ったのかよ。どうりでこれまずいと思った」
クアルがいつものごとく嫌がらせを言ってくる。
「あら、それは繭ちゃんが作ったんだけどね」
にやりと仕返し。
「何!?」
慌ててクアルが繭ちゃんに振り返る。
「あ、あの、ごめんなさいっ!!」
彼女は申し訳なさそうに謝った。
「わっ、違うんだ!!違うんだぁ!!!」
彼は一生懸命取り繕う。
ざまぁみろ。

それからしばらくして、朝から仕事があると言う繭ちゃんの意見にあわせて、片づけて解散した。

「あぁあ、ラリスが弁当作ってんなら患者ほったらかして意地でもダッシュで来るんだった」
しゅんっとシオンが落ち込む。
「馬鹿言ってんじゃないわよ。つーか急患さんはどうしたのよ」
こんなとこ来ちゃって良いの?
「うちでできることは応急処置くらいだ。簡単に治療して、大病院に運んできたよ」

ちゃんと医者として働いてるわけじゃないもんね。
機材も簡単なものしか持ってないし。

「あっそ」
まぁ残念でしたってことで。
「くそぉう…はぁあああ」
はぁっと重苦しいため息を吐いて、大きい体を縮こまらせる。
180以上もある体が、すごく小さく見えた。

 

 

 

「家に帰れば、詰められなかった残りものがあるけど?」
なんて言ってみちゃったりして…。
「まじか!!!!先に言えよそれ!帰るぞ!さっさと帰るぞ!!」
そう言ってずんずん先を歩き出す。
「別に食べ物は逃げないわよ?」
「何も食ってねーから腹減ってんだよ」
そう言ってすたすたと歩いていく。
「はいはい」
願いが叶ってうれしいから、それくらいのわがままなら聞いちゃうわ。

ありがとう、シオン。

 

 

 

 

ありがとう、桜。

 

2006年4月28日&5月2日 Fin


あとがき

またやりました、携帯小説。ワード使えるって便利っすねまじ。暇な時間をどこでも有効活用。すばらしい限りです。長時間の待ち時間や、電車の交通時間など、かなり便利ですよ。あたしにぴったりの代物だなぁ。万歳(え)目指せグリブル大量!!(オリジ書いておいてグリブルかよ)
まぁオリジナルです。めちゃくちゃ久しぶりなオリジナル。ここ最近またオリジが再熱みたいな。まぁ萌えたぎっているのはグリブルですが(おい)あははは。まぁ桜の季節はシオラリみたいなイメージがついてしまっているのでね。かかねばと立ち上がりました。でも桜散ってしまいましたけどね。まぁ青森は今が開花時期ってことで、よしとしてやってください。許せ!!
どうしてもなんかオリジキャラがポケスペキャラに見えてしょうがないわ。