グリブル小説「クリスマスバトル 前編」
 

 

クリスマスバトル 前編

 

「むーかーつーくーー!!!」
あたしは思い切りレッドの家のドアを開けて、そう叫んでいた。
「…いきなりやってきて開口一番がそれって結構困るんだけど?」
案の定、この家の主は困ってるわけで。
「だってむかつくんだもん!!」
あたしは許可も得ずに、勝手に家に上がり込んだ。
「…なんだよ、また喧嘩したのかよ」
はぁと彼はため息をつく。

そう、毎度のことだ。
グリーンと喧嘩するたんびにこうやってレッドに愚痴りにくる。
男の意見を仰ぐには、こいつに話をするのが一番手っ取り早いからだ。

「…喧嘩じゃないもん!!そうよ!あいつは喧嘩とも思ってないのよ!!」
うわーんっと机に突っ伏した。
「はぁ。よしよし」
レッドは思いきっりため息をついて、あたしの頭を撫でる。

まず最初はこんな感じだ。
あたしがぎゃーぎゃー騒いで、あたしが落ち着くまで待つ。
そして落ち着いたら愚痴をつれづれと聞かせていく。
これが毎度の繰り返しだ。

「…で、今日は何が原因なんだ」
落ち着いたところで、彼が話を切り出した。
「…聞いてよレッド!!!」
「…」
聞いてるよ、と彼は心の中で思う。
「…あいつってば!」

 

 

 

「ねぇ、24日と25日空いてる?」
あたしのあなたの予定表にはばっちり空いてる印がついている。
それを分かっていて、最後の確認をするのだ。
「…24と25?……あぁ空いてるが何かあんのか?」
彼は何事もないように返事を返した。
「…クリスマスだよ?知らないの?」
ほんとイベントごとにはうといんだから。
「…クリスマス?」
一瞬彼が考え込む。
「…そう、クリスマス!でね…」
「あぁやっぱり空いてない」
「えぇ?!なんでよ!!!」
あたしの言おうとした言葉を、遮ってまで返してきた言葉はNO。
どういうことよ!!
「クリスマスなんだろ?だったら人が来なくてちょうどいい。ここ最近チャレンジャーが多かったからな。片づけが全くできてないんだ。この機会を逃したら、大掃除の時に大変な目にあうしな」
そう言って、いきなり片づけを始め出す。

そうなのだ。
みんな今年中にバッチをゲットしようと、毎日のようにひっきりなしにチャレンジャーがやってくる。
年末大忙しのトキワジムは、グリーンの休みさえも削っていた。
そんな中、唯一の休みのこの二日に、あたしはずーっと期待を馳せていたというのに、どういうことだ!
そりゃ忙しいのは分かるし、大掃除の時に大変になるのも分かっているけど、だからって、

「だからって何もクリスマスにやることないじゃない!!!」
そうよ!!!
恋人達のイベント事に、彼女をほったからしてジム仕事?!冗談じゃないわよ!!
「クリスマスだからやるんだ」
そう言って結局取り合ってはくれない。
「……むぅグリーンってば!!」
どうしてもその日は一緒にいたいのに!!

そうやってあたしが悪戦苦闘して、なんとか納得させようと努力してるのにぃ。
してるのに、してるのに、してるのにぃ!!!

「たのもー!!」
こうなんともタイミング良く(悪く?)挑戦者がやってくるわけで。
「はぁ。ほら、バトルをするからあっち行っててくれ」
そう言って結局あしらわれる。

これでクリスマスの予定はおじゃん。
せっかく空いてるだろうと期待していたのに、空しくもその期待は裏切られたのだ。

クリスマスを過ぎればまたチャレンジャー三昧。
年末は大掃除に追われ、年始は正月だなんだと大忙し。
じゃあ何?結局あたしはずーーーっとグリーンとは一緒にいられないってこと?

「っ…グリーンのバカ!!!」
そう言って、あたしはジムを飛び出してきた。

 

 

 

「と、いうわけなのよ!ひどいと思わない!!!」
うわーんっと再度机に突っ伏す。
「あぁ、はいはい」
再度レッドがあたしの頭を撫でた。
「あいつあたしをなんだと思ってんのよ!!あたしよりも仕事を大事にするんだわ!!今だったら絶対「あたしと仕事どっちが大事なのよ!」って聞いたら真顔で「仕事」って答えるのよ?!絶対そうに決まってるわ!!!むかつく!!!ふえーん」
悔しい悔しい悔しい!!!!
「あぁ、はいはい」
「レッド聞いてるの?!」
さっきから同じ返事ばっかり。
「聞いてるよ。クリスマス一緒に過ごせなくなったんだろ?」
要点だけしか聞いてないでしょう、もう。
「…ここ最近まじめに会話もしてないわ…」
会ってもいないし…。
会ってもすぐ仕事に戻っちゃうし、話しかけても相づちも打ってくれない。
「結局グリーンは、あたしなんか居なくなったってどうでもいいのよ」

なんだか泣きそうになる。
こんなに不安に感じてるのに、あいつはあたしのことなんとも思ってない。
長期間会わなかろうが、話をしなかろうが、それどころでないのだ。

「グリーンはポケモンが恋人なんだわ」
頭の中ポケモンとバトルでいっぱいなんだわ。
「…そんなことはないと思うけど…」
曖昧にしか否定ができないそんな状況。

そう、分かっているのだ…。
グリーンがあたしのこと、なんとも思ってないことくらい。
もし私が100%好きなら、彼はあたしのこと、1%も思ってない。
分かってはいるんだ…。
分かってるからこそ、こういう恋人達のイベント事で、らしいことくらいはしようと思ったのに…。

「ようはさ、一緒にいたいんだろ?」
じっとレッドがあたしを見る。
「…うん」
あたしはこくんっと頷いた。
「だったらさ、片づけを手伝ってやればいいじゃん。一緒にはいられるだろ?それに1人でやるよりも、二人でやる方が早く終わるだろ?そうすれば24日は無理でも、25日の夜なら一緒に過ごせるかもしれないんじゃないか?」
笑顔でそう教えてくれる。
「…手伝う…か」
邪魔じゃないかな…。
「…手伝うためだ!って言えば邪見にはしないだろう」
たぶんね。
「うん」
まぁいかにも邪魔しに来ました、というよりかはいささか受け入れられるだろうけど。
「大丈夫だって!いざってときは泣き落としでもしてみたら?」
一緒にいたかったんだもん!!ってさ。
「……そうよね!そうなのよ!!涙は女の武器よ!あたしの涙で落ちない男なんかいないわ!!」
なんだか変に勇気づけられた。
「よっ、それでこそブルー!」
わぁっと手を叩かれる。
「見てなさいよ、グリーン。絶対落とす!」

そう、その日から始まったのだ…。
あたしの、クリスマスバトルが…。

 

2004年12月24日 Continued


あとがき

ごめんなさい(おい)とりあえず姉さんのはちゃめちゃぶりと、兄さんへの異常なる愛を感じ取っていただければ目的は達成です(死)あははは。後編に続く。